【お正月ショック―2】
それは意外にも姉妹園・
加納西保育園で起きた。
和光会本部と施設間の紙ベースの連絡は
「メール便」と呼ばれる車によって行われている。「メール」と「便」とを重ねた念入りな日本語・・・そんなことより本部から離れた3つの子育て施設のメール便は、まとめてわが沖の橋保育園に届けられ、それを主に
私が他2施設に配達することになっている。
「園長もできる用務員」と呼ばれる所以の一つである。
4日、配達に事掛けてセンセーたちに
新年のご挨拶をと、
加納西保育園を訪ねた。メール便は事務室に届け、クラスごとに顔を出す。こどもたちもまったく知らぬ仲ではないから、元気よく挨拶を返してくれる。
「あけましておめでとうございます!」
センセーが改めて紹介してくれる。
「このセンセー、誰だか知っていますか?」
こどもたちがなんと答えてくれるかと
笑顔を向けながら待っていると、2人がほぼ同時に、
「はげつるぴっかー!」
「ハゲツルピッカー!」
「ちがうでしょ、沖ノ橋保育園のエンチョーセンセーでしょう!」
手遅れである。一人ならまだしも、二人同時である。
「ごめんなさい!」というセンセーの声を背中に、私は部屋を出た。
【お正月ショック―3】
わが園には
卒園児が時々遊びに来る。友だちを連れて自慢げに遊んでいく姿がうれしくて、私の目が届く限り勝手に遊ばせている。
昨年の
12月29日、休園日でセンセーたちもお休みだったが、日ごろ働きの悪い私は一人で仕事をしていた。午後になって
4年生の女の子が訪ねてきた。
「あそんでもいい?」
「お休みだから誰もいないぞ」
「いい、ひとりであそんでくる」
すぐに退屈して事務室に引き返してきたので、隣の机に座らせて私の仕事に付き合わせた。
作成中の
「園だより」のパソコン画面を喜んでのぞきこんでいる。
「うさぎの絵を描きたいんだけど、何かないか?」
「あ、ある。“サイン帳”の表紙にうさぎがのってる!」
「サイン帳ってなんだ?」
「すきな子とかに名前とかいろいろ書いてもらうの」
「好きな子って、男の子か?」
「うん、すきな男の子もいるけど、私より背が低いから、そこがいやだ」
「そういうことを言っちゃいかんよ」
その大事なサイン帳の小さなうさぎの絵をヒントに、おたよりの
カットを描く。
「4時になったら児童館へ行こう。だれか友だちがいるかもしれない」
「今、誰もいないのか?」
「うん、お休みだからみんなどっかへ出かけちゃってる」
4時かっきりに帰っていった。友だちと会えるといいなと思いながら見送った。
そして明くる
1月5日、おととしの卒園児の
小学校2年生が、5年生2人と4年生の
先輩を連れて遊びに来た。大きい子は木がいっぱい植わって芝生が青々としている園庭を見るのがはじめてらしい。、
「すげー!」「ぜんぜんかわったなあ!」
「あそんでもいい?」
ちょうど
‘イルミネーション’を片付けるために木に登っているところだったので、看ているつもりでOKを出した。なにしろ大きい子だから遊びがだんだんエスカレートしてくる。
「ボールであそんでもいい?」
「スクーターであそんでもいい?」
身長150センチを越すような4、5年生がダーッと走り始めると、狭い園庭ではかなりの
迫力だ。そのうち
「ターザンロープ」に目をつける。木と木の間にロープを渡してブランコで移動するやつだ。
私が園長になってからの園児、2年生女子が答える。
「あのエンチョーセンセー、なんにもおこらへんで、いいよ」
てっぺんで足を踏ん張っていた
脚立がグラッと揺れた。
じいちゃんはなめられていたんとちゃうか?
ま、これも
ショックだったなあ。
今年はビシッとやります!
園庭をダダーッと走っている小学生の写真が見当たらないので、「新年お楽しみ会」の写真から1,2枚
羽子板のお絵かきを頼まれておめでたいところを描いた
「沖ノ橋オリジナルお正月グッズ」

右背面は
書初めで、まず
「う、さ、ぎ」と書いて、それを一瞬
にしてうさぎの絵にしてしまおうという
無理な試み。ちなみに前の二人は
漫才師ではなく
れっきとした保育士であります。

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