2015/4/12

もう虜 朝が来るまで帰らない  MOVIE

本日の映画は

日本でDVD発売するに当たって
「ハングオーバー」シリーズを強く意識したことが
想像に難くないジャケットレイアウトと
アメリカンコメディの代名詞「俺たちシリーズ」に
肖った「オレたち最強バディ」と云う副題から
少しでも多くの人に映画を見てもらおうとする
配給会社の並々ならない苦労の痕が
垣間見れてそれはそれで切ないフランス映画
「ドント・ディスターブ! ♂オレたち最強バディ♂」

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です。

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「ドント・ディスターブ」はホテルのドアに掛けるカードによく書かれています。

私もまんまと引っかかり
てっきりイケメン率の低い下ネタゆるゆる『俺たち』系おバカ映画
と思い本作のDVDをレジまで持っていったのですが、


…ん?
フランス映画?
アメリカンコメディではなくて?

と気が付いたのはDVDを再生してからのこと。

配給元の「アルバトロス」の商品説明によりますと
『最強のふたり』のフランソワ・クリュゼ、シャルロット・ゲンズブール等フランスを代表する俳優陣が競演! 本国フランスでスマッシュ・ヒットを記録した、笑って泣けるフレンチ・コメディ!!
だそうです。

あ、だから「最強バディ」なのね。
「最強のふたり」つながりで。

…う〜ん。
それってどうなの?

ジャケットにでかでかと書かれた
ノンケのふたり(←ここも「最強のふたり」つながり)がベッドイン?!迷えるオヤジたちの大暴走!!
から昨今のアメリカンコメディにありがちな
「大人になりきれないボンクラな男たちがバカをやる」
映画(内容的には確かにそうなんだけど…)
を想像してしまいがちですが、
実際にDVDを見てみると
迷えるオヤジではなく迷える配給会社が大暴走した結果
こんな宣伝になったことを思い知らされることになります。

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他の国はこんな感じ。一番左は「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」ぽい?

何故迷えるのが配給会社の方なのかと問えば

それはこれがフレンチコメディだから、です。

アメリカのコメディでも大当たりするのが
非常に稀な日本の映画界で
エスプリと云う独特の文化をもつフレンチコメディを売り込むのは
なおさらハードルが高いというもの。

さらに面倒なことにフレンチコメディは語る際、多くの場合
「笑い」の前に「上質の(or上質な)」と云う言葉が付くのです。
そんな国、他にあるでしょうか?

さらに判で押したかのように
映画解説に「くすっと笑えて」などと書かれてしまうのです。

アメリカのおバカ映画とは笑いのベクトルが違うため
日本配給会社お得意の「笑える映画」「爆笑必至!」
と云う常套句も使えません。
(この映画は平気で使っていますが…)

ということで(配給会社が)頑張った結果がこちらです。

 


舞台は、今や
「少子化対策に大成功した先進諸国の代表例」
として世界的に注目を浴びているフランス。

ここにも子宝、それも息子を授かりたい夫婦が
一組、いそいそと子作りに勤しんでおりました。

ベン(イヴァン・アタル)とアナ(レティシア・カスタ)の
アズエロス夫妻にとって今夜は月に1度の排卵日。

この機を逃してなるものかと子作りに励む2人でしたが、
突然、何の連絡もなく
ベンの芸術大学時代の友人ジェフ(フランソワ・クリュゼ)が
押しかけてきたため、
あえなく夫婦の営みは中断となってしまいます。

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何かと抱き合うベンとジェフ。フランスだからか?

旧友との再会を無邪気に喜ぶ夫に
「今何時だと思ってるの?あなたたち正気なの?」
と、文句の一つも云いたいアナ。

誰がどう考えても非常識な訪問客です。

しかし、メキシコからはるばるやってきた夫の友人を
無碍に追い出すこともできません。
作り笑顔で我慢我慢。

それを良いことにジェフはベンの部屋に泊まって
一晩中昔話に話を咲かせます。

卒業後、堅実な職に就いたベンとは違い
ジェフはアート活動を続けており
今回の帰国もスポンサー探しのためのものでした。

翌日、さっそくジェフは顔を繋ぐため
知り合いの女性が経営しているギャラリーの
ホームパーティに参加し、
迎えに行ったベンもそのまま仲間に加わることに
なってしまいます。

アナからジェフを夕食に招くよう頼まれていたのに

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夕食はかなり手間のかかる手作りのパスタでもてなす予定です。

パーティでジェフや彼の友人である
リリー(シャルロット・ゲンズブール)と
モニカ(アーシア・アルジェント)のカップルと
すっかり意気統合してしまったベンは

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「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」なので当然本作でも出演しています。

気が付くと、
家で待っているアナのことなどすっかり忘れて午前様。

まあ、こういった場合
迎えに行った旦那が真面に帰ってくるわけがないのです。

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夫が喰って飲んではしゃいでいる間、一人淋しく飲んでいる妻。

奥様の方も過度な期待などせず
ミイラ取りがミイラになると想定して
心の準備をしておいた方がよろしいでしょう。

交通関係の仕事に就き
長らく芸術関係から遠のいていたベンでしたが、
ジェフとの再会をきっかけに元アーティストとしての
血が騒ぎ始めます。

そんなふつふつとアート熱が湧きあがっているなか、
リリーとモニカから
シアトルで毎年開催されるポルノ映画祭「パンフ」の話を聞き
ジェフとの共作を出品することを思い立ちます。

どうせ撮るなら誰も見たことのない
誰も撮ったことのない作品を!

と云うことで出てきたアイデアが
ベンとジェフのストレートの男性2人による
ゲイポルノムービーの撮影でした。

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何故これまで撮られていないか、素面になってからよ〜く考えてみよう。

この斬新な企画に有頂天になりその場で決行日も決め
ポルト・ドゥ・シャンペレのホテルに予約を取るベン。

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意外と2人ともノリノリです。

一方早く子供が欲しいアナは、翌朝
徹夜明けの夫に下半身丸出しで跨ると云う強硬手段に出ますが、

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おフランス映画ですのでこういうおまぬけなシーンでも美しく撮ります。

呑み疲れた夫に拒絶されてしまい、
昨日の仕打ちも相まって怒り倍増です。

ストレート同志でゲイポルノを撮るというアイデアは
バカバカしくても
「いつか2人で何か作ろう!」と云う夢を持ち続けていた
ベンとジェフにとっては大真面目な話。

大真面目が故、アナからも撮影の承諾を取る必要があると
考える2人。

ただ、内容が内容だけになかなか云いだせないベン。
夫がぐずぐずしてはっきり口に出せなかった映画の主旨を
ジェフの口から聞くことになったアナは
これまでの仕打ちも相まって怒り倍増です。

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当たり前の反応です。

正気の沙汰とは思えない夫と夫の友人の発言に
頭が混乱したまま乗り込んだ地下鉄で
切符の検察に来た鉄道員2人相手に愚痴を溢すアナ。

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トンデモない乗客に捕まった鉄道員。というかこの2人の関係は?

こういうとき全くの赤の他人に発散するのが
一番効きます。

その晩は3人とも自分の恋愛観、性癖を見直すことに。

そして、撮影日。
ところが、いざ本番となると2人とも
つい腰が引けてしまうのでした。

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映画のファーストシーンが自己紹介と云う稀に見る生真面目さ。

はたして映画は無事に完成するでしょうか?
そして、アズエロス夫妻は元の生活に戻れるのでしょうか?



と云うストーリー。

「いまだ大人になりきれない中年男性が
所帯を持ったものの何か生活に物足りなさを感じている友人を
巻き込んで盛大なバカをする」
というアメリカのボンクラ映画にありがちな
フォーマットに則って作られてはいるのですが、
10着しか服を持たない生活面では非常に堅実なフランス人が
アメリカ人のマネをしてバカやってもバカになりきれない
と云う映画です。

「ストレートの男同士でゲイポルノを撮る」
と云うアメリカや日本や韓国や香港で撮れば
いくらでもお下品、お下劣になる話を
上品に見せてしまうのがフランスというお国柄。

ですので「ハングオーバー」シリーズや
「俺たち」シリーズみたいなものを期待させるような
宣伝は却ってDVDを見た人の評価を悪くするだけです。

「メルシィ!人生」や「奇人たちの晩餐会」のように
「くすっと笑えて」
「上質な」
フレンチ・コメディであることを
前面に押し出して宣伝した方がまだ痛手は少なかったかも…。

ポルノ映画を撮るまでのアズエロス夫婦のいざこざも
笑いに消化するのではなく、真摯な話し合いへと発展し
いざ撮影が始まると、
昨日までの友人とセックスできるか真剣に葛藤しあうベンとジェフ。

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年相応の緩んだ肉体もネタとして使いません。

素面であれば一笑に付し
なかったことにしたであろう映画製作を
誰一人ちゃかすことなく物語が進むので
爆笑を期待すればするほど
「これじゃない」感がひしひしと…。

この場合、バカに徹した方が楽なのに
それをやらないのはフランス流。
突き抜けた笑いも呆れるほどおバカな場面もありませんが、
ほろ苦くほのぼのとしたコメディを提供してくれます。

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見ていて微笑ましいというのがちょうど良い加減のフレンチコメディ。

総じて云えるのは、本作のDVDは
日本で中途半端なコメディ映画を売り出すことの難しさを
実感するにはうってつけの教材ということですかね?

「ハングオーバー」シリーズにかこつけた
配給会社の考えたこの宣伝方法が
おそらくは一番「売れる」方法だと云うことは
私にも察することができるのですが、
この方法を取ったばかりに
この映画を見て本当の意味で楽しめる方の元へは
どうも届いていないように思え、
とても勿体ないです。

 


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