1960年前半(微妙)生まれの男の、映画について、音楽について、旅について、本について、そして人生とやらについてのブルース。自作の詩のおまけ付き。書いているのは、「おさむ」というやつです。
since 6.16.2005
To travel is to live. -H.C.Andersen
2010/11/21
茨木のり子さんの『自分の感受性くらい』の表題作の詩の引用。
自分の感受性くらい
ぱさぱさに乾いていく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊敬の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
以上、引用。
すみません。そのとおりでございます。
この詩は、自分に向かって書かれたものをあるが、誰にでもちょっとは
思い当たる節があるはず。
凛とした気概を持っていき続けることは、疲れてしまうことです。
しかし、時には、自分のことを振りかえって、この詩のように、自分に
むかって、ばかものよという時間が必要なのかもしれません。
今日もanother Indian summer。
太陽の光は、夏の元気をとっくになくしてしまっているが、その光は
優しく、暖かだ。
そんな光を見つめながら、自分が誰かのために出来ることや、自分の
大事な人の存在の重要性や、ただ自分がそこに、「普通」に生きている
ことへの感謝、そんなことを考えて、一丁、気合を入れたいものです。
ばしっ。

0
2008/6/20
久しぶりに、詩のようなものを連続で投稿した。
come and 詩 me
http://www.rondz.com/poem/
言霊の深をクリック。おさむ、です。

0
2007/6/9
北西からの風
おさむ
午後10時
阪急西宮北口
改札を抜ける
改札を抜けた人たちが右と左へと流れる
右へと流れた人たちの中に
その親子はいた
父親は黄色いシャツ
右肩に大きなかばん
左の上腕の袖のところには虎のマーク
その虎のマークの背丈くらいの女の子が
左側を歩いている
女の子は白に黒のストライプのシャツ
その背中に「24」とある
後ろ髪がIとYとAとMを隠している
背中の24の上の名前
父親の左手は
女の子の右手をしっかりと握っている
2人はたださっつさっつというペースで歩いて行く
女の子の後ろ髪がそのペースに合わせて踊る
風が左から右へと流れていく
左のずっと先には山があり
右のずっと先には海がある
誰かが
誰かを
応援し
誰かが
誰かに
勇気づけられる
誰かを応援することは
自分を応援し
誰かに応援されること
風が歌うのを聴き
海が泣くのを聴く
午後10時03分
阪急西宮北口
風は流れ続ける
月の姿はないけれど
地球は
丸く
回っている
そして
もう一度
風の歌を聴く

0
2007/5/11
あなたのふくれっ面が浮かんだなら
おさむ
少し長い信号を渡るところで
すれ違ったカップルの女の子が
左を向いて顔を上げる
その先に
ちょっと困った顔の20代後半くらいの男の顔がある
頬を膨らませたその女の子のふくれっ面の横顔が
あなたがよく浮かべたふくれっ面とそっくりだった
目に焼きついた表情
心にさび付いた輝き
初夏へと向う季節の夜
心地よい一筋の風がその横顔を撫で
僕の右肩をトンと叩く
一体何怒っているんだよ
面倒だなとその時は思っていたことも
すっかりと忘れ
そのふくれっ面が僕の心のどこかを
叩き始める
特定の人にしか見せないふくれっ面だから
ふくれっ面が特別なのだと
今ならわかる
すれ違った女の子のふくれっ面の残像を感じながら
四度瞬きをする
後ろを振り返る
その女の子は両手を精一杯
男の右腕にからめている
子どもの頃から大事にしている
古くなったテディベアを両手で抱えるかのように
口笛を吹いても何も変わらないことを知っているのに
僕は小さく口笛を吹き始める
無意識に
あなたが好きだった曲を吹いているのも
気付かないまま

0
2007/5/7
陶陶酒を飲みながら
おさむ
新世界に降る雨は小雨で
誰も傘をさしてはいない
carp streamers が狼たちと一緒に踊る闇の中
天王寺動物園前には
今夜も6人ほどのダンボールの住人が眠っているわけで
そんな小雨ですかという感じで眠りに落ちている
午後10時を回ったばかりで
まだまだ夜は長く
雨は激しくなる模様
フランスのなんとかという美術館所有の浮世絵たちは
門の扉がきっちりと閉じたその動物園の先の美術館で眠っているわけで
たくさんの息を潜める動物たちと同じように呼吸をしながら
クロワーッサーンとカフェッオーレに馴れた感覚をくるくる回し
遠い彼方の江戸の記憶を思い起こしながら
なぜか動物園の動物の匂いに声を荒げるのだ
遠い記憶と近くのキュービイズム
鉄の門の外でかすかに聞こえる生きる人たちの寝息
そのリズムを思い出しながら
浮世絵たちはそれぞれの夢を想像する
切断された風景と限定された前景
からん
陶陶酒の辛口と甘口が並ぶその自動販売機で
僕はアルコール度12%の甘口を選び
分厚い鉄の扉の天王寺動物園の前で
フランス国立ギメ東洋美術館所蔵浮世絵展のポスターを見ながら
小雨の匂いを感じる
ほっといて
どうせ襲うんやろ
すでに6人くらいが場所をとっているその隙間に
酔っぱらった太った女と年配の男がやって来た
性は生とは区切られているわけではなくて
生は性でもあるわけで
陶陶酒の甘口のデミカップのふちを舐めながら
舌を伸ばして僕は小雨を受け取る
江戸時代に陶器を海外に輸送するために無造作に包み紙にされた浮世絵
その無名の作家たちのことなど
ひょっとしてお忘れですねと通天閣のビリケンさんが笑っているよ
こう見えてもアメリカ生まれでね
ビリケンさんがのたまう
彼の地では大統領が決まろうとしているんでしょ
小雨混じりの陶陶酒を口の中でころがしながら
僕はその遠い昔に父と一度だけ天王寺動物園へとやって来たことを思い出す
記憶にあるのは
どんな動物を見たとか
どんな天気だったとか
どう移動してやって来たとか
そういうことではなく
ただ
そこに父と一度だけ来たことがあるということ
甘口の陶陶酒を飲み干す
遠くで近くでも
至る所で聞こえるブルースを
心の中で
口笛でなぞりながら

0
1 2 3 4 5 | 《前のページ |
次のページ》