1960年前半(微妙)生まれの男の、映画について、音楽について、旅について、本について、そして人生とやらについてのブルース。自作の詩のおまけ付き。書いているのは、「おさむ」というやつです。
since 6.16.2005
To travel is to live. -H.C.Andersen
2008/3/30
「ちぐさ「では、コーヒーをたのむ。
いつもブラックだ。
ある時から、おやじさんが、ミルクなしで白いカップ&ソーサー
を持ってくるようになった。自分が常連として認めてもらえた
ような気がして嬉しかった。
壁には、レコードのジャケットの他に、何枚もの写真があった。
おやじさんが、何人もの有名な日本のジャズミュージシャンと
並んでいる写真。
眼鏡を鼻にちょこんとかけ、次、リクエストと合図をよこして
くる。お客さんが少ない時には、2枚目のリクエストを受付て
くれたこともある。そんな時は、ちゃんとしたリクエストを
しないとと思ったものだ。
ジャズ・メッセンジャーズ、ホレス・シルバー、リー・モーガン、
スタン・ゲッツ、ハンプトン・ホーズ、ダラー・ブラント、
ビル・エバンス、キース・ジャレット、レイ・ブライアント、
ポール・チェンバース、ハービー・ハンコック、ジェリー・マリガン、
チェット・ベイカー、ジョン・コルトレーン、カウント・ベイシー、
ブッカー・リトル、その他。
コーヒーの他には、紅茶とコーラしかなかったような気がする。
500円。均一の値段だ。
常連たちは、帰るときには、ちゃんとカップをテーブルから
おやじさんのところへと持っていく。
おやじさんが亡くなって、代わりにターンテーブルの後ろに座って
いたのは、妹さんだった。
トリオだったか、バンドの絵が描かれた電飾の置き看板。
バックは黄色だ。店の入り口の上には、トランペットの
看板があった。
店の左向かい側には、キリスト教の喫茶店があった。
目をつぶれば、少し怖い表情のおやじさんの顔を浮かぶ。
僕は、遅れてやってきた常連なので、もっともっと怖かった
だろうおやじさんのことは知らない。
おやじさんの合図が見える。おい、リクエスト。
目は優しい表情をしている。
WALTZ FOR DEBBIE
ビル・エバンスが最後のレコードだったらしい。

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2008/3/29
僕は、手にサルトルを持ちながら苦めのコーヒーを口にし、
ダラー・ブラントあたりや、アルバート・アイラーを聴いて
いた口ではないので、ジャズ喫茶という文字が醸し出す(50年代
60年代、70年代とその印象派異なるのだろうけれど)言葉の
「質感」については、「アンテック」と「コージー」と「孤独」
という質感しかない。そこでかけられるレコードが、50年代、
60年代前半に発売されたものがほとんどだからだ。
僕とジャズ喫茶との接点は、横浜野毛の「ちぐさ」だ。
僕は、社会人で、小学生〜大学生の時を過ごした兵庫県の西宮から
一人暮らしを横浜で始めたばかりだった。20代後半から30代
前半にかけての頃だ。
いきなり接点が、老舗の「聖地」だったのが、幸運なことだった
のかもしれない。その頃、ちぐさのおやじさん(吉田さん)は、
健在だった。8人ほどが入れば満員になってしまう。
その頃でも、結構、座る席は、おやじさんが顎で指示をしていた。
もの凄く入り辛い(我ながらよくあの店の扉を開いたと思う)
扉を開くと、右側にターンテーブルがあって、その後ろにレコード
が並んでいた。
客たちは、スピーカーに向かって横に腰掛ける位置に薄い茶色の
椅子があった。
おやじさんは、怖い印象だが、顔見知りになると、とても優しかった。
若い時は、もっと怖い印象だったのだろう。
店内には、レコードのジャケットが飾ってある。中には、CDのカラー
コピーを拡大したものもあった。
レイ・ブライアントにビル・エバンスにアビー・リンカーンなど、
時々、そのジャケットが変わったりしたことがあった。
よくかかっていたのは、スタン・ゲッツやビル・エバンスやリー・
コニッツだったような気がする。90年代初めの頃、僕は、週に
2回くらいのペースで通っていたような気がする。
その日にリクエストしたレコードをメモにとっている。ただ、
アーティスとレコードのタイトルが書かれたメモ帳だ。
僕にとっての宝物のひとつだ。こんな時、自分が「ある特定
のことに対してはもの凄く几帳面であること」に感謝したくなる。
頻繁に顔を出していくと、馴染みの顔に出会うことになる。
誰が腰掛けているかということが、一目瞭然の広さだからだ。
かと言って、声を掛け合う仲ではない。
お互い心の中で、「こんちは」というくらいの小さな声を
掛け合うくらいのものだからだ。
リクエストのリストは、アルファベット順にバインダーに
整理してあって、2冊あったと思う。
中には、タイプライターで打たれたアルファベットの文字が
並んでいた。
残念ながら、その「ちぐさ」は、昨年、閉店し、マンションが
建つ予定だ。
全国のジャズ喫茶について。
http://www.jazzsoda.com/sitemap.htm
(続く)

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2008/3/27
『天国と地獄』は、黒澤 明監督の1963年公開の作品だ。
まだ、白黒で(カラーは『どですかでん』が最初だ)、エド・マクべイン
の『キングの身代金』をベースにしている作品だ。
三船敏郎扮する権藤 金吾は、横浜の西区の浅間町の高台に豪邸を構える
靴屋さんの常務だ。浅間町は、僕が横浜で働いていた事務所から徒歩10分
あたりの場所にある。
酒匂川が出てきたり、腰越が出てきたり、江ノ電が出てきたり、江ノ島が
出てきたり、やたらに懐かしかった。
黄金町のアヘン窟も出てくる。戦後、黄金町辺りは、麻薬中毒者の集まる
場所だったようだ。麻薬取引売春が行われていた。
そんな黄金町からすぐの場所に野毛がある。
ジャズのバーおいしいラーメン屋さんやおいしい中華料理のお店や
たくさんの飲み屋さんがある場所だ。
そこは、僕のホームタウンのようなものだった。
そのひとつが、バーキネマだった。
バーキネマでも、よく『天国と地獄』が流れていた。あらためて
じっくり見ると、とてもおもしろかった。
黒澤 明監督の作品、もっとみましょう。
『手塚治虫傑作集「家族」』新書版。前回の「戦争」の2作の
次の新作です(過去オムニバスだけれど)。
「瀕死の地球を救え」バーションも出ています。

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2008/3/26
昨年の夏休みに、長崎へと行った。丁度、原爆記念日だった。
爆心地の中心の公園で、万灯を持ち、近くの川へと流す行事に
飛び入りで参加した。家族ずれやアジアからの外国人やたくさんの
人々が参加していた。涼しい風が吹き、のんびりとした夜が長崎の
夜が広がり、路面電車の音がした。人々の表情は、ピクニックに
でも来たような感じで、「こんな日常的な笑顔が、平和っていう
んだよな」と心の中で思った。
日本が戦争を始めた頃、人々が求めたのは、そんな笑顔であり、
ごく質素な食べ物だったのだと思う。
長崎へと行った目的は、原爆記念日に行くということと、ちゃんぽん
を食べるためだった。翌日には、広島へと行くつもりだったので、
1泊2日の旅だった。その2日間で5件のお店へと行き、ちゃんぽんを
食べた。おいしかった。
ちゃんぽんが、体現するのは、その多様性なのだ。
大阪に中央○というちゃんぽんや皿うどんを出すお店がある。チェーン
のお店だ。なかなか、味はいい。
ランチの時間へと行き、皿うどんを食べた。
揚げた細めんを、たくさんの野菜や豚肉があんかけで閉じたものだ。
7割くらいを食べ終わった頃に、髪の毛を見つけた。
茶色っぽい先にカールがかかっているやつだった。
そこで、店の人に言ったら、また新しいものを持ってこられただろう。
まあ、髪の毛くらいと思い、その髪の毛を端によけて、残りを完食した。
レジのところで、髪の毛が入っていましたよというと、その従業員の人
が店長と相談して、無料にしてくれた。
髪の毛が食べ物の中に入ること。
料理店で厨房の人や食べ物をサーブする人たちが、頭に帽子を
かぶっていたり、バンダナを巻いていたりするのは、髪の毛が
入るのを防止するためだ。
日本での残飯は、世界中の食糧援助量の70%とか80%と
同等の量と言われています。
たくさんの食料を輸入しておきながら、たくさんの量を残飯
として廃棄しているわけです。
世界の人口は、66億。
食べ物と水の取り合いで戦争が起こる日がやって来るかもしれません。
近い将来、「髪の毛が入っているんですけれど」と言ったら、
「それがどうしたんですか、嫌なら食べなくていいよ」
なんていう日が来るかもしれません。
食べ物、大事にですね。

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2008/3/23
会社の窓から入ってくる春の空気を体いっぱいに取り込む。
たくさんの生き物の息吹の粒子が入っている気がして、
ちょっと嬉しくなる(花粉症の人、ごめんなさい)。
コートも羽織らなくなった。1ヶ月前に買った「南京梅」も
花をつけ始めた。
同僚のアメリカ人と話をした。
「なかなかいい季節になってきたよね」
「そうだね、でも、初夏が一番いいよ」
「そうそう、湿度の高い日本にしては、からっとしているからね」
初夏の太陽の木漏れ日。わるくない。
そんな初夏へと向かう春は、時々、機嫌を悪くする女の子のように
冷たい雨を降らせたり、気まぐれな風を吹かせたりする。
そして、潔い桜の花を咲かせたりする。
昼下がり、よく飲んだビールを思い出す。前日から飲んだお酒
がちょっぴりと体に残っていて、その余韻を目覚まさせるかの
ように冷えたビールを体に流し込む。細胞が喜ぶ声が聞こえる。
あなたと飲んだ昼下がりのビール。
あなたは、元気にこの季節を感じているのだろうか。
(花粉症だから、それどころじゃないか)
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
出勤の土曜日の帰り、21時35分の回に行った。
圧倒的に大きなスクリーンのtoho シネマで、ドルビー(最近は、
水の粒子のやつだ。ずっと前は、ヘリコプターのやつなんかも
あったりした)の映像もあった。
ウォン・カーウェイ色(早送り、スローモーション、時間の流れ)
満載で、しかも、行ったことがあるメンフィスなんかも出てきます。
ノラ・ジョーンズ初映画出演。ジュード・ロウにレイチャル・ワイズ、
ナタリー・ポートマン。音楽が、ライ・クーダーに、勿論、ノラ・ジョーンズ、
カサンドラ・ウィルソン、続木 力(ジャズミュージシャン)、オーティス・
レディングなど。サントラ買ってしまいましたが、やはり、映画館で聴く
音楽と、映像と合わされた音で、印象が全く変わっていました。
やはり、映画館でないと。
昨日から、上映です。
春、夏の季節に。Cheers!

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