2009/9/16

白井圭、山宮るり子が2位入賞 ミュンヘン国際音楽コンクール  ニュース

ミュンヘンのARD音楽コンペティション(ミュンヘン国際音楽コンクール)が、13日までに全部門の審査を完了した。今季は、コントラバス、声楽、ハープ、ヴァイオリンの4部門でコンペティションがおこなわれ、うち2部門で日本人が上位入賞した。

まず10日には、珍しいハープ部門で、山宮るり子が2位に入賞した。音楽専門ではない新潟のミッション系進学校を卒業後、早くも渡欧を決断し、現在はハンブルク演劇音楽大学に在学。日本でも人気のある、ウィーン・フィルの首席ハーピスト、グサヴィエ・ドゥ・メストレに師事している。海外では1人暮らしをされているようで、そのインディペンデントな人間性がまず目を惹く。本選ではグリエールの協奏曲を弾き、高い評価を得たという。なお優勝は、フランスのエマニュエル・セソン。ジュリーは、ハノーファー音大指揮科の教授であるルッツ・ケーラー氏をチェアマンに、山宮の師・メストレや、日本の吉野直子を含む面々となっている。

ハープ部門の開催は頻繁ではないが、そのなかでは、もちろん日本人の上位入賞は初めてとなる。

そして、最後におこなわれたメインのヴァイオリン部門では、白井圭がやはり2位に入賞した。白井はこれまでにも頻繁に転戦しているコンクールの常連組だが、こうしたクラスでのコンペティションで上位入賞の記憶はない。ただし、既にある程度の知名度はあり、臨時編成のアンサンブルや室内楽、ソロなどで幅広く活動を展開していたので、どこかで聴いたことがある人も少なくないはずだ。外国留学経験はないようで、最終学歴は東京藝大卒業。偶然かもしれないが、師事した徳永二男、大谷康子、田中千香士、堀正文などというところをみると、オーケストラへの志向が強いことが窺われる。

白井はさらに、オーディエンス賞を受けている。前回、2005年のコンペティションで岡崎慶輔と山田晃子がダブル受賞したのにつづく快挙で、ヴァイオリン部門では6人目の上位入賞者となった。なお優勝は、おとなり韓国の才媛、パク・ヒェユン(Hyeyoon Park)で、ジュニアでは実績があるようだが、コンクール「業界」では新鋭という感じである。ジュリーは、著書『ヴァイオリンの巨匠たち』が翻訳されている評論家のハラルド・エッゲブレヒトをチェアマンに、インゴルフ・トゥルバン、イダ・ヘンデル、アルテミスQのナタリア・プリシェペンコなどを含む面々であった。

最後に、このコンペティションについてであるが、もちろん、世界最高峰のコンペティションのひとつである。ヴァイオリンとピアノを中心にしているが、開催部門が多彩であることが特徴のひとつだ。今回はハープやコントラバスが珍しいが、ヴィオラ、ヴァイオリン・デュオ、ピアノとチェロのデュオ、バスーン、トロンボーン、弦楽トリオなど、他のコンペティションでは見られない部門が、不定期ながらも開催されている。

また、かつては審査が厳しいコンクールとして知られ、1位が出ることは少ないとされていたが、国際的なコンペティションのショウ・アップの流れには逆らえず、近年はなるべく優勝者を出す方向に舵が切られている。今回も、全部門で1−3位が出されているのも偶然ではない。以前は「最難関」といわれたARDコンペティションの、ひとつの特性は失われたわけだ。

ともあれ、日本人の上位入賞は、この国の音楽の底上げには期待感を抱かせる、特に、ハーピストというと、吉野直子に篠崎母子、現代音楽ならば木村茉莉、若手ではN響の早川りさ子といったところが知られているにすぎないため、ここに新しい駒が加わるかもしれないことは喜ぶべきことだと思う。
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2009/9/2

東京音楽コンクール 4部門で優勝者が決定 @東京文化会館  ニュース

東京文化会館主催による「東京音楽コンクール」は、ピアノ部門の第2次予選を聴いてきたリポートを書いた。さて、そのピアノ部門を含む4部門の本選が、先週末の28日から連続の4日間でおこなわれたので、一応、結果をまとめておきたい。なお、このラウンドは、全部門がオーケストラ伴奏による選考となる。

【木管部門】

28日は、木管部門のコンペティション。フルートの神田寛明(N響)、クラリネットの鈴木良昭(新日本フィル楽友団員)、ファゴットの吉田将(読売日響)、そして、世界的オーボエ奏者だった宮本文昭の4人が審査員。本選は、4人のコンテスタントによって争われた。

優勝は、クラリネットの极木亜裕美(マタノキアユミ)。演奏曲は、ウェーバーの協奏曲第2番。桐朋大学4年生。これまでにこれといった実績はないのか、検索をかけても情報がない。2位と3位はいずれもフルートで、それぞれ押部朋子、濱崎麻里子の順となっている。押部は藝大を卒業後、同大学院で金昌国に師事している。また、審査員の神田に師事した経験もある。昨年の宝塚ベガ音楽コンクールや学生音コンなどで実績があり、リサイタルなども開いているので本命と思っていた。

聴衆賞は、第3位の濱崎が受賞した。濱崎も藝大の出身。同じように、幼いときより、コンクールで実績を積んでいる。

【ピアノ部門】

29日は、ピアノ部門である。審査員は先日も書いたように、清水和音、伊藤恵、小川典子の3人。本選は4人のコンスタントによって争われた。

優勝は、本選出場者で最年少の加藤大樹だった。演奏曲目は、プロコフィエフの3番。若さとテクニックの高さと安定性、コンクール経験で優位と思われたが、予想どおりの結果となった。しかし、いまのままでは、プロとして通用するような優れた音楽性は見出せないので、今後の音楽的内面の充実に期待したい。このステップを経て、浜コンでどれぐらいの結果が出るか。前回大会では、このコンペティションで優勝(直後ではないが)の北村朋幹が第3位までいっている。

なお、聴衆賞も同時に加藤が受けている。

第2位はショパンの1番を弾いた山田翔で、上位はいずれも男性が占めた。第2次予選でも、やはり音圧という点では男性陣に聴きごたえがあったため、それが協奏曲の世界になって、より明瞭に表れたものと推測される。また、審査の中心人物が、清水和音のようなパワー・ヒッターだったことも影響しているだろう。

第3位は花田えり佳。ラフマニノフの2番を弾いたようで、とにかく弾きたかったのだろうが、あいにく選曲が彼女向きとは思えないのだ。入選に止まった村上明子も、ラヴェルという選曲がやや引っ掛かる。やはりコンクールでは、選曲が重要な要素となる。また、早期から歴戦している加藤以外の3人は、さほどコンクール慣れしているとも思えないので、その差も出たのではないかと思う。

【声楽部門】

30日は、声楽部門である。この部門からは意外に活躍者が出ているので、期待の部門である。今回の審査員は、いずれもベテラン歌手として活躍中の大倉由紀枝、大島幾雄、永井和子という3人。本選は4人で争われ、いずれもソプラノが残った。異例なことに、声楽コンクールでは珍しいオケ付きの選考会。オペラ・アリア、もしくは、管弦楽伴奏付きの曲で1曲以上、20分程度のプログラムを歌う。

優勝は、清水理恵。ベッリーニ、ドニゼッティ、グノーと歌っている。ベルカントを中心としたプログラム構成と、2005年の日伊声楽コンコルソで2位となっている実績から、基礎力をしっかりアピールしたものと思われる。現在は、藤原歌劇団の団員。

なお、この部門も聴衆賞は第1位と一致して、清水が受けた。

第2位は鷲尾麻衣。新国研修所の修了生で、現在は国費でニューヨークに渡り研鑽中らしい。昨年、オーケストラ公演の歌手として、カーネギーホールでも歌ったという。鷲尾は、最近の研修所出身者では実績を蓄えはじめている成長株なので、期待が大きい。なお、審査員を務める永井の弟子でもあった。

第3位は、高橋さやか。

【弦楽部門】

大詰めとなる31日は、弦楽部門であった。この部門は、コンクールが大友直人のお膝もとでおこなわれるせいか、上位入選者の東響への採用も目立っている。ソリストのコンペティションという以外に、東響の裏オーディション的な意味も出てきているのは面白いところだ。審査員は、ヴァイオリンの大谷康子と前橋汀子、ヴィオラの川崎和憲、チェロの木越洋。これに部門共通の審査員から、桐朋学長の堤剛も加わった。

優勝は、ヴィオラの大島亮。「ラ・フォル・ジュルネ」のページに東京フィルのゲスト首席と書いてあるのだが、楽団のほうには表記がない。同音楽祭には周辺イヴェントで重ねて出演。ヴィオラ・スペースにも出演しているが、今年のコンクールには出場していなかったはずだ。既にいろいろなアンサンブルに出演しているようなので、一応の実績があると見てよい。

曲目はバルトークの遺作のソナタだから、すこしは派手さもあるが、それでも、地味な楽器でヴァイオリンやチェロを押し退けて優勝したのは天晴れというものだろう。

第2位は、チェロの加藤文枝だった。演奏曲目はドヴォルザーク。先日、藝大の昼のコンサートでデュティユーを弾いていた人だが、あの曲目のパッとしない印象とはちがって、ドヴォルザークには思い入れがあったらしい。これまでにも、同等レヴェルのコンペティションで実績があり、コンクール経験からいっても順当な結果だった。

第3位は、ヴァイオリンの寺内詩織。シベリウスを弾いたようだが、曲目の良さも手伝ったものか、聴衆賞を受けている。この人も若年から各地のコンペティションを歴戦しているが、私の手の届く範囲で探した限りでは上位入選までであり、優勝といった実績は見つからない。

【まとめ】

このコンクールには、私のみるところ、2つの特徴がある。ひとつは近年、ホール側によってショウ・アップ度が高まり、広報が充実して集客もうまくいっている点。ふたつはこれをベースに、入賞者へのアフター・サーヴィスが充実しており、ランチタイムの500円コンサートなどで、多くの聴衆に囲まれる人気公演に立てるような演奏機会がしっかり確保される点である。ギャラは少なくとも、多くの聴衆の前で演奏する体験は、若手のプロ意識を形成するのに絶対必要なことだろう。

館主催でなくとも、入賞者がホールを使う場合には割引措置などがあり、若い音楽家がステップ・アップしていくときに、良心的な配慮がみられる点で人気のあるコンクールである。そうしたコンサートの中から、後刻、記事を改めて、今週末におこなわれる山下牧子のリサイタルを紹介するつもりだ。

最後に、各コンテスタントの頑張りに敬意を表して、結びとする。
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