2009/4/29

ラ・フォル・ジュルネ 「熱狂の日」 エリア・コンサートから 4/29  室内楽

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン、「熱狂の日」音楽祭が28日のオープニング・セレモニーで開幕し、周辺イヴェント(エリア・コンサート)が始まった。祝日である29日は多くの無料コンサートが組まれ、音楽祭のプレリュードを奏でている。私は、2つの丸ビルで行われた3つのコンサートを聴いた。

【17:00 イオス・カルテット @新丸ビル3F】

まず、17:00から、新丸ビル3Fの特設会場で、イオス・カルテットの演奏を聴いた。3Fに上がったエスカレーターのすぐ脇にある、普段は小規模な展示スペース、休憩所となっているような吹き抜けの空間を利用している。座る場所はあるものの、掛けていると演奏はみえないので、立ち見とならざるを得ない。いまは薔薇の展示が行われており、演奏を見るには少しばかり障害となるが、演奏の前後には目鼻を楽しませてくれる。

まだメインとなる3日間に当たっていないので、見やすいのだが、有料公演が始まると、すこし混雑しそうな空間だった。

さて、イオス・カルテットは弦楽アンサンブル、セプトニスちばを母体に、千葉県に縁のあるプロ奏者によって結成された弦楽クァルテットであるという。ヴィオラの植村理一、チェロの窪田亮という中堅奏者と、それよりはすこし若いヴァイオリンの瀬崎明日香、加藤えりなが組み、常設の団体として活動しているようだ。今回は、ハイドンの弦楽四重奏曲 op.76-3 の1〜3楽章を中心とした演奏であった。この曲は「皇帝」のニックネームで知られ、第2楽章の主題は現在のドイツ国歌となっていることは有名。

このクァルテットは、なかなか骨がありそうだった。良くも悪くも、第1ヴァイオリンの瀬崎の個性がそのまま、楽曲の印象を決めることになっているが、実際は、低音のベテランがしっかりした骨組みをつくっており、第2ヴァイオリンの加藤も室内楽をよく知っている。もちろん、4人のチームワークもあるが、特に女性同士と、男性同士の絆が深いように観察できた。それらは各々、高音と低音の内声と外声のダイアローグが、顕著に観察できるという意味を含むことになる。

7月にクァルテットの演奏会でも取り上げる「皇帝」では、室内楽になくてはならない練り込みのあとも窺われ、このグループの追求したいカタチが、なんとなく浮かび上がっていた。それは、既に示したようなダイアローグを生かし、各声部の役割をしっかりと構築することで、ハイドンの音楽の「強さ」を醸し出すとともに、緩徐楽章では表現を抑え、ゆったりした詩情を引き出していった。

アンサンブルの顔となる瀬崎のヴァイオリンはとても伸びやかで、爽やか音色であり、これが全体の印象をフレッシュなものにしているが、反面、細部でやや粗雑な部分も見受けられ、日本人には少ない良質なファースト・ヴァイオリンであるだけに、より深いデリカシーを育てていくことを期待したいと思った。

【18:00 新倉瞳&石川悠子 @マルキューブ】

丸ビル1F入口付近にあるマルキューブは、エリア・コンサートの中心をなす場所である。明るく、高い吹き抜け、広いロビーを利用した特設コンサート会場には、小型の電子増幅パイプ・オルガンも設置された。

ここで、あまり興味はなかったが、ヴィジュアル系、フィーリング・チェリストである新倉瞳の演奏を聴いた。時間つなぎといったところであるので、止むを得ないが、まったく趣味に合っていない。バッハの無伴奏(第1番)は、まるで息吹きの感じられない、敢えていえば、昼寝をしながら弾いているような演奏だった。逆にいえば、まったく当たり障りなく、BGMのように演奏するのが、彼女の役割というところなのかもしれない。

そう思うと、演奏が悪いとか、無意味だとかいう前に、この人のことが気の毒になってくるのである。なぜなら、もっと表現を抉っていけば、ポテンシャルのありそうな奏者であるのに、それを敢えて抑えこむようににして、そこらの学生のような弾き方をしているからだ。一方、ピアノ伴奏の石川悠子はしっかりしたピアニストで、彼女が入ることで、ようやく音楽らしいものになっていたことに注目したい。

演奏曲目も、先程の骨抜き無伴奏組曲の抜粋に、バッハの「エア」、シューマンの軟体化したトロイメライ、ブラームスの子守唄、エルガー「愛のあいさつ」と、新倉のイメージにあった性格の作品が選ばれている。とはいえ、こうした演奏にもしっかりと需要はあり、この日から出演のテレビCMが茶の間に流れるというのだから、クラシック音楽の新しい用法にも、あるいは、(皮肉ではなく)敬意を払うべきなのかもしれない。

【19:00 星川美保子&森武靖子 @マルキューブ】

そして、この日最後の公演がこの2人だった。星川は二期会所属で、古楽でも活躍するソプラノ。これに、先に紹介した小型オルガンで伴奏がつき、それに、オルガン独奏曲が2つというプログラム。声楽はオフマイクでもいけそうな感じだが、オンマイクであっても、質のいいものはよくわかるものだ。マイクを通しても、星川の清楚な歌いくちは、あくまで上品に響く。この日の3つのコンサートではやはり、ここが本物だった。

星川の清らかな声の魅力が凝縮したオープニング・ナンバー、グノーがバッハの平均律の1曲に歌詞をふった「アヴェ・マリア」でしっとりとスタートする。彼女の歌では、最初のコラール(主よ、人の望みの喜びよ)が特に素晴らしく、丁寧な歌いくちから、じわりと重みを感じる信仰心が自然に浮かび上がってきた。アジリタも柔らかく、表現に見合った上品さがある。

そして、この2人の演奏が「本物」と感じられたのは、何といっても、ただ「なんとなくバッハらしい」演奏するのではなく、そこに乗っていくべき信仰心を、しっとりと表現に載せて、聴き手に届けることができていたせいだ。

森武靖子独奏によるバッハのコラールと、パッサカリアも、正にそのとおりだろう。とりわけ、規模の大きな「パッサカリア」では、(それは)舞曲のひとつとしての形式であるのだが、その躍動感が直ちに、神への想いをのせた実直なエネルギーへと、すなおに結びついていくのが、よくわかる演奏だ。電気増幅したなんちゃってオルガンの演奏は、意外に迫力があり(でも、すこしだけ音量は絞ったほうがいい)、この音色が演奏するシチュエーションに実によくマッチしているのは面白い。楽曲の構造に見合ったダイナミズムを、緻密に織り上げながらの日本人らしい繊細な演奏が光った。最後の部分だけ、「やっぱり、この楽器じゃ駄目なんだ!」という感じを受けたが、もちろん、そう贅沢ばかり言ってはいけない。

【まとめ】

この日のレポートは、こんなところである。まだ、本格的な公演に入っていないこともあり、人出はさほどではなかった。丸ビル、新丸ビル自体も、今回、休みの幅が大きくなり、東京脱出派が増えたものか、さほど混み合っている雰囲気がない。今後、30日と1日の平日2日間は、ライト系の公演がそれぞれ2回だけ組まれているだけだが、土曜日からの4日間はフルに無料公演が組まれているので、こちらも計画に含めると、さらに音楽祭を楽しむことができるだろう。

これらの公演は、本公演のチケット購入は必要ないので、ぶらっと来て楽しむことができる。かく言う私も、本日の出費は交通費のみであった。
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2009/4/26

直前スペシャル! ラ・フォル・ジュルネ・ジャポン2009 A  クラシック・トピックス

さて、結局、私が聴くことになる公演は、次のとおりとなる。

 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

初日:5月3日(Sun.)

○143(13:15) ベルリン古楽アカデミー
 管弦楽組曲1&3番【J.S.Bach】 Hall:C
○145(16:45) P.ピエルロ&リチェルカールcons.
 ト短調ミサ曲&マグニフィカート【J.S.Bach】 Hall:C
○146(18:45) M.コルボ&ローザンヌ声楽&器楽ens.
 ロ短調ミサ曲【J.S.Bach】 Hall:C
○147(22:00) C.カヴィーナ&ラ・ヴェネクシアーナ
 受難曲「われらがイエスの御体」【Buxtehude】 Hall:C

中日:5月4日(Mon.)

○231(9:45) S.センペ&カプリッチョ・ストラヴァガンテ
 rc、弦楽、通奏低音のための組曲【Telemann】ほか Hall:B5
○253(13:30) B.エンゲラー
 バッハのカンタータなどピアノ編曲作品 Hall:D7
○234(15:15) 工藤重典&モディリアーニQ
 フルート四重奏曲【Mozart】ほか Hall:B5
○235(17:00) B.ペロー&ラ・レヴーズ
 トリオ・ソナタ【Reincken】ほか Hall:B5
○257(20:30) A.ケフェレック
 バッハのカンタータ(ブゾーニ編)ほか Hall:D7
○238(22:30) アンタイ兄弟
 flとcembのためのソナタ【J.S.Bach】 Hall:B5

千秋楽:5月5日(Tue.)

○361(9:30) 大塚直哉
 平均律U【J.S.Bach】 Hall:G402
○363(13:00) B.キュイエ
 フランス組曲【J.S.Bach】ほか Hall:G402
○344(15:45) B.ヘンドリックス&ドロットニングホルムB-ens.
 スターバト・マーテル【Pergolegi】ほか Hall:C
○366(17:30) M.グラットン
 W.F.バッハの鍵盤作品など Hall:G402
○356(19:00) T.ヴァシリエヴァ&勅使河原三郎
 無伴奏チェロ組曲&ダンス【J.S.Bach】 Hall:D7
○337(21:15) シュ・シャオメイ
 平均律T【J.S.Bach】 Hall:B5

 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

マレ・サンフォニーの来日断念の余波は、私のところにも来た。なぜか、モーツァルトのプログラムを聴くことになったが、モディリアーニ・クァルテットは聴いてみたかったし、工藤さんは素晴らしいフルーティストなので、そのままにした。

なるべく大バッハだけにならないようにしようと思っていたが、うまくチケットが取れなかった部分もあり、結局、8割方が大バッハ中心のプログラムとなった。周辺プログラムと組み合わせて、今年もどっぷり楽しみたい。
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