2009/3/15

浜松国際ピアノアカデミー コンクールは高木竜馬ほか6人が本選へ  クラシック・トピックス

浜松国際ピアノアカデミーは、「浜コン」とともに重要なイベントとして機能している。アカデミーは中村紘子音楽監督の下、世界から優秀な教師が集まり、毎年、おこなわれている。独奏のクラスに加え、コンチェルトのクラスもあり、ピアニストとして必要な身体のつくり方など、実践的なプログラムが組まれており、成果を確かめるべく最後におこなわれるコンクールは、受講者にとって重要な経験となる。

前回の浜コンの覇者、アレクセイ・ゴルラッチをはじめ、三浦友里枝、菊池洋子、アリス=紗良・オット、それに、上原彩子などを輩出したアカデミーの質の高さは、これらの受講者たちの実績が物語っている。今回は、中村音楽監督のほか、アンジェイ・ヤシンスキ、アリエ・ヴァルディ、ミヒャエル・クリストという現役の名教師たちに加え、若手のアレッシオ・バックス(浜コン入賞者)が講師となっている。また、受講者には、幼いときから注目されている高木竜馬がいる。

13日、コンクールの予選がおこなわれた。本選に進出できるのは、受講者30人のうち、僅かに6人だけ。1回の審査で、一気に24人が削られるので、選考は難しいだろう。浜コン同様、演奏はすべて公開されているので、本選進出者以外の演奏にも触れることができる。確かに、数人は、他とはモノがちがうと感じさせる演奏をしている。だが、6人のうち残りの数人は、今回、予選を突破できなかった受講者と比べて、差は小さかったと思う。

注目の高木竜馬は、やはり一歩抜けた演奏をしている。彼が選んだのは、ヴィルトゥオーゾ・プログラムの代表格として知られ、ホロヴィッツも得意としたラフマニノフのソナタ第2番(1・3楽章)。冒頭から陰影のついたドラマティックな響きを構築し、ダイナミックな表現を繰り広げた。マイクが拾いきれないほどの音量があり、これは他の受講者と比べて図抜けていた。だが、より注目されるのは、その音色の柔らかさであり、これら硬軟のバランスが素晴らしいのだ。

高木の演奏は、彼が13歳ぐらいのころに聴いたことがあるが、そのときも、ショパンのスケルッツォ第2番を、見事なフォルムで弾き上げていて、すごい子どもがいると驚いたものだ。ちょうど同じとき、田村響(ロン・ティボー優勝)は風が吹きそうな響きで、ピアノを弾いていた。それと比べると、高木のつくる響きは、ずっと手ごたえのあるものだった。だが、そのときと比べても、ずっと逞しく、柔軟な表現ができるようになっている。いま、彼は16歳だ。

もうひとり、優勝候補ではないかと思ったのは、カナダからやってきた13歳、ヤン・リシエツキだ。

審査員各々に捧げるような、バッハ/ラヴェル/ショパンという構成もにくいが、まず、バッハの冒頭で、格調高く歌いはじめたときの音色の素晴らしさは、東京音楽コンクールで「審査員大賞」を受けるきっかけとなった、北村朋幹の演奏に接したときの感動に似ていた。「夜のガスパール」の〈オンディーヌ〉は、フォルムの美しさが無類である。よく考えられた両手のアクションは、響きだけではなく、視覚的にもオンディーヌのポエジーを物語っている。さらに、そのヒラヒラした精霊のイメージが、ショパン(エチュード op.25-11)のなかにも現れているのが面白い。ショパン自体は、やや表現が硬く、ヤシンスキ教授には不満の残るものだったかもしれないが、パフォーマンス全体を振り返ると、非常に味わい深いものだった。

表現の難しいヤナーチェクのソナタから、特に弱奏部分で、深みのあるポエジーを引き出した後藤正孝。リスト「ダンテを読んで」を弾き、ときどき粗くなりながらも、肉厚な表現をみせた韓国の14歳、チョ・ソンジンも注目に値する。

本選進出は、チョ・ソンジン、後藤正孝、ヤン・リシエツキ、仲田みずほ、尾崎未空、高木竜馬の6人。最年少は、リシエツキと尾崎の13歳、後藤が24歳で年長である。本選は、ショパンが2人、ベートーベン、サン=サーンス、ラフマニノフのコンチェルト。これはオケ伴ではなく、ピアノによる伴奏でおこなわれる。コンチェルト講習の実践編という位置づけでありながら、室内楽的な要素も試される興味ぶかい選考となる。15日 11:00から、まもなく本選が開始するが、これもライヴで配信される。
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