2009/3/20

浜松国際ピアノアカデミー コンクールは、韓国のチョ・ソンジンが優勝!  クラシック・トピックス

結果のアップが遅くなったが、先日、ここに書いた浜松国際アカデミーの最後に行われるコンクールは、15日に本選がおこなわれた。既述のとおり、もうひとりのピアニストがピアノ伴奏をおこないながらの、協奏曲の演奏による審査である。

結果としては、韓国から参加の14歳、チョ・ソンジンが優勝した。審査委員長の中村紘子は、非常にレヴェルの高い年だったとしているが、その言葉は決して誇張ではなかったと思う。ただし、ロー・ティーンの受講者が多かったこともあり、協奏曲を弾き慣れていないのは傍目にも明らか。そのなかで、あれだけの演奏ができたということは、やはり、一廉の才能ではないのだろう。また、コンクールでは、どの曲を弾くかということも大事なポイントだ。その点で、ヤン・リシエツキのショパンの1番、仲田みずほのシューマンというのは、身の丈にあっていない感じがした。一方、優勝したチョ(ショパンの1番)や、尾崎未空のサン=サーンス(リシエツキと同じ3位)は、自分の表現にぴったりと来ているし、それが上位進出の決め手となっている。

チョ・ソンジンの演奏は、非常にクリアな打鍵と、表現の無理のなさが際立っていた。バックの林達也は藝大の先生のようだが、チョが抜けて、バックが同じようなフレーズを弾いたときに、その響きがあまりにも陳腐に思えてしまうほど(伴奏なので遠慮気味ではあろうが)、輝きのあるピアノのラインが印象ぶかい。目をつぶって聴いていると、そちらに陳腐なほうがチョのほうだと思っていたが、どっこい、まったく反対なのであった。これまでにジュニア・コンクールでも実績があり、モスクワのショパン青少年コンクールで優勝したときには、ニコライ・ペトロフに激賞されるなど、圧倒的なパフォーマンスだったようである。

注目の高木竜馬は、第2位に止まった。ラフマニノフをスケール一杯に弾き上げることは、彼の表現のめざすところであり、それにこだわって予選につづき、本選もラフマニノフの2番を選ぶ。しかし、既にプロ並みにこの曲を弾く機会を得ている彼だが、すこし粗さが目立つ演奏になっていた。手抜きはないが、表現が雑で、起伏が滑らかでないのだ。今回も、音量では抜群だったように思うだが、伴奏者を吹っ飛ばして進むような表現には、感心しなかった。圧倒的な実力をもちながら、表現に工夫がなく、2位という結果は頷けた。

3位は、ヤン・リシエツキと尾崎未空。リシエツキは、決して悪い演奏ではないのだが、チョの演奏にみられたフォルムの確かさと比べると、才気が先んじている点が問題だった。滑り降りるようなアルペッジオの爽快さとか、プロとして磨けば光る部分が多く、今後の研鑽を見守りたい。これに対し、現時点での完成度が高いのは、尾崎。サン=サーンスはこれまでのコンクールでも弾いてきているようで、これは鉄板というところなのかもしれない。だが、今後の伸びしろをどこに求めるかは難しく、その点、日本のピアノ教育の行き詰まりを象徴している。

3位が2人なので、通常ならば「5位」となるところだが、差が小さいということを言いたいのか、後藤正孝は「4位」となっている。ベートーベンのコンチェルトを選んだのは、前回の浜コンのゴルラッチに学んだ作戦なのかもしれないが、自分にあっておらず、「できないことをした」という印象だ。5位は、地元期待のひとり、仲田みずほとなった。

また、モスト・プロミッシング・アーティスト(もっとも将来性のある音楽家)には、ともに13歳と、本選出場者では最年少だったリシエツキと尾崎が表彰された。また、予選敗退者から特別に「奨励賞」が選ばれ、井上陽南子(受講者最年少の11歳)、小島稜、タミ・リン、松葉朋樹が選出されている。1次だけで落とさねばならなかったのは、すこし惜しかったという想いがあったのだろう。

中村委員長は、今回の受講者は世界のどこにいっても通用する人ばかりだとコメントしている。来年は、東海地区の企業の不審もあり、アカデミーの歴史が途絶えてしまうが、とりあえず、今回の受講者たちの動向に注目したい。
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2009/3/15

浜松国際ピアノアカデミー コンクールは高木竜馬ほか6人が本選へ  クラシック・トピックス

浜松国際ピアノアカデミーは、「浜コン」とともに重要なイベントとして機能している。アカデミーは中村紘子音楽監督の下、世界から優秀な教師が集まり、毎年、おこなわれている。独奏のクラスに加え、コンチェルトのクラスもあり、ピアニストとして必要な身体のつくり方など、実践的なプログラムが組まれており、成果を確かめるべく最後におこなわれるコンクールは、受講者にとって重要な経験となる。

前回の浜コンの覇者、アレクセイ・ゴルラッチをはじめ、三浦友里枝、菊池洋子、アリス=紗良・オット、それに、上原彩子などを輩出したアカデミーの質の高さは、これらの受講者たちの実績が物語っている。今回は、中村音楽監督のほか、アンジェイ・ヤシンスキ、アリエ・ヴァルディ、ミヒャエル・クリストという現役の名教師たちに加え、若手のアレッシオ・バックス(浜コン入賞者)が講師となっている。また、受講者には、幼いときから注目されている高木竜馬がいる。

13日、コンクールの予選がおこなわれた。本選に進出できるのは、受講者30人のうち、僅かに6人だけ。1回の審査で、一気に24人が削られるので、選考は難しいだろう。浜コン同様、演奏はすべて公開されているので、本選進出者以外の演奏にも触れることができる。確かに、数人は、他とはモノがちがうと感じさせる演奏をしている。だが、6人のうち残りの数人は、今回、予選を突破できなかった受講者と比べて、差は小さかったと思う。

注目の高木竜馬は、やはり一歩抜けた演奏をしている。彼が選んだのは、ヴィルトゥオーゾ・プログラムの代表格として知られ、ホロヴィッツも得意としたラフマニノフのソナタ第2番(1・3楽章)。冒頭から陰影のついたドラマティックな響きを構築し、ダイナミックな表現を繰り広げた。マイクが拾いきれないほどの音量があり、これは他の受講者と比べて図抜けていた。だが、より注目されるのは、その音色の柔らかさであり、これら硬軟のバランスが素晴らしいのだ。

高木の演奏は、彼が13歳ぐらいのころに聴いたことがあるが、そのときも、ショパンのスケルッツォ第2番を、見事なフォルムで弾き上げていて、すごい子どもがいると驚いたものだ。ちょうど同じとき、田村響(ロン・ティボー優勝)は風が吹きそうな響きで、ピアノを弾いていた。それと比べると、高木のつくる響きは、ずっと手ごたえのあるものだった。だが、そのときと比べても、ずっと逞しく、柔軟な表現ができるようになっている。いま、彼は16歳だ。

もうひとり、優勝候補ではないかと思ったのは、カナダからやってきた13歳、ヤン・リシエツキだ。

審査員各々に捧げるような、バッハ/ラヴェル/ショパンという構成もにくいが、まず、バッハの冒頭で、格調高く歌いはじめたときの音色の素晴らしさは、東京音楽コンクールで「審査員大賞」を受けるきっかけとなった、北村朋幹の演奏に接したときの感動に似ていた。「夜のガスパール」の〈オンディーヌ〉は、フォルムの美しさが無類である。よく考えられた両手のアクションは、響きだけではなく、視覚的にもオンディーヌのポエジーを物語っている。さらに、そのヒラヒラした精霊のイメージが、ショパン(エチュード op.25-11)のなかにも現れているのが面白い。ショパン自体は、やや表現が硬く、ヤシンスキ教授には不満の残るものだったかもしれないが、パフォーマンス全体を振り返ると、非常に味わい深いものだった。

表現の難しいヤナーチェクのソナタから、特に弱奏部分で、深みのあるポエジーを引き出した後藤正孝。リスト「ダンテを読んで」を弾き、ときどき粗くなりながらも、肉厚な表現をみせた韓国の14歳、チョ・ソンジンも注目に値する。

本選進出は、チョ・ソンジン、後藤正孝、ヤン・リシエツキ、仲田みずほ、尾崎未空、高木竜馬の6人。最年少は、リシエツキと尾崎の13歳、後藤が24歳で年長である。本選は、ショパンが2人、ベートーベン、サン=サーンス、ラフマニノフのコンチェルト。これはオケ伴ではなく、ピアノによる伴奏でおこなわれる。コンチェルト講習の実践編という位置づけでありながら、室内楽的な要素も試される興味ぶかい選考となる。15日 11:00から、まもなく本選が開始するが、これもライヴで配信される。
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