2008/11/27

東響も新シーズンのプログラムを発表  ニュース

4月楽季勢では最後に、東京交響楽団が新しいシーズンのプログラムを発表した。オーナー企業であるすかいらーくのトップが解任され、お馴染みの「すかいらーく」の名称さえ消滅しようというときだが、踏ん張って質のいいプログラムを用意してくれた。

【指揮者体制にも動き】

指揮者体制にも動きがあり、現在、音楽監督を務めるユベール・スダーンの任期延長が発表された。2009年9月から5年間を任される、異例の長期契約となっている。もともとが2004年9月の就任であったから、この任期を全うすれば、東響との関係は10年に及ぶということになり、G.アルブレヒト&読響の9年間を越す。

また、首席客演指揮者には、イタリーの中堅指揮者、ニコラ・ルイゾッティが迎えられることになった。ルイゾッティと東響は、サントリーホールのホール・オペラで複数回の共演をして、いずれも好評を得たという。モーツァルト作品では、コンティヌオとしても活躍した。また、ミューザのサマー・フェスタにも登場して、素晴らしい演奏をみせたのも記憶に新しい。東響と相性のいい指揮者としては、ほかにキタエンコ、ガンバなどもいるのだが、ルイゾッティが特に選ばれたのは、ピット内の仕事での強化を図る狙いがあるのかもしれない。

ルイゾッティは、特にイタリーものでは世界的に評価が高く、祖国であるイタリーはもちろん、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場など、主要な劇場で常連にちかい働きをしている。世界の最前線を知る指揮者が、東響の戦列に加わることとなった。任期は定められておらず、実質的には名誉職との色合いが強い。最初のシーズンは、4月のサントリー定期に、1回だけ登場する(ほかに、ホール・オペラには来年も出演)。意外なドイツものでの指揮は、彼の本当の力を測ることになるだろう。

【来季のスダーンはシューマンとブラームス】

昨年はハイドン、今年はシューマンに狙いを絞ったスダーンだが、来季は、ブラームスとシューマンを組み合わせたプログラムを中心に、楽団を導いていく。楽団のメイン・ストリームを成すサントリー定期では、スダーン指揮の演奏会以外でも、ブラームスかシューマンの曲目が必ず入っているのは、ここのところのプログラミングと共通した特徴だ。ただし、シューマンとブラームスのオーケストラ曲では、ニッチな作品は少ないため、ここ2年と比べると、ずっしりしたプログラムに見える。

このうち、スダーン自身が指揮するのは、シューマンの交響曲全曲、ブラームスの協奏曲全曲。そして、「オープニング・ナイト」で演奏するシューマンの歌曲や、「ドイツ・レクイエム」である。もうひとつ、アンコールとなるハイドン・プロの演奏会がある。なお、シューマンの交響曲については、すべてマーラー編で演奏するというのが、スダーンらしいところだ。私は、マーラー編は蛇足であると思うが、あえて先人の作品をいじくったマーラーの想いを、どのようにスダーンが拾うのかということには興味がある。

【4人の主要指揮者は相変わらず】

東響が誇る、4人の指揮者による役割分担は相変わらずだ。このなかで敢えて注目したいのは、大友直人の仕事ぶりだ。彼は、ポピュラー担当という感じの損な(でも、ある意味ではオイシイ)役回りを、背負ったという感じがする。特徴的なのは、彼の取り仕切る芸劇シリーズで、先年、惜しくも亡くなったハネケンさんのアレンジによる、交響曲「宇宙戦艦ヤマト」を取り上げるなど、手が込んでいる。彼のメイン曲を追っていくと、ベッリオーズ「幻想交響曲」、ブラームス「交響曲第1番」、サン=サーンス「交響曲第3番 オルガン付」、ベートーベン「交響曲第7番」、そして、マーラー「交響曲第9番」と、徹底した名曲路線となっている。そのなかに1回だけ、こだわりのシベリウス・プログラムがあるのは目を惹くが・・・。

これには批判的な意見もあるようだが、楽団の現状を踏まえ、誰かがやらければならない役回りを、彼らしいオシャレな仕掛けで、うまくプログラミングしていることは、素直に評価したい。

今季の仕事では、「ペトルーシュカ」のスクランブルが記憶に新しい飯森範親は、東響こだわりの、ヤナーチェク・シリーズ「ブロウチェク氏の旅行」を振る大仕事が待っている。前回の「マクロプロス家の秘事」では思い出ぶかい仕事を残してくれただけに、今回も期待が寄せられるところだ。彼の登場はほかに2回だけで、メインはオルフの「カルミナ・ブラーナ」とマーラーの「交響曲第10番」である。マーラーは、後世の作曲家の補筆による4楽章版と思われる。

秋山和慶は、3プログラム4回の登場となる。ラフマニノフの「交響曲第2番」、ヒナステラなどのラテン音楽、そして、「第九」である。ヒナステラをメインに据えた、凝ったプログラムがいかにも秋山という感じだ。

【お馴染みの顔ぶれ】

ルイゾッティが最たるところだが、お馴染みの顔ぶれが、定期的に東響の活動を彩るようになったことは歓迎したい。来季は、シュテファン・アントン・レックと、ラモン・ガンバが、東響の指揮台に立つ。

これまで、「惑星」やショスタコーヴィチの交響曲で聴き手を虜にしたガンバは、かつてミッコ・フランクが記念碑的な演奏を残した、「火の鳥」を演奏する。楽団の誇る3人の首席ホルン奏者と、かつてアンサンブル・ウィーン=ベルリンのメンバーとして共演の実績があるシュテファン・ドール(ベルリン・フィル首席)を組ませての、シューマン「コンツェルトシュテュック」も興味ぶかい。さらに、マーラー編ではないが、ラヴェル編でシューマンの「謝肉祭」を取り上げるなど、スダーンの要請にフルに応えたプログラミングにも好感をもつ。

レックは新国のピットで出会い、舞台に上がってはハルサイで共演した。私はいずれも聴き逃しているが、なかなか良かったという評判になっている。今回は、マーラーの「悲劇的」に挑む。

【そのほかの指揮者たち】

そのほかの指揮者で注目されるのは、名曲全集に登場のバイロン・フィデチス。彼はギリシアの指揮者らしく、今回、予定される滝千春(vn)との組み合わせで、山響に客演して好評だったのを、そのまま東響にもってきた形だ(ただし、プログラムは別)。母国・ギリシアの音楽、そして、山響客演のときに気に入り、すぐにアテネに呼んだ滝とのコンビによるグラズノフの協奏曲は、注目される。滝は、名教師・ブロンのうら若い弟子だ。

サッシャ・ゲッツェルは、メータ、小澤、ゲルギエフなどが評価する若手で、PMF音楽祭にも出演した。このコネがあれば、ウィーン国立歌劇場に出演済というのも当たり前というべきか。随分と、エネルギッシュな指揮ぶりが話題。メインは、R.シュトラウスの「ばらの騎士」組曲である。当夜のソリストは、お馴染みのガブリリュクだが、曲目が決まっていない。ワーグナー、R.シュトラウスなので、多少の希望を込めた予想は、ウェーバーのピアノ協奏曲第2番!

クリストフ・アーバンスキは26歳の若さ、ポーランドの指揮者。よくわからない人だが、「プラハの春」音楽祭の指揮者コンクールで、優勝の実績があるそうだ。それにしても、いきなりの川崎定期、オペラシティ・シリーズでの起用には疑問も。

邦人指揮者は、現田茂夫、高関健、小林研一郎、金聖響、尾高忠明と、いずれも、音楽好きなら誰でも知っている人たちで固めた。コバケンの令嬢、小林亜矢乃は良いピアニストという人もいるが、ほかの指揮者が起用した例を知らず、父娘共演はどうかと思う(別に、クラシック界では珍しくないが)。金聖響の回は、ボストリッジがヘンデルのアリアを歌うのが注目だが、東響のバロックは甚だ未知数である。それに、ボストリッジはいろいろとオペラに出るようになって、すこし声が荒れたというのが私の見解だ。

・・・次回につづく。
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