2008/11/4

都響と東フィルが、来シーズンのプログラムを発表 A  ニュース

少し間が空いたが、都響に続いて、東京フィルの来季について展望してみたいと思う。一言でいうと、面白みがない。だが、よく味のわかった素材を、丁寧に料理しているということになるのかもしれない。また、新国ほか、オペラやバレエのピットでの出会いを、オケ定期にも持ってくるのは、最近の東京フィルの特徴である。

【オペラ・バレエの指揮者たち】

まず、藤原歌劇団のピットで出会い、ロッシーニ・ルネッサンスの日本版を演出したアルベルト・ゼッダの登場が目玉となりそうだ。「ウィリアム・テル」の抜粋が予定されているが、序曲をはじめとして知名度の高いこの作品なのに、不思議と日本の舞台にかかることが少ない演目である。また、ロッシーニの珍しいカンタータ「ディドーネの死」と「スターバト・マテル」の組み合わせは、できれば逃したくないものだ。一部の人気指揮者を除くと、オペラ畑の指揮者はオーケストラの曲目を振る機会が少なく、ゼッダもそのような境遇にある。だが、オペラ指揮者だって、オケの曲目に情熱がないわけではない。ここを逃すと、なかなか聴くことはできないロッシーニの声楽曲を、ゼッダの棒で体験できるのは望外の喜びであると同時に、ゼッダ自身もこの機会を大事にするだろう。

オペラ畑からはほかに、次期のトップ・ポスト候補とも目されているダン・エッティンガーが、再び登場するようだ。今シーズンは通奏低音や室内楽でも腕前を披露し、マルチに活躍の機会があったが、来シーズンもベートーベンのトリプル・コンチェルトで、荒井コンマスや、チェロ首席、金木博幸とともに、ピアノ弾き振りに挑む予定になっている。「浄夜」と「ツァラ」を中心とした心憎いプログラムも用意されており、エッティンガーの回は、なにかと趣向を凝らしてくるので、今後とも注目度が高くなりそうだ。

新国関連では、現芸術監督の若杉と、次期芸術監督の尾高が、ともに舞台に立つ予定だ。ただし、若杉に関しては入院をしたという情報もあり、健康面が心配される。ドイツでキャリアを積み上げた若杉だけに、ベートーベンの「運命」がプログラミングされているのは気を惹く。尾高はブルックナーの9番をメインに据えているが、東京フィルとの組み合わせでは、私としては遠慮したい。バレエでの共演が多い渡邊一正との絆を確かめるように、プロコフィエフの「シンデレラ」の組曲を「コンサートスタイル・バレエ」で上演するという独特の企画が用意されたのも注目だ。

【張明勲とプレトニョフ、そのほか】

ここのところ、共演を積み重ねる指揮者から、プレトニョフも連続出場を果たすことになった。ロシアものを中心に、やはり趣向を凝らしたプログラムが毎年、話題を提供してくれるが、今回はカバレフスキとグラズノフというプログラムが目を惹く。もうひとつのプログラム、「マンフレッド」交響曲もチャイコフスキーの作品のなかでは、演奏機会が少ない。

張明勲はブラームスを中心としたプログラムで、4つの交響曲をツィクルス演奏するほか、大曲「ドイツ・レクイエム」を指揮するのが注目だろう。コーラスは、東京オペラシンガーズ。コンサート・オペラ「トラヴィアータ」(抜粋)は、張の指揮だけに注目されるだろうが、わざわざ東京フィルで聴きたいプログラムではない。こちらのコーラスには、新国の合唱団が出張する。

その他の指揮者では、飯守泰次郎、小林研一郎というベテラン指揮者、外国からは、ルドヴィーク・モルローが呼ばれている。モルローは欧米で広く活躍するが、国内では、アンサンブル金沢とも関係が深い。

【ソリストたち】

この楽団の来季を彩るソリストたちをみても、フォル・ジュルネの影響は見られる。まず、スケールも身体も大きな新星ピアニストとして注目された、プラメナ・マンゴーヴァがラフマニノフの4番で登場するのは凄い。マンゴーヴァはアルファから録音も出しており、上質な演奏を聴かせてくれる。フォル・ジュルネでは見かけただけだが、評判は良かったし、本国でも高く評価されたという。音楽祭の人気者、ピアニストのアンドレイ・コロベイニコフも、チャイコフスキーの1番で登場する。音楽祭以前から知られていたが、趙静も「熱狂の日」アーティストに入っている。

楽団の首席奏者である辻本憲一や、東響の首席奏者として注目を集めつつある佐藤友紀の師でもあり、金管奏者ならば知らないものがないという名手、トランペットのマティアス・ヘフスの登場は、ブラス・ファンにとっても注目の的になる。彼が演奏するのは、フランスの瀟洒な作曲家、ジョリヴェの作品である。ホルンのヴァン(ファン)・デ・メルヴェは、ロッテルダム・フィルでソロ奏者を務める人物ということらしい。モーツァルトのホルン協奏曲第4番を吹く。

【まとめ】

プログラムは入り組んでいてわかりにくいが、ドイツものを中心に、シンフォニー、オペラ、バレエ、コンチェルト、管弦楽曲が、コンスタントに配されている印象を受ける。日本人の作品も3つ含まれ、そのうち2つは三善晃の作品である。「オーケストラのためのノエシス」は、東京フィル200回目の定期のためのアニヴァーサリーに委嘱された作品ということで、楽団ゆかりの曲目である。

随分と早めの発表になったが、まだ虫食いになっている部分が多いようだ。今後、発表が進んでいったとき面白そうなのは、「午後のコンサート」と特別演奏会である。年末「第九」はソリストが豪華なわりに、指揮者がオンドレイ・レナルトというのは、センスのいい選択なのであろうか。このコンビは、二期会「仮面舞踏会」のときのコンビである。中嶋彰子、山下牧子、笛田博昭、甲斐栄次郎というソリスト、プラス、東京オペラシンガーズによる第4楽章は、エキサイティングなものになることは請け合いなのであるが・・・。
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