2007/9/24

スクロヴァチェフスキ 読売日響 ショスタコーヴィチ交響曲第10番 芸劇名曲シリーズ 9/24  演奏会

本当は別の公演にいくつもりが、いろんな理由から、ここになってしまいました。読売日響の芸劇シリーズは、常任指揮者のスクロヴァチェフスキのタクトで、シューマンとショスタコーヴィチですから不足はありませんが・・・。

まず、シューマンの交響曲第4番は、まあまあでしたね。新日本フィル&ブリュッヘンによる同曲を聴く前後から、シューマンの交響曲がマイブームになって、たくさん聴いていますので、大感動というほどでは・・・。でも、スポーティな揺るぎない流れのなか、響きの厚みも同じように大事にするスクロヴァチェフスキの演奏からは、今後、楽団が向かう新たなステージというのを思い描くことができました。細部まで考え込まれた歌いまわしが、ときにこころに引っ掛かってくるのが印象的でしたが、全体的には動きにややキレがない感じも。前日に聴いたシャイーの変な演奏よりは、はるかにカッチリした演奏でした。フォルムは、やっぱりスクロヴァだけに、しっかりしています。

ショスタコーヴィチの交響曲第10番は、力づくではショスタコーヴィチは弾けないというスタンスからいくと、見本のような演奏でした。特に、第4楽章のおわりのトゥッティ(全奏)で、弦と管、それにティンパニーがきれいに重なっていく部分の、響きの美しさというのには参りましたね。あれだけティンパニーを強打しても、全然、濁らない響きの堅固さに驚嘆させられたものです。これは凄い。

第1楽章は、本当に怖さを感じた高関&群響の演奏もありましたが、そういうタイプの演奏ではなく、あまり威丈高にならずに丁寧な響きのデザインを組み上げ、ときには思いきって明るめの響きも使っての、理知的な演奏だったと思います。もちろん、要所では胸を揺さぶるような表現もありますが、弦のベースを大事にして、祈るような響きが耳を惹きました。特に印象的なのは、眠るように弦と管の響きが萎れていく弾きおわりの部分です。

第2楽章は凝縮して良い演奏なのですが、揺るぎない流れのなかにも、きわめてクリアーな音像が印象づけられ、素晴らしい演奏となっていました。弦に展開するエピソードが明確で、管の響きにも粗さがありません。ちゃんと調べていないので正解かわかりませんが、第3楽章以降で明確に出てくる「d-Es-c-h」主題がここでも千切れて耳に残り、それがド・ミ・ト・リ、ド・ミ・ト・リ、ついには、「ド・ミ・ト・リ・ショスタコーヴィチ!」と呼ぶように聴こえた(のは気のせいでしょうか)。

第3楽章は、独特の演奏です。ファゴットをはじめとする管楽器のデリカシー溢れる演奏が、ぐっと演奏を引き締めていましたが、全体にとても重々しい響きが選ばれ、弦がときに荘厳な響きをつくると、なにか構えの大きな葬式のような雰囲気が滲み出てきました。それはスターリンのためのようでもあり、また、彼のために葬られてきた多くの人たちのためのようでもある。かき乱すような荒々しさとともに、愛おしいまでに相手を包み込むような愛情に満ちあふれているからです。上げ弓だけで演奏されるコンマス(藤原浜雄)のソロも厳しめに聴こえ、このあたり、徹底していましたね。弾きおわりは、第1楽章を再現するように、眠りにつくような感じで、d-Es-c-hの響きとともに沈んでいきました。

その荘重な雰囲気を引きずりながら始まった第4楽章。アンダンテの木管のリレーは、ひとつの聴きどころでした。特に、おわりのほうでもしっかりしたソロを聴かせた、ファゴットの深い音色が印象に残っています。アレグロに移っても安易に明転するのではなく、弦はなお緊張した響きを保ち、管の細かい妙技などはどれも見事に決まっていましたが、それに託される厳しさも抜けていかない。弦のベースが丁寧に守られるなか、管、打楽器が、きれいにコートされていき、既に述べたような響きのミルフィーユ状態が美しく投影されたのが、この日の演奏の最大のポイントとなりました。

という感じで、ショスタコーヴィチのほうが、一段、優れた演奏になりました。ただし、このコンビからすれば、もう一皮ぐらい向けた可能性もあるのではないかと、贅沢な要求をもってしまったのも正直なところ。響きのアジャストも、折角の(提携した)芸劇ながら、しっくり来ていない感じもあります。来週のブラームスに、いっそうの期待を寄せたいと思います。

【プログラム】 2007年9月24日

1、シューマン 交響曲第4番
2、ショスタコーヴィチ 交響曲第10番

 コンサートマスター:藤原 浜雄

 於:東京芸術劇場
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2007/9/24

オペラ彩公演 『トゥーランドット』が佐川吉男音楽賞/奨励賞を受賞  ニュース

このページでもレビューを掲載した、1月のオペラ彩主催公演、プッチーニ「トゥーランドット」の上演に対して、佐川吉男音楽賞の「奨励賞」が授けられることになった。

佐川吉男賞は、国内の中・小カンパニーによる公演を対象に、特に優れた成果をあげたものに授与されることになっている。事務局は三菱信託芸術文化財団に置かれ、評論家、音楽学者などの選考により選出された受賞者を、故・佐川吉男氏の夫人であった悦子女史が承認することになっている。賞金はさほど大きくはないが、市民オペラなど、日本のオペラ上演をしっかり支える底辺を見つめるには、有益な賞である。というのも、日本にはドイツのような地方劇場が存在しないため、こうしたレヴェルの上演がつづけられることで、歌手たちが経験を積んでいくことができるからである。

第5回となる本賞は、日生劇場のヤナーチェク「利口な女狐の物語」の公演に授与され、オペラ・ファンらによる公演後のやや手厳しい評価を考えると、意外なものに思われないこともないが、青少年・家族を迎えての公演意図が高く評価されたものと思われ、演目も意表をつくものであったせいだろう。一方、奨励賞の「トゥーランドット」は、オリンピックでの荒川静香の金メダルに関連する演目として、プラスアルファの注目を集めたが、なによりも上演の質が真摯で、優れたものであったことが、ダイレクトに評価されたのではないかと考える。

私は、Bキャストの若手組をみたが、姫の並河寿美以下の優れたキャストによる公演であったことが特筆できるし、Aキャストのベテラン組も質の高い、凛とした声の共演であったと評判である。ピットには神田慶一の指揮する「青いサカナ管弦楽団」が入り、その演奏もエキサイティングなものだった。青いサカナ団は、2003年の神田による新作歌劇『僕は夢を見た、こんな満開の桜の樹の下で』の公演に対しても、第1回の佐川吉男賞受賞の栄誉を授けられており、その活動の質の高さが重ねて証明された。8月の「アゲハの恋」も素晴らしい舞台だったが、11月には、神田とのコンビで管弦楽団が東京室内歌劇場「ザ・芸者」のピットに入ることも決まっており、ようやく「オペラ・カンパニー」らしい形になってきたというところである。

オペラ彩も和田タカ子理事長の下、コツコツと真摯な上演を続けている。次回予定は、来年の3月15日と16日、直井研二の演出、佐藤正浩の指揮でヴェルディ「ナブッコ」と発表されている。その後は、神田&青いサカナ団管弦楽団の再起用にも期待したい。
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