2007/6/12

仙台国際音楽コンクール ピアノ部門 セミ・ファイナリスト決まる  クラシック・トピックス

さて、リアルタイムでは第1次の演奏のすべてが終わっているので、既に、セミの進出者が発表になっている。12人が拾われたが、そのうちの半数が3日目のコンテスタントから選ばれている。すなわち、まだ演奏が公開されていないため、全体的な印象はまだ述べることができない。

ここまで聴いてきたところでは、わが国からのコンテスタントとはいえ、島貫愛、長瀬賢弘のセミ進出は予想外というほかない。2日目の峯は仕方がないとしても、1日目のモナッフは、どうして選ばれなかったのだろう。多分、あのルバートのせいではなかろうか。ヴァイオリン部門は、個性派がチャンスを与えてもらった感じがするが、ピアノ部門は、すこし様式感に厳しいのかもしれない。

初日は、ルー・イチェのみ。2日目は、島貫、長瀬に加え、シィ、オスミニン、リー。3日目から、オクサナ・シェフチェンコ、エスター・ビリンガー、ショレーナ・ツィンツァバーゼ、イリヤ・オフチニコフ、ヴャーチェスラフ・グリャーズノフ、津田裕也の6人が選出された。

国籍でいくと、ロシアが4(グルジアを入れると5)で最多である上に、アルメニアの1人を加えても7人という出場数からみると、生存率が高かった。地元の日本が3だが、私見では、レヴェル的に少し落ちる感じがする。台湾を含む中国系が3だが、中国本土からは、5人が出て1人だけの生き残り。やはり日本は台湾びいきだと、中国の政治家に怒られそうな結果となった。欧州はロシアを除くと6人の出場者を数えたが、辛うじてドイツ1が残ったのみだ。米国からの3人のコンテスタントは全滅した。
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2007/6/12

仙台国際音楽コンクール ピアノ部門 第1次予選 A  クラシック・トピックス

昨日(今日になってのアップになったが)につづき、1次予選、2日目の演奏を聴いていく。

まずは、台湾のシィ・ブライアン。この人には、なかなか好印象をもった。コンチェルトは柔らかい音色で、力まない。あまりクァルテット側に顔を向けすぎるのは、いかにもわざとらしいのだが、目をつぶっていても弾けそうなほどの、打鍵の清潔さは聴き取れる。また、そうでありながら、強引さがまったくないのもいい。左手も適度に効いており、ふうわりとした風合いながら、フォルムはしっかりしている。

エチュードは、前半の曲では少し見せびらかし気味のアクションで、前のめりになったが、2曲目は落ち着いた演奏で、コンチェルトでの柔らかさが戻ってきた。ちなみに、彼も SHIGERU KAWAI をチョイス。やっぱり、このピアノが好き。

2番目は、ハオ・トゥワントゥワン(中)。この人は、前のシィと対照的に、力みが目立つ。クァルテットがもたもたしていると、彼に直されるような印象をもった。良くいえば厳しい音楽性というところだが、ただ杓子定規な感じ。あまりに几帳面すぎて、モーツァルトを聴いているのに忙しなかった。ただし、エチュードはトレーニングのよく行き届いていることがわかる、端正な演奏といえる。それでも、音楽の硬さは変わらず、右手と左手の奏でる音楽が、互いに溶けていかない瞬間が多い。

3番目は神野千恵だが、前に中国系のテクニシャンの演奏を聴いたこともあり、まず基本の部分で見劣りがする。すこし神経質なピアノで、伴奏者の音を聴く力も弱く、独善的。つづいても日本の島貫愛だが、前の人よりは柔軟性があるし、技術的にもしっかりしてはいるものの、左手の支えが弱く、フォルムに堅固さがない。いずれも、最後まで聴く気にはなれなかった。

がんばれ日本人というところだが、次の峯麻衣子はすこしだけ特別な才能がありそうだ。先を急ぎすぎてしまうところがあるが、何とか乗ってあげたいというクァルテットの想いが伝わるし、それを誘うような独特のリズム感と、音色の美しさの持ち主なのだ。彼女のリズムで弾けているうちは、とても魅力的な響きが出てくる。

コンチェルトは、緩徐楽章は in trouble な感じだが、終楽章はかなり波に乗れた。エチュードは非常によい演奏で、とりわけ、難曲の op.25-6 がよく弾けているのはポイントが高いのではないか。個人的には、残ってほしい。まだ藝大の1年生だから、今後の活躍に期待というところかもしれない。なお、この人も SHIGERU KAWAI をチョイスしている。どういうことか、私の気に入ったコンテスタントは、みんな、このピアノを選んでいるのだ。

アレクサンドル・オスミニン(露)は、数えてる数えてる・・・という感じの弾き方で、小節線まで目にみえるような演奏は独特だ。まるで、自動演奏ピアノのようともいえようか。すこし肩が凝るが、このリズムの硬さに慣れてくると、音色も繊細だし、だんだん面白くなってくる。コンチェルトの終楽章は、かなり速い感じがするが、彼のことだから、これで楽譜通りなのかもしれないとさえ思えてならない。

エチュードは、「黒鍵」のほうも粒選りの颯爽とした演奏だが、「革命」のほうが、通常の右手と左の役割が入れ替わっていることがわかって面白い演奏だった。前日のサラピヤン同様、不思議な魅力のあるコンテスタントだ。

シュ・ジァ(中)は右手のハンマーが強いが、そのことを強みとしきれずに、抑揚のない演奏に聴こえてしまっている。

注目のリー・カリーン・コリーン(中)は、よく聴けるピアニストだという印象を受けた。音色もフレージングも繊細で、アンサンブルとの調和力が高い。そのなかで、ルバートはややスムーズさに欠ける。これに、もうすこしカラフルな音色の表現が出てくれば、鬼に金棒なのだが、その点はやや淡彩だ。しかし、左右のバランスよく、ソツのない演奏は下馬評どおりだろう。

エチュードは、op10-8 という選曲が、いかにも彼女らしい。お手本のような丁寧な演奏だ。ステージ慣れしていて、顔の表情などはゆたかだが、演奏的には、コンクールだというのにごく自然体で、上手に聴かせようとかいう欲がまったくないように見える。既に個性が確立しているのだろう。op.25-6 は、前の峯と比べると、技巧的な精確さは歴然としている(かといって、峯の魅力は忘れられないが)。

この日は中国のコンテスタントが多いが、このゴン・ジン(中)もそのうちの1人。こちらが疲れてきたのもあるのか、技巧的にも表現的にも印象が薄かった。途中で止めて、長瀬賢弘の演奏に移る。ゆったりして伸びやかな出だしだったが、途中でおもむろにテンポが変わったり、不自然なアゴーギクが出て、恣意的な演奏をしはじめた。終楽章も、落ち着きのない演奏だ。

クリストファー・ガズマン(米)は、見かけは既に教授のようだが、独特のフレージングの演奏である。ただし、打鍵は少しガタガタしていて、跳躍するパッセージにはスムーズさがなく、近接したパッセージでは自動的にルバートして、中間の音が詰まる。写真がチャーミングな、アンナ・シャキーナ(露)。ピアノの音色には深みがあると思ったが、それは弾き出しだけで、しばしば音を切断しすぎているし、典型的な右手ピアニストで、左手はかなり不自由だ。手もとのアクションにも無駄が多い。

トリの砂村友希は、地元出身だけに頑張ってほしいところだが、5本の指が均等に使えるのが強みでもあり、弱みでもある。一音一音へのアナリーゼが不足しており、どこの指をどのように使うかが、いまひとつ練られていないために、粗雑な演奏に聴こえてしまう。良い先生につけば、大きく伸びそうな素材であるのに残念だ。
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