2007/4/16

東響 名曲全集 ハーリ・ヤーノシュほか @ミューザ川崎 4/15  演奏会

一昨日あたりから、なぜか、すごく楽しみに思っていたコンサートでした。今回は、2人の変なおじさんが主役のコンサートですが、真ん中のハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲も、実はとても好きな作品です。

そのヴァイオリン協奏曲は、一昨年のミュンヘンARD国際コンクールを優勝の岡崎慶輔が独奏を務めます。さすがに(初演者の)オイストラフのようにとはいきませんが、この青年も巧いですね。特に、中声部よりも下の音域において音色が豊富であり、カデンツァや緩徐楽章の演奏に魅力を感じました。もうひとつ突き抜けてくるようなものがあるといいのですが、むしろ彼は、よく鍛えられた歌手のように、声を張り上げないでも客席に届くような響きを理想としているようなので、その範囲で興味ぶかい演奏ではありました。

特にこうした音楽では、大汗かいて熱演するような人のほうが、わが国の聴衆の好みにはあっているのですが、彼はそれとは正反対のタイプです。去年の東響に出てきたソリストでいうと、イリヤ・グリンゴルツを思い出します。実は、自分はこういう奏者のほうが好みなのです。モーツァルトやバッハなら、もっと素晴らしかったでしょう。ソロなら、フィリア・ホールで演奏するそうですが、R.シュトラウスなどは素晴らしいはずだと、ずっと思っていました。

さて、主役の2人のおじさんは、ティル・オイレンシュピーゲルとハーリ・ヤーノシュです。いずれも悪戯好きや法螺吹きのおじさんなのですが、どういうことか、それぞれの郷土では、愛すべき人物と思われているらしいのです。

コダーイの「ハーリ・ヤーノシュ」は、先日、新交響楽団でも優れた演奏を聴きましたが、当然ながら、プロのほうが一枚も二枚も上手だったですね。特に、バック・グラウンドを丁寧に落として、ツィンバロンの効果を浮き立たせた点と、表現の振幅のダイナミックさに、小さくはない差を見出すことができます。第4楽章のツィンバロンが特に印象的で、バック・グラウンドの中から一瞬、ぬっと浮き上がってくるサウンドのデザインが秀逸でした。

全体的に、ソリスティックな部分で若干の不満なしとはしないものの、トータルで考えていけば、よくまとまった演奏だったと思います。最初のくしゃみも上手でしたし、とりわけ、おしまいの「間奏曲」と「皇帝と廷臣たちの入場」は、全体が沸き立つような演奏で、隙がありません。

「歌」は東洋風の感じの響きがするツィンバロンのおかげもあって、なんだか日本的な響きにも聴こえます。冒頭の、西村さんのヴィオラ・ソロも、とてもお上手でした。秋山さんは、有名な音楽時計の箇所や、間奏曲のところにも、そういう身近な素材をうまく提示していて、その助けを借りて、まずは団員を、この曲に好意的に向かわせたという印象があります。独特の愛着に溢れた、活き活きとしたアンサンブルでした。

なお、この曲目のみハミルが降りて、竹村さんが1番を吹きましたが,カーテンで秋山さんに指されたとき、会場よりは舞台上から、盛大な称賛を受けました。この演奏会は、新コンマスとして迎えられた高木和弘の、着任後間もない演奏会でもあります。私の聴いたコンサートでは,昨夏の飯森範親指揮の、マーラー「復活」でコンマスだったそうですが、短いながらソロも聴かれるティルの演奏で、まずは美しい響きを聴かせてくれました。

まだ全体を掌握しているという感じではないものの、大谷さんやニキティンとはちがうタイプで、ダイナミックなフォーム、幅の大きいボウイングを要求します。あれでよく安定した音が出るなあという、独特のフォームですね。ハーリ・ヤーノシュの最後の曲でも、ときどき腰を浮かせたりして熱演でしたが、そうしたひた向きな姿勢は楽団のスタイルによく合っていますし、それだけでなく、冷静に全体をみられる視野の広さも備えています。その経歴から察せられるように、いろいろな音楽に対応できる柔らかさをもっていそうですし、実に良い人材を得たという印象がしました。

ティルの演奏は、きわめてシンプルながら、楽曲のもつよさが凝縮したコンパクトな秀演でしょう。奥深く、多彩な音色で聴衆を魅了したクラリネットのヌヴーをはじめ、管楽器を中心としたソロや、ヴィオラなどのパート・ソロの出来が、ハーリ・ヤーノシュのときよりもより繊細で、美しく聴こえました。ティルが捕まって、死んでしまう場面は、すごく名残惜しい感じがします。最後のエピローグもきれいにまとめて、秋山さんのタクトが冴えわたっていました。

というわけで、やや聴衆の入りは悪かったものの、好きな曲目ばかりで、なかなか見どころの多い演奏会でもあり、楽しめました。アンコールには、夏のフェスタで演奏される予定の、ベルリオーズ「ファウストの劫罰」の「ハンガリー行進曲」の部分が演奏され、ちょっと得したような気分で帰ってきました。

【プログラム】 2007年4月15日

1、R.シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
2、ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲
 (ヴァイオリン:岡崎 慶輔)
3、コダーイ 組曲「ハーリ・ヤーノシュ」

 コンサートマスター:高木 和弘
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