2007/4/5

ダラス響 世界のオーケストラ  クラシック・トピックス

世界のオーケストラでは、どんな活動がおこなわれているのかという素朴な興味から始まったシリーズ、第2回は、適当に選んでダラス響です。アンタル・ドラーティがプロ・オーケストラとしての組織を創り、ショルティが中興しましたが、ダラス響の名盤というのは、あまり耳にしませんね。アメリカの主要オーケストラとしては、影が薄い感じの存在です。

しかし、10数年も前、そんなダラス響の声価を高めることになる人物が、音楽監督の地位に就きます。それが、昨季で12シーズンの長期政権を終えて、名誉音楽監督として顕彰されたアンドリュー・リットンです。「ニューヨーク生まれのアンドリュー・リットンは、楽団の国際的な地位を高め、3度の欧州公演と、25のレコーディングを実現させた」と楽団が謳うように、目覚しい成果をあげたのです。これらの録音は、既に若い「名盤」として、語られつつあります。

さて、今シーズンからの新しい音楽監督は、オランダ人のヤープ・ヴァン・ズヴェーデンです。RCOで10代からコンマスを務めたあと、指揮者に転向した経歴を持つそうです。非常にがっしりした音楽づくりが評判となっていますが、私はまだ、聴いたことがありません。最近では、オランダ放送フィルとのブルックナーが話題になっています。なお首席客演指揮者には、先日の大フィルの代演で、密かな話題を振りまいているクラウス・ペーター・フロールが就いていますね。

さて、この楽団の発表スタイルに合わせて、まず、登場する指揮者を並べてみましょう。役付きのズヴェーデン、リットン、フロールはともかくとして、エリ・クラス、ヤン=パスカル・トゥルトゥーリエ、ギルバート・ヴァルガ、マルクス・シュテンツ、イルジー・ビエロフラーヴェク、ピンカス・スタインバーグ、アーリル・レンメライト、ハンス・グラーフ、ペーター・ウンジャン、ルドヴィク・モルロー、ダグラス・ヴォイド、ジョアン・ファレッタ、ジャンカルロ・ゲレーロ、ギュンター・ヘルヴィッヒ。以上です。

多士済々とは、正しく、このことでしょう。ズヴェーデンと同じく、かつてプレイヤーだった人もいれば、いまどき珍しい叩き上げの職人肌もいれば、将来を嘱望される期待の新星あり、酸いも甘いも知り尽くしたベテラン指揮者ありと、多彩な顔ぶれです。しかも、それぞれに一癖あり。私が特に注目したのは、ケルン歌劇場で一時代を築くシュテンツと、最後のローカル=巨匠指揮者としてBBC響のシェフにまで上り詰めたビエロフラーヴェクの登場です。

シュテンツは直球勝負のベートーベンのシンフォニーで、3番と4番を振ります。これは、「ベートーベン・フェスティバル・ウィーク」とされたシリーズの一環で、ビエロフラーヴェクも、このシリーズを締め括る「第九」のコンサートに登場します。これは聴いてみたい!

次に音楽監督の仕事に注目してみましょう。欧州では破竹の勢いとあって、ズヴェーデンの登場は、思ったほどは多くありません。9月〜4月までの半期の発表ですが、3週間程度です。まずは11月、今シーズンの楽団の目玉となるらしいベートーベン・フェスのプログラムから、6番と5番の、一番大事なところを振りにやってきます。翌週に7番と8番を振って、ビエロフラーヴェクにバトンを渡すのです。翌年の4月のプログラムは、このシーズンきっての大きな演目で、ヴェルディの「レクイエム」を取り上げることになっています。

つづいて、なおも楽団への影響力を保っているリットンの役割は? 9月6日からのシーズン開幕のプログラムを、リットンが振ることになっています。ジョン・アダムスのヴァイオリン協奏曲がメインに据えられており、独奏は、話題の才媛、リーラ・ジェセフォウィッツ。ほかに、アダムスの旧作 ”Short Ride in a Fast Machine”と、チャイコフスキーの交響曲第2番がセットになっているのは面白いですね。

リットンは1月にも、バーンスタインの「90回目の誕生日を記念して」というコンサートを振り、エレミヤ交響曲(第1番)や、ウェスト・サイド・ストーリーのナンバーなど。

我らが東京クヮルテットの創設メンバーにして、故障により指揮者に転じたウンジャンは、どうしているのでしょうか。彼の登場は、2008年の2月で、メインはコルンゴルトのクラリネット協奏曲となっています。独奏は、リチャード・ストルツマン。クヮルテットの柔らかい活動はいまも生きて、ほかにハイドンの22番や、ドビュッシーの交響詩「海」、ラヴェルの「ボレロ」が並ぶというお洒落なプログラムができあがっています。

昨年、都響に客演して知性派の印象を残していったファレッタは、コープランドの「ビリー・ザ・キッド」を中心に据えています。(with westwater projections)というのは、'westwater projections' というグループ名のアーティストでしょうか。これに、1956年初演のローサという作曲家のヴァイオリン協奏曲が合わされ、独奏はロバート・マクダフィー。そして、チャイコフスキーの4番。やっぱりジョアンらしい、独特のプログラミングです。

もうひとり、スタインバーグに着目すると、ショスタコーヴィチの10番を振ることになっていますね。それに、グリーグ「ホルベアの時代から」の組曲と、R.シュトラウスの「管楽のためのセレナード」と、山あり谷ありのプログラミング。

そのほかで注目すべきは、マゼールの編曲による、声楽抜きの「リング」でしょうか。これは、ゲレーロの指揮です。ロス・フィルのソリストにも名前のあったジョナサン・ビスは、ダグラス・ヴォイドの指揮で、モーツァルトの22番を弾くようです。

米国で活躍したコルンゴルトや、コリリャーノ(レッド・ヴァイオリンの組曲)の名前もみえますが、これなら日本のオケにもありそうな保守的なダラス。街のイメージが、そっくり当てはまる感じで面白いですが、スター揃いではないかもしれないけれど、しっかりした個性をもつ音楽家を選んで、なかなか楽しめそうな環境です。ソリストには、ほかにピーター・ウィスペルウェイや、アンドレアス・ヘフリガー、パーカッションのエヴェリン・グレニー(この人は凄いそうです)などの名前がみえています。

次回は、英国にわたってハレ管の予定(英語しか読めないですからね・・・)。
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