2007/2/18

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン  ニュース

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン、「熱狂の日」のプログラムが発表になり、来週の24日からチケットを売り出す。今回は「国民楽派」にスポットが当てられ、地方色ゆたかなものとなった。フォル・ジュルネの開催されている日本、フランス、スペインを含め、東欧、ロシア、南米の作曲家などが掘り起こされる。

プロデューサーのルネ・マルタンは、有名な「ラ・ロック・ダンテロン」のプロデュースもしているため、ピアノのプログラムはよく工夫されている。多くの企画の中で、私は、2つの企画に注目したい。ひとつは、わが国が誇るハイテク・ピアニストである岡田博美が取り組む、アルベニスの「イベリア」組曲の全曲演奏だ。同曲の演奏は過去のリサイタルの様子が語りぐさになっているが、今回は連続した2コマで、4つの曲集をすべて演奏するという大企画になった。岡田はただ指がまわるというだけではなく、作品の内側に秘められた声を、私たちにわかりやすくも、しっかりと伝えてくれる稀有のピアニストだ。

もうひとつは、ベテランの女流ピアニスト、ブリジット・エンゲラーによる企画である。第1回のとき、私は彼女のマスタークラスにも接したし、レジス・パスキエをはじめ、並みいるベテラン奏者たちを向こうにまわして、圧倒的な存在感を放った彼女のことなど、まったく昨日のことのように思い出せる。

その彼女が、チェロのアンリ・ドマルケットと組んで、ラヴェル、ドビュッシー、サン=サーンスなどのトランスクリプションを演奏するのだ。この試みは既にCD化されていて、好評を得ているそうだ。なお、このドマルケットは、まだ若手という部類に入るのであろうが、凄腕ということである。なお、エンゲラーは、ボリス・ベレゾフスキーとの2台ピアノで、ボロディンの「ダッタン人の踊り」も披露する。

ラ・ロック・ダンテロンということでいえば、ベレゾフスキーとドミトリー・リス指揮によるウラル・フィルは、ラフマニノフのピアコンを全曲演奏している。そのシリーズが話題となり、MIRAREレーベルから、2番&3番、そして、1番&4番のディスクが、立て続けにリリースされて好評を呼んでいる。今回、そのコンビがそのままフォル・ジュルネに呼ばれ、2番とパガニーニ狂詩曲を披露するというのだから、これは堪らない。また、ウラル・フィルは単独で、ラフマニノフのシンフォニーなども演奏する。

既に3回目となって、お馴染みのメンバーも現れてきた。過去2回で皆勤となり、しかも、多くの曲目を任されてきたトリオ・ヴァンダラーは、今回もフル回転で登場する。昨年、来日した室内楽グループの中で、もっとも印象的だったピリオド・スタイルのエベーヌ弦楽四重奏団も、めでたく再来日が決まった。フォル・ジュルネで急速に人気を増したアンヌ・ケフェレックと、フランク・ブラレイは、まず間違いなく上質のパフォーマンスで楽しませてくれるだろう。

チケット争奪戦が厳しくなるのは、イザイ弦楽四重奏団だろう。今回は、曲目がフォーレということもあり、やはり、玄人筋から垂涎の的となるはずだ。古典四重奏団も、やはりチケット取得が難しいグループだ。今回は、バルトークの5番を中心としたプログラムである。これに最近、素晴らしい新譜もリリースした話題の小菅優が加わるかもしれない。昨年も、小菅のリサイタルは、スイートな時間帯では取りにくかったが、そのときから比べても、注目度を増した。今回は、サティ、シベリウスに、グリーグというプログラムだ。ただし、私は同じ日本人なら、小川典子のほうに、より大きな注目を置きたい。得意とするドビュッシーとラヴェルの演奏である。

メイン・イベントは、ミシェル・コルボがオケは諦めても、ローザンヌ声楽アンサンブルだけは率いてきてくれる、フォーレの「レクイエム」だろうか。数年前の来日では、「マタイ受難曲」とともに大きな話題を呼んだ。1回だけあるCホールの公演で聴きたい。これに、ベートーベン大会で大花火をあげた、ロレンス・アキルベイ女史のアクサントゥス合唱団が繰り広げる、ドヴォルザークの「スターバト・マテル」が寄り添う。オケ伴ではなく、ピアノ伴奏による演奏らしい。担当するピアニストは、エンゲラーだ。

挙げていけばキリがないが、第1回のときに、これまたチャーミングな印象を残したシャニ・ディリュカを是非とも挙げてきたい。確か、インド出身ながらパリに育つという異色のバックボーンをもつが、実に繊細なクレメンティやツェルニーの演奏を聴かせてくれたために、私は彼女のことを忘れられない。第2回は来日しなかったが、今回は、グリーグの12の抒情小品と、ファリャの「はかなき人生」という、ツボにはまるプログラムで嬉しいかぎりだ。また、初日の最初のプログラムで、ペーテル・チャパ指揮のシンフォニア・ヴァルソヴィアとともに、グリーグの協奏曲を演奏するのも聴き逃せない。

もうひとつだけ、挙げておかなければならないのは、これも一昨年の来日で名前を挙げた合唱指揮者、ダニエル・ロイスが指揮をとり、ハイテク集団、ムジーク・ファブリークと、カペラ・アムステルダムの合唱、2台のピアノも用意して演奏される、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「結婚」を弾くプログラムであろう。なかなかうまくいく曲目ではないが、こういった独特の場での、ちょっとした奇跡を期待したいところだ。
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2007/2/18

日本モーツァルト協会例会 パシフィカ・クァルテット @東京文化会館(小) 2/17  演奏会

今週はのんびりしている予定でしたが、やはり、どうしてもパシフィカ・クァッルテットの演奏を聴きたくなった、東京文化会館の小ホールに足を運びました。前回の来日では、決まっていた日程をメンバーの都合でキャンセルしてしまい、それでも、やっぱり決まっていたエリオット・カーターの弦楽四重奏曲の全曲演奏を日本でやりたいということで、自腹で来日。無料招待のコンサートを開き、そのバケモノ企画を見事にこなして、日本のファンのハートを鷲づかみにしたそうであります。

今回は、スタンダード・プログラムで日本シリーズが組まれていますが、この日は、日本モーツァルト協会の例会に招かれての演奏になりました。ゆえに、オール・モーツァルトです。演奏よりも、社交が目的のスノッブたちが集まりそうなコンサートは、本来は好みとするところでないのですが、演奏自体は素晴らしいものだったと思います。

特に、「ハイドン・セット」の第6曲とされる弦楽四重奏曲第19番「不協和音」の演奏が素晴らしかったですね。第1楽章では、ぎゅっと捻っておいて、渦巻状に解放される響きのエクスタシーに酔いしれました。第2楽章は、ダウン・グリッサンド気味の下行部分で、その修飾を効かせながら、同時に減衰していくときの柔らかさがすごい。メヌエットの完璧な優美さを通って、終楽章は、確かにハイドンを越えたと思わせる激しい暗転と、そこからの脱出が、彼らの手さばきのしなやかさにより、笑い出したくなるような鮮やかさでした。

最初の弦楽四重奏曲第4番は、前プロとしては強烈すぎる一発目でした。まず、第一音から、深いコクのある音が響いて、びっくり仰天でした。あの音を聴いただけで、これは本物だと、誰もが気づいたと思います。はじめは抑制的で、アンサンブル重視。アクションもはっきりしているが、明晰で紛れなく、わかりやすい解釈には、どんどん惹きつけられます。彼らは響きの作り方がきれいで、音楽の変わり目をきれいに見せてくれるので、モーツァルトの面白さがわかりやすかったと思います。

アンダンテは、モーツァルトにしては珍しい完全な緩除楽章ですが、よく我慢して、聴き手を唸らせてくれます。プレストに入り、第1ヴァイオリンのプレゼンスが発揮されて、まるでコンチェルトのよう。黒髪の美人で、特に腰の据わった低音が魅力的でしたが、やや粗めになることがあるのは若さゆえでしょうか。

彼らの場合、ベースとなるアンサンブルに染み出すコクの深さゆえに、些細なミスが、むしろ目立ってしまうのです。その点で、「ハイドン・セット」の第1番とされる弦楽四重奏曲第14番は、非常に質の高い演奏であるのに、その第1ヴァイオリンのわずかな音の乱れや、アンサンブルのほんの僅かな狂いが、必要以上に印象を悪くしたかもしれません。あまり集中していたとも思われない観客の拍手が、最後の数音のユーモアを切り離してしまったのも残念でした。

ただし、冒頭はやはり鮮烈です。トゥッティで入りますが、彼らの音楽は最初の拍を打つ前に始まっており、身の入りきったテンションで第一音を刻みました。このあたりの印象が、全体のやや粗めな雰囲気よりも、ちゃんと頭に残っているのです。

彼らは、ホンモノの室内楽がどういうものかを知っています。こういうグループを、是非、ひとりでも多くの方に知ってほしい。今後、私が知っている限りの、公演予定を書きますので、参考になさってください。

2月20日 鵠沼サロン・コンサート@ラーラ・ビアンケ

2月21日 クァルテット・ウェンズデイ@第一生命ホール

2月24日 スタジオ・ルンデ例会@スタジオ・ルンデ(愛知)

2月25日 横浜山の手芸術祭@外交官の家
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