2006/10/20

岩城宏之追悼 『ベートーヴェンは凄い!』 全交響曲連続演奏会 続報(補足)  期待のコンサート

より詳細な広告を見つけた。これによると、三枝プロでの発表に加え、出演順で指揮者が並んでいる。前3回の内容から、1番から演奏していくことが確実なので、これで、一応の全体像が掴めたということになる。肩書きを入れて、並べてみよう。

 1番 下野竜也(読売日響、正指揮者)
 2番 岩村力(N響、アシスタント・コンダクター)
 3番 大友直人(東響、正指揮者/など)
 4番 高関健(群響、音楽監督/札響、正指揮者)
 5番 井上道義(元新日本フィル音楽監督/など)
 6番 秋山和慶(九響、首席指揮者/など)
 7番 小林研一郎(日フィル、音楽監督)
 8番 ヴァレーズ(元OEK、ゲスト・プリンシパル・コンダクター)
 9番 外山雄三(N響、正指揮者)

こんな演奏会、ほとんどあり得ない!

予想はあまり当たらず、岩村の2番、コバケンの7番、ヴァレーズの8番だけが的中した。そういえば、下野は、いろいろな作曲家による、交響曲の「第1番」を振るのが好きだといっていた記憶がある。都響ではサン=サーンスの1番を振ったし、読響でもコリリャーノの1番を振る。普通はプログラムに上ることの少ないベー1を演奏する機会は、貴重だと考えたかもしれない。

大友、高関、井上による3〜5番は、ひとつの頂点を築くであろう。凝り性である秋山の「田園」というのも、なかなか楽しみではあるかもしれない。コバケン、ヴァレーズを経て、大トリの外山雄三は、まあ、来るべき人が来たというところか。外山らしい、厳しい音楽をつくるのであろう。主要オーケストラの演奏会では、しばらく「第九」から遠ざかっていたのではないかと思う。

あとわからないのは、オーケストラのメンバーと時間割りだけだが、これは当日のプログラムで知ることになろう。
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2006/10/19

岩城宏之追悼 『ベートーヴェンは凄い!』 全交響曲連続演奏会 続報  期待のコンサート

岩城宏之が晩年、力を入れていた「ベートーベンは凄い」全交響曲連続演奏会については、既に触れたが、その詳報が三枝事務所などから発表になった。

まず、管弦楽は、N響の篠崎史紀をコンマスとするイワキオーケストラ(イワキキネンオーケストラになってしまった)で、過去2年と同じである。そして、指揮者を9人揃えたのだが、このメンバーが壮観だ。誰がどの曲を担当するのかはわからないが、50音順に、秋山和慶、井上道義、岩村力、ジャン=ピエール・ヴァレーズ、大友直人、小林研一郎、下野竜也、高関健、外山雄三と並べられている。

この指揮者陣について、ちょっとだけ考えてみよう。まず、N響の指揮者仲間から、外山が参加したのはわかりやすい。外山は自身、作曲家でもあって、単なるN響の同輩というに止まらず、アンサンブル金沢で自作品が演奏され、録音もされるなど、因縁浅からぬものがある。それに、外山はこういう機会を大事にする人だ。

岩村もN響のアシスタントではあるが、多分、岩城本人との接点は少ない。しかし、篠崎らN響メンバーからの信頼感は厚いといわれ、彼らの推薦による参加なのかもしれない。N響デビューではダッラピッコラの曲を日本初演するなど、岩城同様、新しいものに柔軟な姿勢は見られる。その実力のほどは、首都オペラ「仮面舞踏会」のレビューでも示したところだ。

大友は、三枝との公私にわたるパイプがあるようで、会場である東京文化会館の音楽監督、そして、この演奏会の第1回の企画に参加した3人の指揮者のうちのひとりでもある。岩城のことは深く尊敬しており、7月の東響の演奏会で、たまたま曲目に含まれていた「春の祭典」の演奏では、岩城のスタイルを髣髴とさせる構えの大きな、山が動くような悠然とした曲づくりによって(要するに遅かったわけだが)、無言のオマージュを贈ったことは、あまり気づかれていない。

井上道義は、岩城のライバルとでもいうべき存在ではなかったろうか。岩城と同じく、チャレンジングな志向性をもつ井上は、現代音楽、特に日本の作曲家の作品を重視しており、とりわけ、岩城とともに武満の大事な理解者でもあったとされる。岩城の急逝に際しては、レパートリーが近いこともあり、代役を務めた演奏会もあったようだ。やや型破りではあるものの、いずれも斉藤秀雄の門下生である。

同じ斉藤秀雄門下ということで括るのもしっくり来ないが、秋山和慶と小林研一郎も、同門ということになる。コバケンは、岩城が基礎をつくった名フィルで4代目の音楽総監督になっており、いまでも、その関係は継続している。ロクダンこと、六本木男声合唱団倶楽部による、長崎の被爆60年メモリアル・コンサートでは、岩城とともに演奏会の指揮をシェアしたこともあったという。最後までプライドの高かった岩城に対して、普段着の指揮者像をつくろうとする小林。月と太陽のような二人だが、いずれも互いを必要としていたのかもしれない。

秋山は好奇心のつよい指揮者で、近現代音楽への造詣が深く、小林と同じく合唱にも関心が強いことから、岩城とは接点が多かったように思われる。札響では、岩城が桂冠で、秋山がミュージック・アドヴァイザーという風に、ともに同じオケに参画していた時期があった。酒造りにたとえるなら、秋山が仕込む役だとすれば、岩城は熟成させる役という感じであり、二人の間に微妙なずれを感じるのは、私だけだろうか。

札響といえば、高関健は現在、その正指揮者の任にある。現代音楽では、もっとも信頼される指揮者のひとりであり、群響や広響、大阪センチュリー響などで頑張り、地方のオーケストラの活性化に努めるなど、岩城の志をもっとも熱心に継ぐ人物であるともみられる。本年のオペラシティの企画「武満徹の宇宙」では、病気の岩城に代わって、若杉弘とともに指揮台に立った。岩城のDNAを受け継ぐ、次の世代の代表といったところであろう。岩城の師でもある渡邊暁雄の名前を顕彰し、岩城が運営委員となっていた基金の音楽賞を受けたこともある。私は彼がアマチュアの新交響楽団で振った、ブライトコップ新版による「運命」の素晴らしい演奏を聴いた。もういちど体験したい。

下野も、「渡邊暁雄音楽基金」の音楽賞を受けている一人である。ただし、それ以外では、あまり岩城との接点は見つからない。ポストこそ与えられなかったが、岩城の関与したオーケストラでは、京都市響で、何度か大役を任されてはいる。また、他のエントリーでも示したように、下野もやはり、現代音楽につよい関心、というよりは、使命感のようなものをもった指揮者である。ミューザのジルヴェスターが決まっていて出演できない、第1回「ベートーヴェンは凄い」コンサートを振った金聖響の推薦であるかもしれないし、師匠筋に当たる秋山の推薦、オーケストラのメンバーたちによる推薦と、彼の場合は、いろいろな可能性が考えられる。末席の人間がトリになってしまうけれど、私はどうせなら、彼の「第九」がもういちど聴きたいと思う。

ジャン=ピエール・ヴァレーズは、アンサンブル金沢での追悼演奏会でも登場しているように、岩城のオケとは縁があった。同楽団では首席客演指揮者を務めたこともあり、録音も残している。奏者としてはパリ管のコンマスまで務め、パリ室内管を組織して勇名を馳せたヴァレーズは、OEKの基礎をつくった一人であるともいえる。

どうも、ちょっとどころではなくなった。「第九」のコーラスは晋友会(ここも昨年、先生である関谷を喪った)だが、昨年のコーラスは素晴らしかった。ソリストは、釜洞祐子、坂本朱、佐野成宏、福島明也。良い歌手たちが並んだ。

今更ながら、岩城の大きさに気づく。どうやら思った以上に、中身の詰まった演奏会になりそうだ。誰がどれを担当するか、希望も込めて、粋狂に予想してみようか。

 1番 大友直人(あいさつ代わりに、薄味の前菜を)
 2番 岩村力(チャレンジ! 若さでガリガリ行こう) 
 3番 外山雄三(英雄・岩城を讃えて、しめやかに)
 4番 秋山和慶(斉藤門下は4番大好き、意外と熱演)
 5番 高関健(ブライトコップ新版で大名演に!)
 6番 井上道義(難しいのはミチヨシに任せろ!)
 7番 小林研一郎(炎の7番、コバケン大爆発!)
 8番 ヴァレーズ(岩城に捧げる、優美なレクイエム)
 9番 下野竜也(さらば岩城、怒涛の新世代「第九」)
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