2006/4/5

マッケラス 『ティート帝の慈悲』  CDs

チャールズ・マッケラスが、モーツァルトの歌劇「ティート帝の慈悲」を録音した。エディンバラ音楽祭で好評を得たメンバーを集めての、スタジオ録音ということである。レーベルは、ドイツ・グラモフォン(D・G)。

非常に優れた録音と思う。コジェナーのセストが注目だが、必ずしも、それだけではない。アンサンブルの質が高く、音楽の華麗な修飾に負けない、芯のつよい歌声がつづく。マッケラスの指揮による、スコットランド室内管/合唱団の演奏はきわめてゴージャスで、品位が高い。序曲の格調だかい演奏で、いきなり盛り上げてくれるが、それに恥じない歌手陣の堂々たるパフォーマンスが、作品を新鮮な輝きで満たした。

ヴィッテーリアが罪を告白する場の合唱「あなたが天の神々の」が、ハイライトで、このシーンの臨場感は、画面なしのCD録音で十分に想像可能だ。いったん収めてトローストが入り、重要な慈悲を与えると、「あなたは本当に私を許してくれました」の壮麗な合唱が、再び盛り上がるときの、すっきりした流れ。このあたり、文字どおり見事である。

これは英国ではもはや常識的なことだと思うが、全体的に、最近のピリオド派の成果が生きた新鮮な音楽づくりだ。マッケラスはベテランだが、かえって、そのキャリアが響きの少なさや、音楽の流れのアグレッシブな動きを、自然な手触りに仕上げさせている。

この作品は、明らかに、モーツァルトの歌劇の重要な一面をみせるものだ。対極に、「魔笛」や「コジ」があるのだが、その間に「フィガロ」を置いてみよう。そうすると、モーツァルトがいかに旧い時代のオペラから大きな影響を受け、そこから勇敢に進み出たかがわかるだろう。「ティート帝」の音楽から、モンテヴェルディやヘンデルのイメージを思い浮かべるのは、誰にとっても容易いだろう。

マッケラスの演奏では、そうした意味において、この作品がいかに重要な位置を占めるかの重要な示唆をみせてくれる。こういう作品がなければ、「コジ」に結実するモーツァルトの独創性はみえない。この指揮者で、いろいろなモーツァルト作品を聴きなおしてみたいものだ。
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