2009/1/21

最近の日本のコンクール事情  クラシック・トピックス

世界的に見て、日本のクラシック・ファンのコンクール好きは、面白い傾向ではなかろうか。欧米ではかつて権威のあった大会も、その価値が暴落しつつあり、いまも過去の栄光を保ち得ているコンクールは少ないし、また、コンクール自体がなくなってしまう例もみられる。例えば、今年、日本で2回目の大会が行われるカサド国際チェロ・コンクールは、フィレンツェで開かれていたのが維持できなくなったのを、原智恵子の遺志を受け継いだ八王子の市民グループが努力して、日本に復活させたものだった、

世界的にみて、コンクールが増えているのか減っているのかはデータがない。だが、コンクールそのものが音楽家の良し悪しの価値判断として、役に立ちにくいことは、既に幅広いコンセンサスとなっている。現在、コンクール出身者の進出もまだまだ多いが、それよりも、音楽祭や国際的に有名なホールでの演奏歴、さらに、より直接的な名音楽家のサポートが、コンクールによる地名度アップの効果を、完全に上回るようになった。例えば、ピアニストのレイフ・オヴェ・アンスネスは、名のあるコンクールで活躍する前に、フェスティバルなどを通して出現した才能として、一時代を画する存在となっている。いまや世界の人気者となったラン・ランも、そうである。日本人では、小菅優がそうした存在といえるだろう。

だが、その一方で、コンクールは新しい機能を果たすようになってきた。いま、世界のコンクールが競っているのは、コンクールの入賞による知名度の上昇よりは、コンクールを受けるコンテスタントたちのその後のキャリアに、コンクールがどのような貢献をできるかという点に移っている。したがって、各コンクールはコンクール後のアフター・サーヴィスを充実させることと、教育機能を強化することに重点を置いている。また、その質を保証するものとして、審査員の重要性がさらに高まっているといえようか。

つまり、コンクールで入賞した場合、お披露目的な公演が行われるのは当然として、そのほかに地元やそのほかの土地でオーケストラと共演できるとか、単独リサイタルが用意されるとか、そういうことが重視されているようだ。教育面では、浜松国際コンクールのように、コンクール付属のアカデミーを併設したり、期間中にもマスタークラスが行われるなどの取り組みがある。

こうした進化したコンクールの形態をとる大会が、近年、日本に増えている。そのなかでも、仙台国際音楽コンクールと浜松国際ピアノ・コンクールとは、特に高い評価を得ているのではなかろうか。ほかに、高松国際ピアノ・コンクール、大阪国際室内楽コンクール、武蔵野市国際オルガン・コンクールも、評判がよい。

また、日本のコンクールは、質のいいインターネット配信などを使い、地元だけではなく、多くのクラシック・ファンに話題を提供しているのも特長だ。仙台のコンクールはさらに、ホームページを利用した情報のフォローにも余念がない。是非、一度みていただくと面白いが、過去の入賞者などを中心に、誰がどこのコンクールで活躍したとか、誰々がHPを開設したとか、果ては何大の教授になったとか、来日に当たってのメッセージが届いたとか、いろいろな情報を集めているのである。実に、フォローが細かい。
そんな仙台のコンクールの出世頭といえば、若くしてフランス国立放送フィル(張明勲のフランスの拠点)のソロ・コンマスとなり、パリ・コンセルヴァトワールの教授にも就任した、ブルガリアのヴァイオリニスト、スヴェトリン・ルセヴだろう。

さて本年、2009年は、上に挙げておいたうちの2つのコンクールが開催される。いずれも11月に、ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール in 八王子と、浜松国際ピアノ・コンクールがおこなわれる予定である。

浜松は国際音楽コンクール世界連盟への登録が認められてから行われた、第4回以降の進境が著しく、直近のショパン・コンクール優勝者、ラファウ・ブレハッチを輩出したほか、同年には、アレクサンドル・コブリンもコンクールに出場して最高位を分けた。その前の大会では、アレクサンダー・ガヴリリュク、そして上原彩子、フョードル・アミーロフなどが出現し、その後のコンクールの声望を高める結果となっている。審査委員長の中村紘子以下、アリエ・ヴァルディ、ファニー・ウォーターマン、シュー・ツォン、ジョン・オコーナー、セルゲイ・ドレンスキー、ピオトル・パレチニ・・・といった審査スタッフは、世界の名教師を多く含み、その権威を裏付けしている。

なお、毎年、続けられているアカデミーも3月からおこなわれるが、最後のアカデミー・コンクールは、本大会への格好のステップとなっていることでも知られている。

次回につづく・・・
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