2007/9/30

スクロヴァチェフスキ 読売日響(芸劇マチネ) ブラ1 9/29  演奏会

9月半ばからつづいた読売日響のスクロヴァチェフスキ・シリーズも、この日が最後となる。常任となって最初の4月のシリーズは、レヴェルの高い公演がつづいたが、今回のシリーズは跳びあがる前の一屈みという感じもなくはない。この日の演奏は、先週と比べると響きもずっと力強く、このホール向けのアジャストが効いていた点は、素直に評価したい。

まずは、バッハの「トッカータとフーガ」の、スクロヴァチェフスキ編の管弦楽版による演奏だが、これは非常によいパフォーマンスだった。弦管のバランスが素晴らしく、編曲者自身が振っているので当然だが、どのような意図によって編曲がおこなわれたのか、はっきり明確になっている。スクロヴァチェフスキの編曲は、弦管の音色をうまく使い、オルガンの音色やストップの機能を、きれいに模倣している。それだけならば、オルガンで弾けばいいことだが、オケの楽器による模倣と、オルガンそのもののテイストは微妙にずれており、そこを意識的に使うことで、スクロヴァチェフスキは単純な名曲の編みなおしではない、知的な効果を生んでいるのである。最後のトッカータの再現が特徴的で、直前のほんの僅かな切れ目で、突如として模倣的な世界から響きが新鮮になり、バッハの時代から近代の音楽まで、タイムマシーンに乗ったような効果を生んでいるのが面白い。

つづくショパンのピアノ協奏曲第2番は、母国の魂ともいえる作曲家だけにスクロヴァチェフスキは得意としており、この日の共演者であるクピークのほか、ルビンシュタインやワイゼンベルクとの録音もある。この日の演奏は、その拘りを随所に聴かせるスタイリッシュな演奏だった。独奏のエヴァ・クピークは、やや省略気味の打鍵には弱点もあるが、あまり鍵盤を叩かないわりには存在感のあるピアノで、不思議な清潔感がある。とても上手なピアニストという印象はないものの、オケの音をよく聴くし、誠実な演奏と言えた。第1楽章が白眉で、2つの主題が丁寧に対比され、構造的に非常にわかりやすい演奏であり、それがクピークのスタイルにもよく合っている。ショパンの知・情・意ということでいえば、合理的な「知」の部分を象徴した演奏といえるのかもしれない。通奏低音のように使われる、低音弦の動きは興味ぶかいところが多かった。

スクロヴァチェフスキは演奏終了後、裏へ引っ込むときに、ときどき小さなガッツ・ポーズを繰り出すが、今回もその動作を確認した。彼なりに納得のいく演奏だったのであろう。今日の白眉は、確かにここであった。

メインのブラームスの交響曲第1番は、全体として帳尻はあわせたものの、よい演奏にしたいという想いが空回りして、すこし大事に行きすぎてしまった感があり、そのために瑕の多い演奏であった。そのことは、第2楽章のおわりのほうに多用される、小森谷コンマスのソロに現れていた。丁寧に弾こうとするのはいいのだが、やや硬くなってしまって、音色に柔らかさがない。それを気遣うあまり、全体的に硬さが目立ってしまった。第2楽章は、ゆったりした構えのいい演奏だったのに、最後で印象が悪くなってしまった。

両端楽章がよかった。第1楽章は、大体においてオーソドックスな解釈であるが、はじめのほうは抑制が効いており、ちょうど「ドイツ・レクイエム」の入りを連想させるような感じであるところが独特だった。ここから尻上がりに盛り上がっていく展開が、明確に示される。シューマンでは響きの厚みにこだわったスクロヴァチェフスキだが、今回は路線を変えて、キレのいい響きを前へ前へと引っ張るようなコントロールが目立った。第4楽章は、悠然としたベースを作りながら、要所でぐっとギアを入れるようなドライビングである。ねじを巻くようなヴィオラの響きに導かれる、弦楽合奏による主題演奏のコクが印象的だ。おわりの部分は、この楽団が現在、最大の武器とする精密なアンサンブルが効き、圧倒的な緊張感を生み出す。ただし、やはりこの楽章でも随所に、丁寧すぎて縮こまってしまった響きが聴かれ、全体としてはもう一歩の印象に止まった。

今シーズンの常任指揮者、スクロヴァチェフスキの登場も、これが最後となった。また来シーズンのお楽しみというところ。これまで日本では、スクロヴァといえばブルックナー、ベートーベンというイメージをもたれていたのを、今期は洗い清めるかのように、たくさんの作曲家を取り上げた。自身を含めると、実に14人という数であり、年にたった2回の来演としては多い。若い指揮者のような仕事ぶりは見せられないが、そこにスクロヴァチェフスキの本気を感じるのである。そのすべてが大成功とはいかなかったが、来シーズンはどのようなところに焦点をあわせてくるのか、いまから楽しみになってきた。私としては、録音もあるプロコフィエフなどにも期待したい。

【プログラム】 2007年9月29日

1、バッハ/スクロヴァチェフスキ トッカータとフーガ
2、ショパン ピアノ協奏曲第2番
 (pf:エヴァ・クピーク)
3、ブラームス 交響曲第1番

 コンサートマスター:小森谷 巧

 於:東京芸術劇場
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