はなさんの日記
「生きものの豊かな田んぼ」
Bの1 2008年09月25日07:04 NHK教育テレビ
知るを楽しむ 人生の歩き方
−岩澤信夫 生きものの豊かな田んぼ−<全4回>
第三回 生きものが集まり人が集まる (1)
黒田アナウンサー :K
岩澤信夫さん :I
古い伝統芸能が今も残る 新潟県佐渡。
今 佐渡では 中国から贈られたトキが人工飼育され 野生に帰す試みが行われています。
トキが自然の中で生きるためには エサとなる生き物が豊かな環境が必要です。
そこで注目されたのが 岩澤さんの研究してきた 不耕起移植栽培という米作りでした。
この米作りでは 近年その数が大きく減ってしまったメダカやカエルなど 田んぼの生きものたちが よみがえります。
全国に耕さない田んぼでの米作りが広がるにつれ、生きものの豊かな田んぼが 各地に現れるようになりました。
四半世紀近く 農業指導に携わってきた岩澤信夫さん。
耕さない田んぼでの米作りを研究する中で 普通の米作りとの違いに気がつきました。
I 「昔の田んぼは生きものだらけだった。
今の田んぼっていうのはですね、今 ほんといないっていうのが
現状なんです。」
K 「そうですか。40年くらい前まではいたもんですけど 今はいないって
いうことですか。
なんで いなくなっちゃったんですか?」
I 「それはね、大型の機械を入れるためにですね、田んぼには 地面の中に
暗渠排水の集水管をいれてある。」
K 「地下に?」
I 「地下に。」
K 「え〜!」
I 「で その水閘(すいこう)を抜くとですね、水がしぼれて 田んぼが
畑のような状態になる。
畑には メダカもドジョウも住めない。」
K 「そうすると 田んぼとして使っていて 稲刈りが終わると水を落として
その後 畑になるんですか?」
I 「畑のような状態になっちゃうんです。」
K 「は〜 たしかに。」
I 「結局稲を作っているのは4ヶ月、でその畑のような状態が 8ヶ月と
倍の長さ水がないんです。
これが 今の生きものが少なくなった原因なんです。」
K 「私は 生きものがいないよって言われると それはじゃあ農薬のせいかな
なって思ったりして。
そういう影響はありますか?」
I 「それは あります。」
K 「それもやはりありますか。」
I 「農薬っていうのは はっきり言って 皆殺しですからね。
だから害虫も殺すけれども 害虫でないただの虫も殺しちゃう。」
耕さない田んぼでの米作りを行うことで 生きものが増える。
岩澤さん自身が そのことに気づいたのは あるきっかけからでした。
14年前宮城県で 岩澤さんは 町おこしのために野生の白鳥を農村に呼ぼう と思いつきます。
そこで、秋が来れば水を抜いて乾かしてしまう田んぼに 冬の間も水をはることにしました。
すると ねらいどおりに水鳥が集まり 人も集まるようになりました。
その時 岩澤さんは もう一つ意外な発見をします。
冬場 田んぼに水をはることが 岩澤さんの農法に大きなメリットをもたらすと 気づいたのです。
I 「でね、実はその時にね、大発見やったんです、私たちにとっては。
なんだっつったらですね、白鳥と真雁が来た田んぼには 草が出ない
というのを 見つけたわけなんです。
どういうわけか 草が出ない。
はじめの時は 白鳥や真雁が食べちゃったんだ と こう思ったんですが、
どうも辻褄(つじつま)があわない。
というのはですね、3月の中旬になると シベリアへ彼らは帰っちゃう
んですよ。
ところが田植えが5月の半ばすぎ、二ヶ月間 鳥が一匹もいない
わけなんです。 きれいな・・・。」
K 「草が生えないっていうことですか?
雑草が悩みでしたものね、不耕起の田んぼは。」
I 「どの田んぼでもね、雑草退治で頭悩ましている。
それが 雑草が全然出ない。
そこへ 不耕起で田植えをしてみたら、本田の雑草もあまり出ない、
これがわかった。」
普通は 稲刈りの後乾かしてしまう田んぼに 冬の間も水をはる。
岩澤さんは 常識をくつがえす 冬期湛水(とうきたんすい)という手法にたどりつきます。
そして この冬期湛水によって 田んぼの土が 豊かな土壌へと変わることにも わかったのです。
水をはった田んぼには たくさんのイトミミズが発生します。
それらのフンが 雑草の種を埋もれさせ 発芽を防ぎます。
しかも 栄養分となり 豊かな土壌を作りあげていました。
I 「イトミミズっていうのは どぶ川の生きものなんだと
思っていたんです。」
K 「農家の方にとって イトミミズっていうのは 田んぼの生きものじゃ
ないんですか?」
I 「田んぼにね、イトミミズがあんなにいるって知ってる 農家の人は
ほとんどいません。
私自身わからなかったんですから。
結局彼らはね 5〜10センチ下の 微生物とか有機物を食べて
朝から晩まで 排泄物を出しているわけなんです。
それが たまりにたまってね 5センチくらい トロトロっていう
層になって出てくる。
これが いわゆるトロトロ層になる。
だから 10センチくらいまでは イトミミズがいれば
コンベアベルトみたいに 土を反転してっちゃうんですよ。」
K 「いつも耕してくれてる。」
I 「そうなんです。
だから人間は あらためてトラクターを入れて耕さなくてもね
自然のものが 耕してくれる。」
K 「へ〜」
つづく
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/200809/wednesday.html