秋刀魚の歌といえば佐藤春夫ですね。僕は年に1回は和歌山県新宮市を訪ねている。熊野速玉神社の境内に佐藤春夫の「望郷五月歌」の詩碑があり、すぐそばには新宮市立佐藤春夫記念館がある。佐藤春夫は明治25(1892)年にこの近くで生まれている。
また「山紫に水明(きよ)く、人朗らかに情けあり」という新宮市歌まで作っていて望郷の詩人と言われている。
同じ和歌山の紀伊勝浦駅にも佐藤春夫の詩碑がある。紀勢本線全線開通の1959年(昭和34)に建立された「秋刀魚の歌」である。
声に出して読みたい詩であり、全編暗誦したい詩である。とりわけ「そが上に青き蜜柑の酸(す)をしたたらせて さんまを食ふはその男がふる里のならひなり」のフレーズと「そが上に熱き涙をしたたらせて さんまを食ふはいづこの里のならひぞや」との対比が良い。好きな詩である。
しかし「あはれ、人に捨てられんとする人妻と妻にそむかれたる男と…」というフレーズもあり、駅前の詩碑としてはいかがなものか。
只の観光客としての僕なら、佐藤春夫からは次のこの句を選ぶだろう。「恋語る魚もあるべし春の海」
駅から5分の近くに水揚げ日本一という勝浦漁港があるし、ここの駅弁はさんま鮨である。僕が惚れた「人朗らかに情けあり」の風土にあっているし、観光地の句碑に適していると思う。
で、4年前に新宮を真摯な文学の徒である最愛の彼女(元)山下麻子と訪ねた時に佐藤春夫の詩を参考にして詠んだ句が「熊野路に あはれ秋風 秋刀魚鮨」だった。
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