果実酒の棚を整理していると、奥の方から出てきた茶色のビンを見た時、一瞬ナマコかとどきっとした。
楕円形の物がユラリと揺れたような気がした。アケビだ!
グラスに入れると紫がかった褐色で、飲むとほのかんな甘みとサラッとした中性的な爽やかな苦味と調和して(秋の林の記憶)とタイトルを付けてみた。
一昨年の事だった。牧場の横の道で友達が秋の花展の材料にいつか目を付けていたアケビが時満ちて、実が縦に割れはじめた。
其処を通る度に慈しむように見つめていた彼女はアケビの声を聞いたのか、ハサミを取り出し茎を切り、木に絡みついた枝葉を丁寧にはずしていった。
そして其の中の幾つかの実を私に呉れた。
果皮の中から果肉だけを取り出しホワイトリカーに浸けたのは三ヶ月で中身を取り出し飲んでしまった。トロリとした舌触りが何ともいえない。
その果皮と果皮をつけたままの実と一緒に浸けたのがこの一瓶だ。
苦味がきつくビターとして他の果実酒、洋酒、炭酸水とシェークして飲もうと残しておいたのを思い出した。
時が熟成するのか、私の味覚が変わったのか苦味も又懐かしく、ほろ苦い人生の哀歓と言ってみたいがやや違う。
目を閉じると靄のかかった山の姿が浮かんできた。
人間がまだ自然を崇め愛し神々をおそれ、木も鳥も人もまわり総てに魂が満ち満ち、人々は自分の分をこころえ、宗教的な雰囲気が取り巻いていた頃の集落。
アケビ酒にほろりと酔って見たまぼろし。
年ごとに環境が悪化する、今年もアケビは秋の歌を歌うのだろうか。
果実の甘味は蔗糖と果糖、苦味はアケビン(糖の化合物)果皮はスタウントニン(糖の化合物)を含み利尿、頭痛薬になるそうだ。

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