「今日お電話下さったって何かご用」
「いえ、そうでないけど、一寸お声が聞きたかったの。 お正月休みはポーランドへ行っていて出会えなかったし」
「お元気そうね、仕事も順調なのね」 彼女が裁判所の調停委員になるとき「どうかしら」と尋ねられた。「貴方は冷静でゆっくりと客観的に考えるタイプだから感情移入して落ち込む事もないだろうから大丈夫よ」と私は言った。
彼女の部門は離婚問題が多いそうだ。
「今大変な時代ね。10年程まえの米国の問題が現在の日本の問題になっているのね。人間の際限の無い欲望が総ての原因だと思う」
「際限の無い自由と欲望にはとどめが無いのが問題ね。 何をしようが自分の自由だ。ツベコベ言われる筋合いは無い。 何を言ってるの貴方1人この世に生きるわけで無いでしょうと怒りたくなる」
自己中心で自分しか見えてない。 おまえが悪い、社会が悪い、政治が悪いと周りのせいにする。次々に起こる殺伐な事件で新聞はみたされる。
テレビをつけるとNHK「最後までここで支え合う人々と」と言う番組がかかっていた。
宅老所の仲間達の活動の様子を見ていると、スタッフの人々の顔がとても美しい。
老人達を支えようとする献身の心と使命感が顔に出てくるのだろう。 そして其処に楽土が生まれる。
際限のない自由と欲望によって起こる悲劇、地獄が何によって変えられるだろう。
自我しかなく、他人への思いやりを失った時、心の地獄が起こるのだろう。
「お前が悪い、世間が悪い、政治が悪い」と言っても最も悪いのは自分自身だろう。
節度を持った欲望と自由は文明を推進させるが暴走する自由と欲望は時に人を奈落に引き込むだろう。

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