万博会場へ向かうシャトルバスの中で野呂りんさんは言った。
「一昨日お電話した私の作品、体内宇宙の事ですが、どんな変遷をたどろうと、作品自体の旅なのですから私が拘ることは無いのだと思いました。
N氏がくいいるように見て高額にも関わらず、是非にと請われた姿を思い出します」
「完璧な人間なんて何処にも居ないと思いますわ。経理に弱いとか、何処かに泣き所が有るものでしょう。
堤も蟻の一穴からと言うでしょう、崩れる時は瞬く間かも知れない、それが人生だと思います。其れよりフィラデルフィア フラワーショーの押し花部門で上位入賞なさったでしょう」
彼女は入賞した作品の写真とフィラデルフィアフラワーショーの押し花部門のホームページのコピーを見せた。
仏足と虹をアレンジした作品だった。独自性、芸術性、色彩など七つのポイントをクリアーしなければ入賞出来ない。
三好を出て25分で万博会場東ゲートに到着した。
野呂さんと彼女の二人の娘と私、曇天で時々ポツポツと小雨。
明日、実家の法事があるので、昨夜高山の野呂さん、東京の茜さんも名古屋の渚さんのマンションに泊まって今朝早く我が家で出会い出発した。
夢の山、万華鏡、ソニー館とマンモス、アラブの国々、アジアの国々の展示館など走り回るように見ながら、写真を撮ったり、買い物したり値切ったり、休憩所でおにぎりを食べたり、飲み物を飲んだり、口と体をフルに働かせる若い子と一緒と言うのは目まぐるしい。
東ゲートでバスに乗ったのは七時近かった。
「今日随分展示品も見ました。万博にはもう来ないかも知れません。立体曼荼羅を制作しようと思っていますので、参考にはなりました。
でもこれから作る作品が私を奮い立たせ、私を作り、最終的には自分の作品に自分自身を投影し懸ける事になるでしょう」と彼女は言った。
「人生は短いけれど、自分の命を作品に閉じこめ永遠に生きる事も出来るものね」
三好に着いたときすっかり暗くなっていた。
レストランに入って寛いでいる時東ゲートで合流した次男が本を読んでいた。
茜さんは本が「国境」から読む世界紛争史であるのを聞いて、「私は本をよむのが好きですけどこのような本は読んだことがありません。
おばさんはどんな本を読まれますか」と尋ねた。
「必要に応じて読むの、認知症の問題が周りにおこれば認知症の本をというように、知ることは力だから、知らないことから来る不安だけでも解消されるでしょう」
「すごく落ち込んでいる時、読んでいた本の中にどうしようもない問題など無いと書いてあったのです。其れで深刻だと悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなったんです。心がとても軽くなって肩の力がスーと抜けて」
「苦労も読書も人間の幅を広げ、力をつける、今度二人を見て嬉しくなったわ、ふたりともとても良い女。男性からも女性からも好かれる女性になってね」
今日の一日はとてもハードだったけど良い一日だった。

0