2018/5/14

4444:再会 2  

 「実は、主人が亡くなりました。」

 まったく予期していなかったことを彼女は切り出した。

 彼女の夫はまだ60歳になっていないはず。上場企業の中間管理職で間もなく定年といった年齢であったはず。

 「えっ・・・いつですか?」

 「今年の2月22日です・・・」

 「何歳だったんですか・・・?」

 「59歳です・・・」

 59歳という年齢での早すぎる死の原因は・・・すぐに私の頭に浮かんだのは「癌」であった。

 「癌ですか・・・?」

 「いえ、クモ膜下出血です・・・」

 「そうでしたか・・・」

 彼女は、彼女の夫の死について語り始めた。その口調は淡々とはしていたが、諦念とともに秘められた怒りも感じられた。

 彼女の夫が長年勤務していた会社は、だれもがその名前を知っているメーカーである。しかし、数年前巨額の損失を隠していた不正経理が明るみになり、その業績は致命的にまで悪化した。

 そして会社をどうにか存続させるため、黒字部門を切り売りしたり、大規模なリストラを断行した。

 羽村市にある工場の中間管理職であった彼女の夫も、そのリストラのために奔走した。それは大きな心労を伴うものであったようで、彼女は「会社に殺されたような気がして・・・」と語った。

 「実は、自宅が主人名義になっているので相続登記をしないといけなくて、それに主人名義の預金についても、まだ相続の手続きが終わってないのです・・・相続税のことも心配で・・・かなり高額な生命保険金や退職金も出たので、その税金についても分からなくて・・・」

 「そうでしたか・・・おそらく相続税はかからないと思いますが、申告書は税務署に出さないといけないかもしれませんね・・・まずは分割協議書の作成が必要です・・・登記関係はいつも依頼している司法書士がいるので、娘さんとどう分けるかについてまとまっていれば、手続きはそれほど煩雑ではないですよ・・・」

 「そうですか・・・それともう一つご相談したいことが・・・主人が所有していた膨大な数のレコードと、きっと高額なものだと思うんですけどオーディオ機器も処分したいんです。私にとっては宝の持ち腐れでしょうから・・・」

 彼女の夫のレコードコレクションは相当な枚数であった。2階の6畳の部屋には作り付けのレコード棚があり、ぎっしりとレコードで埋められていた。きっと1万枚以上の枚数があるはずである。

 そして、オーディオ機器は、ORACLEのレコードプレーヤにOCTAVEのプリアンプとパワーアンプ、さらにはRaidho Acoustics C-2.1という比較的珍しいスピーカーという機器構成であった。

 「そうですね・・・買取業者も複数ありますので、なるべく高い価格で売却できるようにする必要がありますね・・・ 」




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