2018/5/13

4443:再会 1  

 彼女とこのような形で再会することになろうとは、予想すらしていなかった。

 彼女とそして故人となってしまった彼女の夫、その間に一人だけ生まれた娘とが暮らした家は、依然と何ら変わりがないようにひっそりと建っていた。

 家の脇に作られたガレージには、かって見慣れた、そして何度か彼女に代わってそのハンドルを握った、アルファロメオのミトが停まっていた。

 その一見飄々とした表情は、この数ケ月の間にこの家に起こった現実を、先日の彼女の電話から知ってしまった私の眼にはどことなく寂しげに映った。

 私はそのミトのすぐ前にフォルクスワーゲンのポロを停めた。そして、エンジンを止め、サイドブレーキを引いた。

 私と彼女とは数年前まで秘密の関係があった。それは4年ほど続いたであろうか。しかし、お互い守るべきものがあることを身に染みて感じるようになったこともあり、もう会うことはしないと約束してその関係を断った。

 それからは一切連絡は取りあっていなかった。もう彼女との関係の記憶も薄れ始めていた頃に、彼女から私のスマホに電話が入った。

 ソニー製のスマホのメモリーには、彼女の携帯番号は残っていたので、スマホの画面に表示された彼女を表す隠語であった「寧々」との文字を見て、私は心臓の動きが急に速くなるのを感じた。

 「まさか・・・!」「どうして・・・?」「出るべきでろうか・・・?」

 私の頭をいくつかの感嘆符や疑問符の付いた思いが、ひゅんひゅんと飛び交った。

 マナーモードにしてあったので、着信を知らせたのは微振動である。その微振動の回数が4回を数えた時に、私はスマホの画面を人差し指でさっと右になぞった。

 「もしもし・・・taoです・・・」

 私は抑揚のない調子でそう言った。

 「私です・・・すみません急に・・・どうしても他に相談できる人がいなくて・・・」

 彼女の声は依然と変わっていなかった。その声を耳にしなくなって3年ほどしか経っていなのであるから当然ではあったが、なんだかその変わっていない声のトーンに心がほだされた。

 「相談事・・・?」

 私が彼女の言葉を引き継いで、その後に続く内容を引き出そうとしたとき、「そうなんです・・・」と彼女のやや低いトーンの声が耳に響いた。

 耳元に彼女の吐息を実際に感じたような気がした。かって関係を持っていた頃、私は好んで右の耳を彼女の口元に持っていった。

 その時に感じた吐息が記憶中枢の中から、急に引き出されたのであろうか。

 やや間があって彼女は事の次第を話し始めた。




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