2017/5/16

4082:弦楽四重奏曲  

 ハ短調の幻想曲が流れ出した。冒頭は重厚で厳粛な感じで始まる。やがて転調して、空気感は変わる。馬がギャロップするような軽やかな足取りに移る。

 その後も何度が転調を繰り返し、その都度音楽の表情が移り変わる。その自由闊達さは心地よく聴く者の心を揺さぶる。

 「幻想曲」というタイトルが実に相応しい幽玄な曲想が繰り返されていき、やがてその幕を閉じる。演奏時間は11分ほど。

 1785年にウィーンで作曲されたこの「幻想曲」は、前年に作曲されたピアノソナタ第14番とともに「ピアノフォルテのための幻想曲とソナタ」としてアルタリアから出版された。

 それ故、この2曲を一つの作品としてとらえる向きもあるようだが、この「幻想曲」はこれ自体でひつとの完結した世界を作り上げているように感じられる。

 Marantz Model7とModel2のコンビはやはり相性が良いようである。同じメーカーであっても設計者はModel7とModel2では異なる。

 Model7は、ソウル・バーナード・マランツ自身が設計し、Model2は若く優秀なエンジニアであったシドニー・スミスが設計している。

 それぞれ優秀な感性と明晰な頭脳とを持った二人の最高傑作が組み合わさると、Maranzt独特の艶っぽく幽玄な音世界が、この狭いリスニングルームでも感じられる。

 幻想曲 ハ短調が終わった。CDを止めた。レコードも聴いてみたかった。ORACLE Delphi6のターンテーブルには、同じくモーツァルトの弦楽四重奏曲 第22番 変ロ長調のレコードが乗っていた。

 このレコードに針先を落とすことにした。こちらは先程聴いた「幻想曲 ハ短調」とは異なり冒頭からモーツァルトらしい典雅な世界が展開する。

 この曲が作曲された1790年頃には、モーツァルトは経済的に相当行き詰っている。友人宛に借金を申し込む書簡が数多く残っている。

 そのような悲壮感をこの弦楽四重奏曲からは感じることはないが、表面には現れない奥深い底流には、彼の絶望感が静かに流れているののかもしれない。

 演奏はSuske-Quartett。統制がとれていて一糸乱れぬ安定感を感じさせる演奏である。録音は1972年。ETERNAらしい誇張感のない自然な録音である。

 Marantzの純正といえる組み合わせはどこかしら典雅な雰囲気を持っている。古い真空管アンプなので、SN比やレンジの広さでは現代のアンプにはかなわないが、奥深い気品を有している。それ故、古く壊れやすくてもこのアンプを使いたくなる。

 リスニングルームで過ごした時間は1時間ほどである。ジムでのトレーニングで疲れた体にはこれ以上の時間は無理である。

 そっと電源を落とした。Model2に林立する真空管の淡いオレンジ色の灯りはすっと薄らいでいき、小さな羽虫が床に落ちるように消えた。




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