2017/12/13

4292:111km  

 白石峠を上り終えた。しばし、脚をゆっくりと休めたいところであったが、峠の頂上は気温が低く、体が急速に冷却されてきたので、休憩は早々に切り上げた。

 下りでも道路の凍結個所を2カ所通過しなければならない。その危険エリアは極めて慎重に通過した。あとは重力に任せて下っていった。

 下っていくと、上ってくるローディーと次々にすれ違った。「やはり人気のある峠だ・・・」と、そのすれ違うローディーの数の多さから感じた。

 下りではやはり体が冷えた。山間部を抜けて行ってようやく市街地に出た。交差点の向こうにサイクルステーション「TOKIGAWA BASE」が見えてきた。

 ここは、コンビニが撤退した後に作られたサイクルステーション。中には自販機が並びテーブルや椅子があり、ゆっくりと休憩できる。

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 ここに立ち寄って、トイレ休憩をした。トイレを済ませてから自販機で暖かいコーヒーを選択して、少し体を暖めた。ここはサイクリストが多く立ち寄る休憩ポイントである。

 復路では往路よりも走行スピードが上がる。すでにヒルクライムを終えているので脚を温存する必要がないことと、道がおおむね下り基調になるからである。

 ハイペースで復路を走っていった。単独走は体力の消耗度がいつもよりも高い。チーム走であれば、前を走るメンバーが風除けになってくれるが、単独走ではそれがない。

 体力の消耗とともにガソリンタンクの残量も心許ないものになってきた。往路でも休憩した飯能市内のセブンイレブンで昼食休憩をするつもりでいた。

 そこまでとりあえずひたすら走った。ようやくその休憩ポイントと定めたセブンイレブンが見えてきた。

 「やっと着いた・・・」と思いながら店内に入っていった。サイコンによるとここまでの消費カロリーは1770キロカロリーであるので、がっつり系を食したほうが良さそうであった。

 「カルボナーラ」を選択した。レンジで温められた「カルボナーラ」を店外でそそくさと胃袋に収めた。

 ほぼ空っぽであった胃袋はカルボナーラで埋まった。これを消化吸収のうえ、燃焼させることによって残りの帰路を走っていった。

 ペースを落とすことなくコースをこなしていくと、多摩湖の堤防に向かう坂道にようやくたどり着いた。

 この最後の試練をやり過ごすと、多摩湖の堤防である。多摩湖の堤防は午後の陽光が降り注いでいた。

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 この堤防をゆっくりと渡り切った。堤防では良い天気に誘われて、人々がのんびりと散歩していた。

 自宅に着いてサイコンを確認すると、今日の走行距離は111kmであった。特に意味はないが「1」が三つ並んでいてうれしかった。

2017/12/12

4291:路面凍結  

 白石峠のヒルクライム区間は6kmと少し。序盤から厳しい斜度が出迎える。この序盤で脚を使いすぎてしまうと、後半とても苦しい思いをする。

 その序盤を走っていった。序盤は集落もあり、人の生活感がまだ残っている。約2kmほど上ると、道は純然たる峠道の風情に変わる。

 人家はまったくなくなり、鬱蒼とした木々のみが周囲を取り囲み、とても静かな空間と時間が辺りを支配している。

 その静寂な空間を呼吸音とロードバイクの走行音を落としながら走っていった。中盤は斜度が緩むエリアもあるが、それは決して長続きしない。すぐさま厳しい坂が出現する。

 その斜度の変化は、こちらの心を弱め、その張り詰めた細い糸をどうにかして切ろうとするかのように、小刻みに繰り返される。

 少し緩みまた厳しくなる。それが何度も繰り返されるので、気持ちを強く持っていないと「もういい・・・もういい・・・」と気持ちが萎えてしまう。

 ラップパワーを注視しながら走っていった。前半では230ワットを維持していたが、後半に入って脚の疲労度が増してくるにしたがって、その数値は下がってくる。

 特に斜度が緩んだ時にはケイデンスをぐっと上げないとパワーの数値が下がってしまう。しかし、斜度が緩むと脚はここぞとばかりに休みたがるのである。

 そうすると「10秒平均パワー」の数値は200ワットを切ってしまう。「だめだめ、休んでは・・・」と思うが、なかなかパワーは上がらない。

 白石峠は頂上までの残り距離が小さな掲示板で表示される。その数値はゆっくりとではあるが小さくなっていった。

 残り1kmを切ってから、「残り少ないから、パワーを上げないと・・・」と思って、クランクに込める力を増していった。

 しかし、ゴールまで数百メートルの時、前方に見えてきたのは凍結した路面であった。「まずい・・・落車する・・・」との恐怖感から、その手前でブレーキをかけて、ノロノロ走行に・・・トルクをかけずにどうにか凍結部分を通過した。

 凍結部分を越えてから再度トルクをかけてクランクを回し始めた。もうすぐゴールである。ラストスパートをしようとしてダンシングに変えた。

 ゴール手前にはロードバイクを降りながら下ってくるローディーの姿が・・・その路面は真っ白であった。

 「凍ってますよ・・・気を付けて・・・」との言葉がそのローディーから届いた。ゴール手間で再度のブレーキング・・・ノロノロ走行に変更して、ゆっくりとその凍結部分を通り抜けた。

 どうにか落車はせずにゆっくりとゴールした。サイコンに表示されたヒルクライム区間の平均パワーは223ワットであった。

 本来は230ワット以上の平均パワーで上りたいところであったが、「今の調子ではこんなものであろう・・・」と自分を慰めた。

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2017/12/11

4290:上り口  

 コンビニ休憩を切り上げて、リスタートした。飯能市の市街地を抜けていくと、道はやがて国道299号に到着する。

 右折して国道299号をしばし走ってから宮沢湖方面に抜ける道に入った。その道を走ってくと宮沢湖の手前で県道30号に合流する。

 宮沢湖には昔遊園地があったようであるが、今はなく、その代わりに日帰り温泉施設ができている。

 この日帰り温泉には家族を連れて何度が来たことがある。露天風呂からは宮沢湖を望むことができ、良い雰囲気であった。

 その宮沢湖の日帰り温泉施設を左手に通り過ぎて県道30号をひた走った。埼玉医科大学国際医療センターの大きな建物が右手に見えてきた。

 その前のY字路交差点を左に抜けていき、毛呂山町を走っていった。このエリアには医療機関が多く、大きな病院の建物がいくつか見える。

 毛呂山町を通り過ぎて越生町に入った。県道30号線は八高線に並行して続いている。この道をひた走っていくと「田中」の交差点が見えてきた。

 この交差点の手前からときがわ町である。交差点を左に折れた。ここから道は県道172号となる。あとはこの道を走っていけば、白石峠の上り口までいける。

 このあたりからローディーとすれ違う頻度が増えてきた。その多くが白石峠を上ってきた帰りのはずである。
 
 白石峠はローディーに人気のある峠であり、今日も多くのローディーがチャレンジしているようであった。

 道はやがてゆるやかな上りが続くようになる。あたりはすっかりと鄙びた風情になってきた。ようやく、ときがわ町の「大野特産物販売所」の特徴ある建物が左手に見えた。

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 ここまでくると上り口はもうすぐである。ちょっと行った先にその上り口はあった。右に直角に曲がると白石峠の上りが始まる。

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 ここから6kmと少しの距離を上りきると白石峠の頂上である。その上り口で一息入れた。上り始めようとした時、2名のローディーが勢いよく下ってきた。そしてすれ違いざま「頂上付近は道が凍結してます・・・」と言葉をかけていった。

2017/12/10

4289:単独ライド  

 10月、11月は走り込みが全く不足してしまい随分と脚力が落ちてしまった。今月からは毎週長い距離を走って、調子を戻していく予定でいる。

 今日はリーダーが所用のためチームでのロングライドはなかったので、単独でのロングライドとなった。

 単独でのロングライドは、前を引いてくれるチームメイトがいないので、常にマックスの空気抵抗を受け続ける。コンビニでの休憩の時間も必然的に短くなる。なので、チームで走るよりも疲れることが多い。

 しかし、良いことも一つある。スタートの時間を自分で決められることである。特に冬の時期はスタート時間によって走り始めの気温は随分と違う。

 今日はチームで走る時よりも1時間半ほど遅くスタートした。普段は7時に自宅を後にするが、今日は8時半・・・その余裕の1時間半はぬくぬくとしたベッドの中で過ごした。

 目的地は「白石峠」に決めていた。我が家からスタートすると往復距離は110km程である。白石峠の上りは厳しく、今の脚力では良いタイムは出ないであろうが、復活の兆しを見つけたいところである。

 まずは自宅を出てすぐのところにある多摩湖の堤防を渡った。多摩湖を見ると空の青を映してとても静かな湖面であった。

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 堤防の上には犬の散歩をしている人やウォーキングをしている人がいる。多少蛇行して走っていった。

 堤防を渡り終えると、所沢市である。所沢市内の道を走った。結構アップダウンが多いコースである。

 気温はこの時期らしいものであったので、体はなかなか暖まらなかった。サイクルウェアは先週と同じものであったが、唯一違ったのがシューズカーバー・・・先週は履いてこなくて後悔したので、今日はしっかりと装着した。やはりシューズカーバーの有り無しは大きい。足元が暖かかった。

 幾つもの交差点を曲がった。道はやがて入間市に入っていった。そして飯能市方面に繋がる県道を走った。

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 八高線としばらく平行して続く県道を走っていくと、入間市から飯能市に入る。飯能市内のコンビニで休憩をする予定であった。

 休憩ポイントのセブンイレブンが見えてきた。道の右側にあるので後方を確認してから道を横切ってその駐車場へ入っていった。

 トイレを済ませて、補給食を選択した。普段はサンドイッチやブリトーなどを選ぶことが多いが、今日は「宮崎紅のさつまいもこ」を選んだ。

 少し変わり種のシュークリームである。美味である。これをホットコーヒーと一緒に胃袋に収めた。まだまだ先は長い。休憩は最小限にして、Kuota Khanに跨った。

2017/12/9

4288:第20番  

 高円寺にある名曲喫茶「バロック」で流されるクラシックの音量はそれほど大きいものではない。一般的なBGMよりは音量が大きいが、聴く者を威圧すようなものではなかった。

 なので、私と「ゆみちゃん」は小さめの声で会話することができた。

 「今、かかっているのは何ですか・・・?」

 「ブルックナー・・・交響曲第6番・・・結構長いんだよねブルックナーは・・・」

 「まだ、当分終わらないんですか・・・?」

 「あと、30分くらいかな・・・」

 「えっ・・・そんなに・・・」

 残念ながらブルックナーは彼女には不評なようであった。私は大好きな作曲家なので、「ちょうど良い時に着いた・・・」と内心ほくそ笑んでいたのであるが、クラシックをほとんど聴かない彼女にとっては、その良さは理解の外であるようである。

 「クラシック好きでもないの、何で名曲喫茶に行ってみたかったの・・・?」

 「そうね・・・雰囲気を味わいたかったのかな・・・ちょっと変わっているでしょう・・・この内装・・・それに商売気がない感じが好き・・・なんだかせかせかしていない・・・こういうところではスマホやタブレット端末は似合わないでしょう・・・古本屋で買ってきたような丁寧に装丁された古い本でも持ってきて、読みたい感じ・・・日常と少しずれた時間と空間が好きなのかも・・・」

 「そうか・・・そうだよね・・・『Mimizuku』に来るのもそういった感覚・・・?」

 「きっと同じ・・・あそこもなんだか現実から隔てられた空間と時間の中にある感じがする・・・現実に寄り添っているんだけど何からしらずれている・・・ずれていてかみ合わない感じが良いのかも・・・そういう空間にいると落ち着ける。」

 彼女はいわゆるIT企業に勤めている。大学を卒業してSEとして仕事をこなしていたが、3年ほど前に忙しすぎる仕事のせいで体を壊した。3ケ月の病気休職の後、比較的残業がない総務部門で働いている。

 今は6時過ぎには退社できるようである。「ひどい時は月100時間以上残業が続きました・・・さすがみ体も心もぼろぼろになって・・・」彼女は忙しかった時のことを振り返って話したことがあった。

 31歳の独身女性、一人暮らしで実家は和歌山にある。新宿区内のIT企業の総務部門で働いている。住んでいるのは中野坂上のワンルームマンション。

 特に結婚願望もないようである。なので、31歳だからって焦っているような気配もない。きっと実家に帰ると、両親から「結婚は・・・?良い人いないの・・・?」と攻めたてられるはずであるが、本人はさらっと聞き流しているようである。

 「私、モーツァルトの曲が聴いてみたい・・・お薦めはありますか・・・?」

 彼女は少し童顔である。なので、歳のわりに若く見えることがある。その目にはどことなく幼さが覗く。

 その目を見て、「そうだな・・・ピアノ協奏曲第20番かな・・・」と呟いた。すると彼女はすっと立っていって例の黒板にチョークで「モーツァルト ピアノ協奏曲 第20番」と書き込んだ。その字は端正なものでバランスが良かった。

 長いブルックナーの交響曲が終わって、レコードが変わった。かかっているレコードのジャケットは脇に置いてある譜面台に飾られる。

 そのジャケットを見た。マリア・ユーディナのピアノでソビエト国立放送交響楽団との共演によるレコードであった。

 古い録音のものであるので、音質は良くないが、何故かしらこの空間においては、そんなことは全く気にならない。

 「このタンノイはきっとモニターシルバーだな・・・」と思った。1950年代に製造されたモニターシルバーはその時代のレコードと相性が良い。

 私と「ゆみちゃん」は会話を止めた。しばし、そのよどみなく流れ去っていく音を注視していた。

 そしてオルフォンの針先はレコードの端から端へ渡り終えた。「ぼつっ・・・」という音と共に針先は盤面から離れた。

 この店に入ってすでに1時間以上の時間が経過していた。二つのカップの中の珈琲は既になく、黒い液体の残りかすが輪になってカップの底にへばりついていた。

 「そろそろ出る・・・?」私が彼女にそう言うと「ええ・・・そうしますか・・・」と彼女も同意した。

 「なんだか、この店には気が流れていますね・・・」彼女がぼそっと言った。「気・・・って・・・気功なんかので言う気のこと・・・?」私は訊いた。

 「そうです・・・その気です・・・」彼女はマリア・ユーディナのピアノに負けないほどに明晰に答えた。

 「そういったものを感じる・・・?」

 「ええ、感じます・・・」

 「気か・・・」

 二人は「バロック」を後にした。店を出て階段を上がった。もうとっくに日は暮れていた。辺りは暗く寒かった。

 「また来ましょう・・・」彼女はそう言った。食事にでも誘うおうかと思ったが、何故かしらそういった気分にはなれなかった。

 彼女を駅まで送った。どうやら名曲喫茶「バロック」は彼女にとって「お気に入り」になったようであった。きっとこの店にはまた来ることになるであろう・・・彼女も一緒に。

 その時には店のオーナーに訊いてみようと思った。「このコーナー・カンタベリーにはモニターシルバーが入っているのですか・・・?」と・・・

2017/12/8

4287:名曲喫茶  

 彼女と合流して、高円寺駅南口の商店街を少し歩いた。5分ほど歩いて、商店街のある通りから左に少し入り込んだ道に面したビルの地下1階にその店はあった。

 地下へ降りていく階段の横に看板が出ていた。黄色い色が目につく看板である。黒い文字で「バロック 音楽室と珈琲」と書かれていた。

 地下1階にあるので一人で初めて入るのにはちょっとした勇気がいるであろう。少し急な階段を降りていくとその店の入口が見えた。

 入口の左脇には小さな椅子が置かれ、その上にメニューが額縁に入れられて乗せてあった。「メニュー 珈琲 400円 紅茶 400円 ジュース 400円 前払い制 お替り全て200円」と書かれていた。

 レトロな雰囲気を漂わせるその店の扉を開けると右側にレジがあり、初老の女性がレジの前に座っていた。

 二人とも珈琲を頼んだ。800円を私が支払うとチケットを2枚くれた。それを手に店の中に入っていった。

 照明は薄暗い。椅子やテーブルなどの調度品は相当な年数が経過しているものばかりで独特の重厚感をもたらしていた。

 さらに壁にはアンティークな壁掛け時計が多数並んでいて、古く大きな棚には作曲家の胸像や店名通りバロック様式を連想させる彫刻類が多数陳列されていた。

 店内の写真はインターネットで事前に見ていたので、おおよその予想はついていたが、その予想を大きく上回る異次元的な空間はある意味圧巻であった。

 コンセプトは明確である。バロック時代のヨーロッパの雰囲気を少しばかりアングラ的に表現している。

 店は長方形で四人掛けのテーブル席が四つ、二人掛けのテーブル席が二つある。店内はそれほど混んでいなかった。私たちが入った時には2人組と単独客がいるのみであった。

 私たちはスピーカーに比較的近いテーブル席を選んだ。その古い椅子に座るときしむ音がした。椅子は座面が茶色の革張りで、座面のクッションはすっかりとくたびれていた。テーブルはアンティークのもので表面には小さな傷が刻まれていた。

 チケットをテーブルの上に置いておくと、しばらくして初老の男性が珈琲を二つ運んできた。店は二人で切り盛りしているようであった。きっと夫婦であろう。

 珈琲と入れ替わるようにテーブルの上の2枚のチケットは回収された。私たちが椅子に座った時にはブルックナーの交響曲第6番がかかっていた。

 薄暗い照明にぼんやりと照らし出されたオーディオ機器をじっくりと眺めた。スピーカーはタンノイのコーナー・カンタベリーであった。その古いタンノイは部屋の短辺の両コーナーに設置されている。その間隔は5メートルほどであろうか。

 二つのスピーカーの真ん中にあたりにアンティーク調の重厚感あふれる横長の棚があり、そこにレコードプレーヤーと真空管式のアンプが綺麗に置かれていた。

 レコードプレーヤはトーレンスTD-124である。アームとカートリッジはお約束であるかのようにオルトフォンであった。

 そして少々変わっていたのがアンプである。プリアンプ1台、パワーアンプはモノラル構成で2台・・・いずれもシャーシは独特のグリーンの色合いのものであった。

 どうやら新藤ラボラトリーの製品のようであった。パワーアンプは出力管が300Bのシングルアンプのように見えた。

 その機器構成を見て、「この店のオーナーは相当なオーディオマニアでもあるはず・・・」と推測した。

 珈琲は深煎りの濃厚な味わいで、少々苦みが強めである。「Mimizuku」の珈琲を飲み慣れているとちょっと重く感じる。

 「ゆみちゃん」は妙に目を輝かせて、周囲のものに目線を移していた。「良い雰囲気ですね・・・あそこに小さな黒板があるでしょう・・・リクエストがある人はあそこにチョークで書き込むんですって・・・」と彼女は話した。

 その小さな黒板に目を移すと確かに黒板に何曲かの曲名が書かれていた。その一番下には、「ブルックナー 交響曲第6番」と文字が右に向かって下がりながら書き込まれていた。 

2017/12/7

4286:待ち合わせ  

 ロングライドを終えて手早くシャワーを浴びた。シャワーの設定温度はいつもよりも高めにした。熱いシャワーを浴びてさっぱりとした。

 だらっとしたいところであったが、午後は予定が入っていたので、車に乗り込んで自宅を後にした。

 ロングライドを終えてから車に乗ると、体が疲れているからか、車の剛性感がひしひしと感じられて、「車ってやっぱり良いな・・・」と思ってしまう。

 新青梅街道に出た。天気は相変わらず素晴らしかった。青い空は澄み切っていて空にはほとんど雲がなかった。

 道はそれほど混んでいなかった。車は順調に進み、青梅街道に入っていった。BMW523iは納車から1年と2ケ月が経過した。走行距離は2万5000kmを超えた。

 マイナートラブルは生じていない。最近のドイツ車は日本車並みに故障が少なくなっているようであった。

 最初に乗ったドイツ車は20年前に購入したAudi A6であった。その時は納車されてから1年間で5回ほどマイナートラブルが発生して悩まされた。

 今乗っているBMW 523iは、モデル末期であった。大幅な値引きに引かれての購入であったが、「ドイツ車はモデル末期を狙え・・・」という格言には、イヤーモデルごとに改良を加えるドイツ車はモデル末期だと乗り味が熟成されていて、マイナートラブルも少ない、という意味合いが込められている。その格言は正しいようである。

 青梅街道を走っていくと環八との交差点である「四面道」を越えた。目的地まではもう少しである。

 やがて左手に杉並区役所が見えてきた。その区役所を通り過ぎてから車線変更をして左の車線に移動した。

 そしてしばし行った先のコインパーキングに車を入れた。ここから歩いて数分でJR中央線の高円寺駅に辿り着く。

 待ち合わせの時間は4時であった。それまでにまだ15分ほど時間があった。駅までの道をゆっくりと歩いていった。

 高円寺の駅前には小さな商店が並んでいる。どことなく下町風情が残っている。その幾分のどかな風情を感じながら歩いていくと駅に着いた。

 改札口に向かった。改札口では人々がせわしなく移動していた。「もう師走か・・・」その人々の流れを目にしながらぼんやりとそう感じた。

 その人の流れの中に彼女を認めた。周囲の人々から鮮明に浮き上がる様な感じでその姿は近づいてきた。時刻はぴたりと4時であった。

2017/12/6

4285:帰路  

 素晴らしい景色と美味しいパスタを堪能して、「ベラヴィスタ」での昼食休憩を切り上げた。ロードバイクにまたがって、東吾野まで下った。

 「ベラヴィスタ」のテラス席は陽光が降り注いでいて暖かかったが、長い下りを走り終えると体が冷え切った。

 東吾野駅で一息入れていると、のどかな駅に電車が入ってきた。その様子をぼんやりと眺めていた。電車にはハイキング姿の乗客が数名乗り込んだ。

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 ここから「東峠」「山王峠」「笹仁田峠」と小さな峠が三つ続く。上る距離はいずれも短いが、短いと平均パワーが上がる。いずれも体には過酷な負荷を課することになる。

 東吾野駅を後にしてすぐに「東峠」を上り始めた。「パワー220ワット程度の負荷で上って行こう・・・」と思いながら、序盤を上っていった。

 前半はそれほどペースも上がらずに穏やかな展開であったが、後半からペースが上がっていき、隊列は縦に長くばらけていった。

 後半に入り、私も少しペースを上げたが、それほどのパワーアップは望めなかった。どうにか、最後までだれることなく走り切れた。
 
 東峠の頂上は良い眺望は全くなく、鬱蒼とした木々に囲まれている。「東峠」と書かれた小さな道標が道の脇にあった。

 全員が揃ったところで下り始めた。下り終えてしばし走ると「山王峠」へ向かう交差点が見えてきた。

 この交差点を左に折れると山王峠がある。山王峠は距離は短いが斜度はしっかりとある。ここは平均パワー300ワットぐらいで普段走る。

 サイコンのパワー表示を注視しながら上り始めた。最初のうちは300ワットの数値が出ていたが、やがてその数値は250ワットぐらいまで下がった。

 アクセルを踏んでも、エンジンのパワーアップはなかなか難しい状況であった。ゴールが見えてきた終盤でようやく300ワット以上の出力を振り絞って上り終えた。

 残りは「笹仁田峠」である。ここを上り終えると後は上りはない。笹仁田峠は斜度が緩く距離も短い。

 さらっと流せば疲れることはない。しかし、ここも普段は300ワット以上のパワーをクランクに込めて走り切る。

 脚の余力がないので、ペースが上がった後はひたすら前を行くメンバの後ろに付いて引いてもらった。

 終盤になってスパートエリアに入ってからダンシングでラストスパートした。頂上に達するとほっとした。

 今日のロングライドで上った峠は全部で四つ。エンジンパワーは落ちていたが、いずれもアクセルを緩めることなく上り切れたことは収穫であった。

 久しぶりであったチームでのロングライドはやはり楽しいものであった。これからは寒い時期である。ロードバイクで走るには少々辛い季節であるが、どうにか毎週走り込んで、調子を上げていきたい。

2017/12/5

4284:ベラヴィスタ  

 東吾野駅を左手に見ながら通過した。もうすぐ右折ポイントである。目印がなく分かり辛かったので、トレインは一旦そのポイントを通り過ぎてしまった。

 あわててUターンして、そのポイントまで引き返し、顔振峠に繋がる道に入っていった。その行程の序盤は緩やかな上りであった。

 斜度同様、序盤はそれほどペースも上がらずゆったり気分で走っていった。脚力がこの10月11月の2ケ月でかなり落ちてしまっていたので、このゆったりペースはありがたかった。しかし、最後までこのペースという訳には当然いかない。

 道が進むにつれて斜度が上がってきた。斜度が上がるにつれてぺースも上がった。出力が一気に250ワットぐらいまで上昇した。

 残念ながらその出力を継続できる脚力はなかった。ずるずると先頭集団から離れていってしまった。

 「あまり無理はせず、一定の出力で固定して最後まで粘ろう・・・」ということで、220ワットほどの出力を目安にクランクを回し続けた。

 後半は斜度が厳しいエリアが多かった。吾野から上る顔振峠の中盤のような厳しさはないが、後半は平均斜度が9%くらいの感じであった。

 どうにかこうにか220ワットくらいの出力をキープしながら、峠道を上っていった。今日のゴールは顔振峠の頂上ではなく、途中の分岐点であった。

 分岐点は180度折り返すようなカーブになっている。そこまで上り切って後続のメンバーを待った。

 ハンドルにもたれかかるような姿勢で呼吸を整えながら「結構落ちているな・・・調子を戻すには、2ケ月ほどかかりそうだ・・・」と思った。

 全員が分岐ポイントに到着してから、顔振峠までの残りを走った。峠の道標の前で恒例の記念撮影をした。

 峠の茶屋の駐車場からは遠くの山並が見えた。白い富士山も見えた。空は青く澄み渡っていた。その美しい景色を眺めていると、気分が幾分すっきりとした。

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 顔振峠の頂上から少し行った先に、今日の昼食休憩ポイントであるレストラン「ベラヴィスタ」はある。

 その店の存在をひそやかに主張している看板を目印に、道から下っていくとそのレストランはぽつんと立っている。

 そのテラス席からの眺めは素晴らしい。11時前であったので店の開店前であったが、無理を言って入れてもらった。12時から20名の予約が入っているとのことで、それまでに退散することが条件であった。

 テラス席に陣取ってメンバーそれぞれ好みのパスタを注文した。私は「森のきのこソースパスタ」を選んだ。

 テラス席は太陽の光に満たされていたので暖かかった。そしてそこから見える景色はやはり素晴らしいものであった。

 眼下に広がる青い山並は、美しく波立っていた。テラス席の下にはこの店がやっている家庭菜園があり、そこで作業している人の声が時折聞こえた。

 ここに座っていると、しばしの間、浮世を忘れる。帰り道には連続する三つの小さな峠が待ち構えているが、その存在のこともしばし忘れることが出来た。

2017/12/4

4283:ハーフマラソン  

 7台のロードバイクはトレインを形成して、冷たい空気の中を走り出した。多摩湖サイクリングロードを西へ向かって走っていって、多摩湖の堤防を目指した。

 多摩湖サイクリングロードを抜けてしばし坂道を上ると多摩湖の堤防に着いた。そこから見える景色は実に清々しいものであった。

 堤防を渡り終え、アップダウンのあるコースをトレインは順調に進んだ。気温は8度程度であろうか、走っていてもなかなか体は暖まらなかった。

 今日は「所沢シティーマラソン」があるようで、ところころで道路規制をする為のスタッフや警察官が立っていた。

 我々が走っている時間帯はまだ道路規制の前であったので、特に支障はなく、飯能市内へ抜けることが出来た。

 「所沢シティーマラソン」は、埼玉西武ライオンズのホームグランドである「メットライフドーム」の中をスタート・ゴールとしている。

 所沢市西部の狭山丘陵を中心としたコース設定になってて、アップダウンのあるコースになっている。フルマラソンではなくハーフマラソンなので、走りやすいかもしれない。

 「来年、走ってみようかな・・・心肺機能は大丈夫だと思うけど、自転車のペダルを漕ぐ筋肉と、走る筋肉は違うというから、ランニング用のトレーニングが必要になるから、面倒かな・・・」そんなことを思った。

 飯能市内のセブンイレブンでコンビに休憩をした。寒いので補給食は暖かいものが欲しくなる。「カレーチーズまん」と「ブリトー ハム&チーズ」の熱々コンビを選択した。これにホットコーヒーを加えて、体を中から暖めた。

 コンビニ休憩を終えてリスタートしてしばらく進むと国道299号との交差点に突き当たった。ここを左折して国道299号を進んだ。

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 国道299号は緩やかなアップダウンを繰り返す。そしておおらかにカーブする。道の周囲に見える木々は所々茶や赤に色づいていて、目を楽しませてくれた。



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