ピッツバーグの秘密の夏
マイケル・シェイボン
早川書房 宮本美智子訳
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ピッツバーグでの大学生活最後の夏だった。ぼくアーサー・ベクスタイン、通称アートは、レポートを仕上げるために行った図書館で同じアーサーという名前の青年に声を掛けられた。明らかにゲイで、しかも自分に秋波を送ってきたと思えるこのアーサーに対し、アートは何故か一緒にビールを飲みに行くことをOKしてしまう。アートが必死で張った予防線のためなのか、違う理由があるのか、アーサーははっきりとアートを誘うということはしなかった。浮かれ騒ぎのパーティや次々に紹介される新しい友人たち。その中でアートは、アーサーと同じ図書館で働いているフロックスという女の子と恋に落ちた。
あ〜、なんだか青春映画を観ているような錯覚に陥ってしまうような作品でした。私の好きな映画「グリニッジビレッジの青春」に、もうちょっと明るい日射しを足して現代に移動させたような感じでしょうか。主人公がユダヤ系というのも同じだったかな?漠然とした将来、刹那的な恋、苛立ち、衝動、友情、親の思いとのズレ。そういうのがとても生き生きと描かれてました。
さて、この物語の主要登場人物は、アート、アーサー、フロックスと、アーサーの友人のバイク乗りのマッチョなチンピラ風のクリーブランドと彼の恋人のジェーン。それからアートの父親。アートの父はインテリギャングの大物なんだけど、息子にはその仕事を継がせたいとは思ってないし、アート自身もそういう世界を軽蔑してるんですよね。だけど父親には頭が上がらないの。仕事で父がピッツバーグへ来ることがあれば必ず食事を一緒にして、自分の彼女が父のお眼鏡にかなわなかったらとドギマギしてって感じです。
友人たちには父のことを何も話してないアートなんだけど、初めて出会った時からクリーブランドだけは彼の父がギャングの大物だって知ってるんです。そしてアートの父親に何とか紹介してもらって自分を売り込みたいと思ってる。
アーサーは、スマートで奇想天外で行動力があってチャーミングな青年。モハメッドという恋人らしき青年という存在があるんだけど、どうも言外にアートへの思いがちらちらと見え隠れしてます。で、アート自身が完全ノーマルなら何の問題もないんだけど、どうもそうだと言い切れないらしくって……。かくしてアート、フロックス、アーサーという三角関係へ。
本当はこういう恋愛のあっちへいったりこっちで悩んだりというのを読むのが本当に苦手でイライラしちゃうことが多いんだけど、今回あまりイライラせずに読めました。メインが女(フロックス)と男(アーサー)の間で悩む三角関係の恋愛、ではなくて、ナイーブで衝動的な青春そのもの、だったからかな。
そうそう、訳者あとがきに、この作品がシェイボンの処女作だということ、そして第二作目が出るより前に本書の映画化が決まったとあるんだけど、実際映画化はされたんでしょうか。