ウォータースライドをのぼれ
ドン・ウィンズロウ
創元推理文庫 東江一紀訳
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恋人カレンとおだやかな生活を楽しんでいたニール・ケアリーの元に、養父グレアムがやってきた。またぞろ朋友会からの仕事の依頼だった。ただ、今回の仕事は人探しではない。今マスコミを賑わせている、ポリーゲイト事件。実業家であり、健全な家庭を売り物にした人気TV番組のホストであるランディスによる愛人レイプ事件の被害者の女性を匿って、その間に証人としてきちんと答弁できるように彼女の英語を磨き上げろというのだ。
あら…なんだか軽い。というのが読み始めてから感じたこと。
八月の民主党大会までに副大統領の家出した娘を探し出すという「ストリート・キッズ」、近代中国の歴史を絡めた「仏陀の鏡への道」、ネヴァダのカルト教団への潜入の「高く孤独な道を行け」という過去三作に比べると、どうしても本作が軽いと思っちゃうのは仕方ないですよね。いや、事件そのものが軽いとか重いとかではないのかも。ニール・ケアリー自体が、なんだか(ミステリ本の世界で)どこにでも居そうな、ちょっとナイーブな感じでへらず口だけは達者だけど女性に対してはどうも強く出ることができない、でもやる時はやる人よ、という…そんな感じのキャラクターになっちゃってて、痛いようなとんがった部分の魅力がなかったように思いました。
まあ、ニールはそんな感じですが、他の登場人物はそれぞれに魅力があって、ナカナカ楽しく読めました。面白かった、ことは確かに面白かったけど、さて創元のサイトで発表された「お待たせしました。ニール・ケアリーが帰ってきます!」というニュースを読んで期待していた方向とはちょっと違っちゃったかな。
なんとなく読者心理としては、「待った」分だけ期待も大きくなるのだけど、別に第三作から第四作の本書の間にある6年という時間は、ウィンズロウが作品を書き上げるまでの時間ではないですよね。今手元にある本が二作目の「仏陀の鏡への道」と本書だけなのですが、この二作はそれぞれCopyright 1992 in U.S.Aと、Copyright 1994 in U.S.A。ってことは日本でのこの最新作も本国では十年以上前に続けて書かれたものってことですよね。アメリカ人からしたら、何で今更?って思われても仕方ないぐらい古い作品。うは〜、この辺りが翻訳本の切ないところでしょうか。それにしても何で続けて翻訳しないで何年も寝かせておいたのか、創元の考えがよく分らないなぁ。