友達の友達はアル・カイダである可能性もあるが、今回の場合は、友達の友達の息子が映画監督なので、その作品を見るために、その友達と一緒に新宿ピカデリーまで出掛けた。
それは、古波津陽監督の「築城せよ!」である。現在のところ、東京ではおそらくここでしか上映されていないのであるが、主演に片岡愛之助、助演には阿藤快、江守徹が揃う立派な娯楽作品だ。
行政区画で言うと愛知県豊田市に属している猿投(さなげ)を舞台に、愛知工業大学の建学50周年記念事業でもあるというこの映画は、現代に降臨した戦国武将が、この大学の建築学科の学生たちや地元の人々とともに、段ボール製の城を「築城」してしまう、という物語である。
新宿ピカデリーには、映画に登場する段ボール製のシャチホコが展示されている。確かに段ボール製ではあるが、実に見事なものである。この映画では、段ボール箱によって実物大の三層くらいはある城を作ってしまうのだから、膨大な量の段ボール箱が使われたのだが、段ボール業界団体の協賛を得ているらしいので、おそらくその調達には困らなかったことであろう。
ここには、リアルな歌舞伎役者とリアルな俳優と多数の素人の出演者がいる。そして、リアルな過疎の町とリアルな地方大学が主要な舞台装置となっている。現実とフィクションが融合しており、まさに「虚実皮膜」の空間を生み出している。
ここには、巨費を投じたプロフェッショナルな映画製作などというものはない。実際に段ボールを使って作業をしているのは、地元の住人と現実の大学生たちなのだ。映画の製作者が製作したのは「映画」であるとしても、そこに登場する普通の人々が製作した「城」はリアルな作品であって、CGでも何でもない。そして、彼らを「城」の製作に向かわせた力こそ、この監督の持つ「プロデュース」する力であろう。
古波津監督は、今後も映画を撮る積もりだろうが、彼がこの映画で実現したものは、カネを払って映画館に足を運び、あるいはDVDを買って自宅で見る、という消費者側の満足だけではない。元来、カネがなかったからには違いないが、町、大学、業界団体などの利害をうまく取り込むことで、映画の製作を可能にした、いわば生産者側の満足できる論理を構築できたことが成功の要因だろう。
ハリウッドの大作に比べれば、極端に安かったであろう製作費で創られたことは間違いないのだが、個々の俳優の演技の深さ、映像の美しさ、プロットの面白さ、納得のさせられ方、受け止められるメッセージの豊富さなどにおいては、第一級の映画作品であり、決して文化祭の出し物などではない。一級のフィクションであるとともに一級のドキュメンタリーでもあるこの映画、映画の作り手と観客のどちら側にも普通の人々がいる、というその構造こそ、まさにこの新鋭の監督が「築城」した大きな奇跡のようにも思えた。

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