忘れ物に気づいたものの、時間が遅かったために手の打ちようがなく、
その日は寝るしかなかった。翌朝、豊島園のプール管理室に電話をした。
新三「昨日、忘れ物をしたようなんですが…。」(ごめんね、ボケで。)
係員「はい、昨日でお間違いございませんか?」(お、丁寧だね。)
新「はい、プールを出たのは午後の3時頃です。」(これはハッキリ覚えてるからね。)
係「お荷物の外観はどのようでしょうか?」(袋に入れたんだよね〜。)
新「普通の、白いレジ袋です。」(どこのスーパーの袋かは不明だよ。)
係「左様でございますか、で、内容はどのような?」(ナ・イ・ヨ・ウ?)
ここにいたって、あたしはギクリとした。内容物を明らかにしなければならないのか。
新「ええっと、着物の下着なんですけど。」(着物と帯は、しっかり持ち帰ったしね。)
係「子供の下着ですか?」(何を聞いてるの、アナタ?)
新「いいえ、男物の着物の下着です。」(俺は、アリ地獄に落ちたんだね。)
係「はい。で、何が何点ありますか?」(ほうら、やっぱり。)
もう、目の前が真っ暗になった。腹を括って、有り体に言うしかない。
新「半襦袢とステテコ、それに褌です。」(言ったぞ、ハァ、ハァ…)
係「それに、何ですか?」(声が小さかったのか!?)
新「ふんどしです。」(ああ、ついに言ってしまった。)
係「わかりました、ふんどしですね。」(いいじゃん、復唱しなくても!)
新「はい、あと、半足袋と紐が二本あります。」(んなことは、どうでもいいし。)
係「はい、半足袋と紐が二本ですね。」(今度は聞こえてやがる。)
新「そうです。それで全部です。」(あるといいな、忘れ物。)
係「はい、では確認いたします。」(え!もしかして?)
新「どうぞ。」(諦めの境地とは、こんなものか。)
係「半襦袢にステテコ、それにふんどし、」(半襦袢て分かるの、アナタ?)
新「はい、そうです。」(ステテコだって、分かるのかよ?)
係「それに、半足袋と紐が二本ですね。」(半足袋って、見たことあるかい?)
新「はい、それで全部です。」(ふんどしって、何回言ったかな?)
係「では、お調べして、折り返しお電話します。」(ふんどし検査ね…)
新「お願いいたします。」(全部ありますように。)
5分後に電話があり、該当する忘れ物があるという。
店を終えてから取りに行ってきた。
下着の全てが、無事自分の元に戻ってきたのである。
「ふんどし」を恥ずかしがる歳でもなかろうが、
ちょっとドキドキな体験をしたものである。
なまじ着替えを持って来させたために、こんなことになった。
取りに行って、家に帰って、「ただいま〜。」と言ったら、
家中から同じ台詞を浴びせかけられた。
「お帰り、父ちゃん。ふんどしはあったの?」
ヅガン。