「個性の伝達とは目的ではなく、私性が消える瞬間に生じる状態」といい「個性が伝達される瞬間とは、一個の泡がきらめき、大河に没する瞬間であり、個から発したものが普遍性を持つ瞬間なのだと思う」という松本仁の25年前の論の一節(川柳展望35号)
特に「私性が消える瞬間」という言い方に、今も答を見つけられないまま伝達性に右往左往する川柳の現状が一言で収斂されている。私性などという極めて抽象的な精神の有り様をどう書いても、深みにはまればはまるほど、言葉の切っ先は伝達性とは逆方向へ向い、自己には忠実だが、他者には難解と評される一句にならざるを得ない。
それが「私性」というものだと考えているが、共感を得るために、普遍性に向ってかなり捻じ曲げられた「私性」が、私性川柳という冠のもとで量産されているのが川柳の現状ではないだろうか。