「廃人」というのはイヤな言葉だ。
これは人間を蔑む言葉であって、社会的には抹殺された言葉という認識を持っている。多くの「廃人」が投句されていたが一句をはぶいてすべてボツにした。
自分であれ他者であれ、人がなぜ、何をもって廃人と断定するのか。生と死のあいだの何をもって「廃」というのか。動けなくなったら「廃人」か。精神が錯乱したら「廃人」か。身体的欠陥を「廃人」というのか。
そんな非人間的な視線が川柳に通用していいわけがない。
廃人と一般に呼ばれる場合、その多くは健常者と比較して、著しく社会性が損なわれている場合を指す。特に差別的要素が強いため、現代では殆ど使われなくなった。かつては廃人という言葉でひと括りにされた人たちは穢れや恥であるとして、座敷牢や土牢といった陰湿な場所に隔離されるケースも少なからずあったようだが、今の日本にそんな風習も習慣もあるはずがない。たとえ何らかの理由で隔離される場合であっても、それは廃人ではなく「人間」なのだ。
廃人という言葉も、廃人という実体もこの世には存在しない。存在させてはならない。