「歩く」赤井花城選
炎天を歩く上等兵いまも 石田柊馬
予言者が海を歩いていくらしい 小池正博
特選 街道を歩きつくして菜の花忌 森中恵美子
私見・「歩く」を人生の喩として捉える観念句が多かった。これでは句が硬直してしまう。相変わらず「秋を歩けば山頭火・・」が書かれ、相変わらずそれが入選する。
「覚悟」前田芙巳代選
土壇場で男と女に覚悟の差 東おさむ
鉄砲百合の覚悟はたかがしれている 柴田夕起子
一枚の海苔をあぶっている覚悟 小谷美ツ千
特選 瀬戸物の卵覚悟はできている 田中鳴蛙
「石」墨作二郎選
いつも裸でいつも本気の石である 国方艶子
そのときになったら思案する小石 樋口由紀子
石の理に武者人形が逃げまどう 江口ちかる
とぼけた石で蝶も安心してとまる 石部明
二階まで漬物石が追ってくる 牧野ねえね
どんと背を突かれて石を一つ吐く 笠島美恵子
石山やミノタウロスのちからこぶ 江口ちかる
蹴飛ばした石の行方など聞くな 森田律子
特選 日が落ちて指生える石枇杷抱く石 石田柊馬
「動く」森中恵美子選
階段が動いて空に近くなる 草地豊子
夢殿はキャスター付きでございます 江口ちかる
夜半にはきっと動いていた椿 江口ちかる
たましいのなかで動いているナイフ 田中博造
特選 医者へ向うバスがときどき動く村 野島全
大会の注目を集めたのは「背景がほどける百万匹の蛸」の新人、江口ちかるさん。大会はBS大会につづいて二度目だとか。着想、表現ともに際立っていた。
私の一押し(「景」をはぶく)
一枚の海苔をあぶっている覚悟 小谷美ツ千