東京まで新幹線で三時間半。少し旅慣れてからは車中にパソコンを持ち込んでいるのだが、今回は読みかけの『私の男』(桜庭一樹著)を読みふけった。
いつも黒くよどんで、空と海の区別さえつかないオホーツクの海を背景にした、娘とその養父の禁忌の物語。
養父はいつも煙草を手放さず、その煙草の火がつけられ、もみ消され、投げ捨てられ、宙をさまよう度に、9歳の遠縁の女の子を幼女にする男の心の表情を浮き彫りにする。
9歳で男に貰われた少女は、養父の胸にしがみつくこと、オホーツクの暗い海を終日眺めていることで、かたくなに自分の世界に閉じこもり、やがて結婚の日を迎える。
心に大きな空洞を抱えたまま、官能的にお互いを確かめあいながら、世間からずり落ちてゆく親子。
その異様な喪失の愛は圧倒的にうつくしい。
http://www.bunshun.co.jp/book_db/3/26/43/9784163264301.shtml

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