御句集『遊魔系』、渾身の川柳だと思いました。
ともかく毒がすごい。まともには立ち向かいたくない川柳集でした。
水掻きのある手がふっと春の空
水掻きがあるからカエルか河童なのでしょう。水と空の区別がつかない春をよく詠っておられると思いました。
包帯を巻いて菫を苛めけり
戦争中に書かれていたらすごい句。
軍艦の変なところが濡れている
集中第一の句だと思います。記憶に残る秀句。
神の影耳を咥えて立ち去れり
神の言葉が聞こえなくなった私の呆然とした姿がいい。
百合ひらく部屋の奥には発禁書
人間の聖性を超えて見事な句。
靴屋きてわが体内に棲むという
想像をかきたてる句。ピノキオが鯨の中に入る物語などを連想させます。
折り鶴のほどかれてゆく深夜かな
俳句の雰囲気があります。鶴の形で決められているのも疲れるもので、折鶴も夜にはやすみましょう。
ぎっしりと綿詰めておく姉の部屋
姉は不思議な存在で、母性があり、また艶めかしい存在でもあります。
一族が揃って鳥を解体す
鳥とは住所不定の存在であり、人間の闇を見る目があります。
真っ暗なからだの奥の水祭り
ゴヤの絵を連想します。これも人間の闇といのちを感じます。
群衆という名のずかずかと喉の奥
この句、金子光晴の詩を読んでいるようでした。
透明でぶよぶよしているのが私
これも金子光晴の、くらげには元々こころなどないのだに通じる、きつい一句。
思いつくままに書きましたが、句集のどの句も精選されていて、肉体の苦しみをはずして言葉の世界にあるようです。ともかく、たてへんな書であり、その毒に耐えられる人はあまりいないのではないかと考えます。
やっとお礼を書くことができました。これから川柳を思い浮かべるとき、この句集は一つの峰としてあると何回も思い出されることと思います。
身にあまる批評をいただき、ありがとうございました。明

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