先ごろ発売された人間椅子の15枚目(イカ天盤やベスト盤含めると19枚目)のアルバム「未来浪漫派」。
デビュー20周年ということで思い入れはかなり深いものがあるらしく(特に和嶋さん)、かなり濃くて盛りだくさんでいいアルバムになっています。
評論家ではなく、ただのコピーする立場のファンなので、ちょいとひん曲がってるかもしれませんが、1曲ごとに感想というか。
内容の詰まっているこのアルバムを噛み砕くお手伝いがちょっとでも出来れば、と思います。
【未来浪漫派】/人間椅子
01. 太陽の没落
これは名曲!超名曲!ライブでもアタマでやってほしいですね。まずリフが素晴らしいです。このリフ弾きながらあのAメロ歌うの難しいです。アルバムの始まりが明と暗の極端な対比というシリアスなもの。人間椅子のバンドヴィジョンを一気に突きつけてきたような感じがします。おおまかに3部構成になっており、そのどれもが印象的なリフやリズムで固められています。エンディングでの、まさに今落ちていくさまの表現は鳥肌が立ちます。「幽霊列車」のラストに詞が乗ってる感じですね。ベースのブリブリ・メキメキ・サウンドも極悪で素敵です。曲の雰囲気からローなのかなと思いましたがレギュラーチューニングでした。ローチューニングでなくても曲の作り方で重さは出せるのです。さすがです。過去にも「屋根裏のねぷた祭り」や「羅生門」など、レギュラーのへヴィソングはたくさんありました。
20周年の集大成ともいえる新たな金字塔。完璧です。
02. 輝ける意志
いいノリのストレートなロックソング。これは70'sというより80'sですね。若者へ向けての応援歌。これ以上ないくらいに前向き。わかりやすい曲に乗せて歌われる勇気付けられる詞。決して楽な道を選ぶなという教訓にも似た優しい大先輩の意見、ぜひ今の若い人たちに届いてほしいと思います。「愛に気付いた人は 自分を捨てるだろう」、この部分に三浦綾子さんの残した言葉「愛とは、自分の大切なものを人に与えてしまうこと、犠牲とは本当の愛を実行すること」、これが自然に重なりました。
ギターソロがまた素晴らしいです。ジェンのワウペダル半踏みサウンドでのチョーキングを絡めたランニング・ペンタトニックと言えばもうお分かりでしょう、あのVの神様マイケルシェンカーを彷彿とさせるもの、これがスリリングなソロでかっこいいです。ギタリスト必聴!コピーして凄さを実感してください。
03. 浪漫派宣言
アルバムタイトルにも引用されるぐらいですから今回の象徴的な1曲。暗くはない、むしろ明るい歌詞の内容だけど、クロマチック下降のリフが繰り返される曲調でもって、どこか頽廃的な感じも醸し出しています。これぞ椅子ワールド。久しぶりに聴けたリアピックアップ使用での6弦のピッキングハーモニクス。かっこいいです。「ロマンティックに行こうぜ」―アンビエントな声で、飾り気の無い言葉で問いかけるのも潔さを感じます。これからの未来へ向けて、浪漫と美しさで生きていこうという、現在の人間椅子としての自己主張。
Bメロ部の軽快さは「二十一世紀の瘋痴狂」スタイル、エンディングの壮大感は「桜の森の満開の下」スタイルですね。
ここでもペンタのランニングからソロは始まります。意外とスケール速弾きよりもピッキングが難しいんですよね。
04. 至福のロックンロール
軽快でいいですね、マキOZの「とりあえず・・・Rock'n' Roll」の雰囲気。「苦しみを幸せに変える魔法のミュージック」、なかなかパッと言えないフレーズだと思います。ロックの魔力にはまる人は数知れず、愛と尊敬を持って歌われるギミック無しのロックンロール・ナンバー。聴いててほんわか・ニヤニヤしてしまいます。もしデッカいホールで演奏されるようなことがあったとしたら、天井から白い巨大風船が幾つも降りてきて、それをみんながモンキーダンスではじき返しあうんでしょうね。
05. 愛の法則
リズムに凝ったラブソング!和嶋さんは愛の歌を書く周期がけっこうあると思うんですが、今がその時期なんでしょう。でも極み高みに満ちた歌詞。ラブソングをTVで歌ってる人たちに読ませてあげたいくらいです。曲は3連リズムを基調に、時に速く時に遅く、ブレイクありの。スローな3連部でのクリシェによるコード進行は感動的で、「痴人の愛」などでも披露されているもの。なおさら後半の速い8ビート部分がスリリングに生きてくる。ブレイクのところの苦しそうに切なそうにかすれて吐き出される歌。命を削って言葉を発している気がします。ラジオで語っていたように、ギターのレコーディングで時間を使いすぎたとのこと。歌に費やす時間が減ったのかな?とも思うのは勝手な推測。ギターソロ明けの4小説は「涅槃桜」のエンディングに共通するコード進行ですね。
06. 赤と黒
これはノブさんに歌わせて大正解でしょう!いまだかつて無いぐらいのストレートなスピーディ・ラブ・ロック。リッチー・ブラックモア先生の作風を参考にしていると思われますが、グラハム・ボネットにも歌わせたいぐらい。暑苦しくなりそう!最初ラジオで聴いたときは意外性に若干「ホヘッ!?」となりましたが、だんだん馴染んで良くなってきます。新しいプレイってなんでもそういうもの。ソロもリッチーしていて、少しずつ盛り上がってくるようなGmのペンタに始まり、3弦開放絡めがあったり、♭5絡めがあったり、これぞロックのギターといった感じです。過去にTV番組「人間椅子倶楽部」において、リッチーはあまり好きではないと言っていたし、ジミー・ペイジ風のソロは今まで頻繁にやっていましたが。今回のはまた新たな心境の成すところなのかもしれません。スカッとする真っ直ぐなナンバーです。
07. 冥土喫茶
研ちゃん流のジョークに彩られたへヴィメタル・チューン。今回は3連リズム多いですね。ノブさん大活躍!新たな挑戦にかなり苦労したと語られていました。スラッシーなリフの応酬はさすがで、これぞ研ちゃんの世界。詞のセンスもいいです。不安要素の羅列。「終わらない演奏会」に通ずる歌詞です。ローチューニングですね。ライブではサビの部分でもの凄いヘッドバンカーになれることでしょう。
08. 塔の中の男
物語のような大作。不安を掻き立てるような重い曲調から始まります。和嶋さんの好きな「男シリーズ」。06.の「赤と黒」でもそうですが、セーハによる4度和音で動いていくリフが印象的、4度ならではの歪みの混ざり具合が心地よいですね。途中明るくなるところのアルペジオのコードワークは天才的です。こういう、単純なハードロックギターだけではないところに垣間見える天才プレイに、僕は惹かれ続けているような気がします。中間部は「甘い言葉、悪い仲間」でもやられていたような曲調です。「ユート〜ピア〜」のコーラスはハッとしますね。そしてまた重い感じになり、エンディングリフはまたもや感動的。こんな曲を作れるアーティストがこの国にいることを僕は誇りに思います。
09. 月下に捧ぐ舞踏曲
まるで月の光が射し込んでくるようなイントロ。「月に彷徨う」に重なりますね。研ちゃんのあの声にリバーブがかかって淡々と歌われると、こんなにもおどろおどろしくなる。これまた神懸かり的。詞のテーマは違いますが、サビの高らかな歌には「春の海」の要素もあります。
後半は速くなり、盛り上がっていってそのまま一気にエンディングという、初期に多いパターンです。
10. ヤマさん
だから、いったい誰なんだヤマさん。和嶋さんのおじさんだっけか?いや、わかんない。ライブのMCで解説乞う!曲はメチャメチャかっこいい。「赤と黒」がレインボー、パープルならばこれはツェッペリン!力強いシングルノートのリフでグイグイ押していく。これまたこのリフ弾きながら歌うのは凄いこと。Bメロでのコーラスと高い笛みたいなキーボード(?)が感動を誘います。中間部のアルペジオはやはり天才的です。「ダンウィッチの怪」にも負けぬ劣らぬ不安な音使いです。最初のイメージを覆される、構築されたいい曲!後半は速くなり、ドライビングしてソロタイム。
「与太郎正伝」に雰囲気近いです。あれもZEP風リフがかっこいい曲でした。
11.秋の夜長のミステリー
恐いけど愉快、童謡のようなシャッフル。みんなで歌い分けるチームワークソング。この楽しい雰囲気、凄い大好き!今の人間椅子メンバーの和気藹々な感じが出てて、口元が緩みます。作曲が初の人間椅子名義というのもその表れだと思います。ライブではみんな上下に揺れそう。
ハーモニーも素晴らしいです。アレンジ力の高さを改めて感じます。
12.ばっちりいきたい子守唄
これもギミックなしの、正にトレインがケプトローリンするようなロック!単純だけど単調にならないのは技量でしょう。研ちゃんの今回の作風は、ブリティッシュB級ロック(いい意味での)への尊敬の念というものが感じられます。風のように吹いてきて立ち去ってゆく、シンプルなロックンロールです。本当はこのあとドラムソロがあったとか・・・収録時間でカットされたようですね。ライブだとソロタイムも!?
13.深淵
人間椅子史上最長の曲。神経使って聴きこまないといけないような気がする曲です。シリアスで物悲しい長いアルペジオに始まり、リズムインとともにザクザクと刻み込む。ローチューニングの音の深さ。まるできりもみ螺旋を描きながら奈落の戦慄・深淵に落ちていくような演奏。リズムがどんどん変化していく。中間部では「新生」にも込められていたメッセージが顔を出す。ウェブマガジンでも書かれていた大いなる決意、「美しく生きたい」。この人知を超えた信念によって、意を決して作られた曲のような気がします。そしてまた、その中間部の穏やかさを、激しい2バスが再びぶち破る。エンディングは「黒猫」や「どっとはらい」に通ずるソロイング。違うソロを左右で自由に流すのは「東洋の魔女」や「桜の森の満開の下」にもみられる、トニー・アイオミ的手法。
「あゝ 私が生きているのは喜びのため あゝ 私が幸せにあるのは苦しみのゆえに」
「喜び咽ぶ官能が続くまで 私はさらに苦しみを求めよう」
何かを悟ったかのような詞。とてつもなく大きい。とてつもなく深い。
和嶋さんは、文字通り、Buddha(目覚めた人)になったのだと思う。
特典CD. 悪魔と接吻
ストレートで小気味良いコンパクトな曲。歪みやディレイのFXをかけた和嶋さんのボーカルも新鮮です。これもリフ弾きながらの歌は難易度高そうです。雰囲気的には、これまた音源になってない「わたしのややこ」に近いものがあるかなと思います。特典としてしか入手できないのはもったいない気がします。
【未来浪漫派】/人間椅子
TKCA-73486 \ 3,000 (税込)
徳間ジャパン・コミュニケーションズ
01. 太陽の没落
02. 輝ける意志
03. 浪漫派宣言
04. 至福のロックンロール
05. 愛の法則
06. 赤と黒
07. 冥土喫茶
08. 塔の中の男
09. 月下に捧ぐ舞踏曲
10. ヤマさん
11.秋の夜長のミステリー
12.ばっちりいきたい子守唄
13.深淵

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