人が自分独自の世界観を構築していくのを見ているのは楽しい。
そこにはまだ細い木の骨組みしかない。
僕は沢山のパイプで組まれた巨大な足場のすみに座って、裸足をぶらぶらさせながら眺めている。
遥か下の方で彼女が設計図を読んでいるのが見える。
立ち上がったり、しゃがみこんだり、うずくまったりを繰り返しながら薄いねずみ色にも見える藁半紙をラインや文字でぐちゃぐちゃにしていく。
いつから聞こえていたのか分からない。
鼻歌に気づいた。
彼女の声。
英語の歌。
その音符を辿るようにどこからか少女が走ってきた。
青と銀が溶け合ったような色のスカートをはいた、どこかの村娘。
少女は立ち止まると透き通るような浅葱の瞳を細めた。
そして今にも雫を落としそうな笑顔でこう言った。「 」
すぐ傍から声が返ってくる。「 」
僕がその言葉にふりむくと少年が立っていた。
黒い髪の少年に、スポットライトがいっそう黒く影を落としている。
二人は抱き合い、更に少年は「 」と続けた。
つぎに少女が口を開いたとたん、いつの間にかオーケストラの演奏に変わってしまった鼻歌が、足早に二人を飲み込んだ。
彼女は設計図を読んでいる。
床に寝そべって足を交互に上に上げ、ぱたぱたと音をさせながら鼻歌を歌っている。
彼女の声。
英語の歌。
そこにはまだ細い木の骨組みしかない。


0