「自民党、劣勢挽回へ」と、毎度のことながらアナウンサーが怒鳴り散らすように絶叫した。「えっ」と反応する。劣勢を挽回するのか、そうか、劣勢を。思い出すのは「汚名挽回論議」だ。「汚名は挽回しないだろ、それも言うなら汚名返上だろ」と手を挙げた人がいて、喧々諤々までは行かなかったが、ケンケンほどの論争を経て「じゃ、これからはオメェ、ケチもつけられたことだし、汚名返上ということにする」ということになった。じゃあ、今日の劣勢挽回はどうなるのか気になるところだが、これが調べてみると、「劣勢挽回」の場合は「勢い」を挽回するということで間違いじゃないらしい。
よく分からないが、そうらしい。でも、しかし、汚名挽回にしたって、汚名を挽回すると思っていた人はいないはず。汚名を雪ぎ名誉を挽回すると理解した人達が多かったから、いつの間にかそれで通用してしまっていたわけだ。ま、学者がおかしいと言うのだから、逆らう理由は何もない。
この幾分古びた本は「お言葉ですが」第一巻(高島俊男著・1996年文藝春秋社刊)
週刊文春に10年以上にわたって連載されたコラムの単行本。日常的に使っている言葉の誤りを「何を言ってんだ」的にあげつらう恐るべきもの。アナウンサー、新聞、果ては国語辞典まで槍玉に上げられて蒼ざめる。例えば「もろ刃の刃」っつーのを聞いたことがある。これは正しくは「もろ刃の剣」であって、これじゃ二兎の兎と同じと叱りつける。ま、論調が結構きついから、それに反発する人もいるらしいが、面白いから問題ない。同じような与太で、新聞記事のありそうな表記が「所在が確認されていない行方不明者が約・・人」
所在が確認されていないから行方不明なんじゃないかと。
「過半数をこえる」は「過半数に達する」で正しく、過半数を超えるは意味を成さない。過半数の「過」は何だ、ってな話。
こんな話が延々と続いて飽きることがない。しかしながら、たしかに仰る通りに言葉は適当にネジ曲がって、日本語本来の意味合いとか用法は混乱しているようなのだけど、実際、みんなが日常的に話している言葉なんてものは意味が通じれば問題なし程度のもの。それが証拠に、街頭インタビューなどを見ると「て、に、を、は」グチャグチャなんてのはザラで、何を言ってんだかよく分からないものも多い。「結果を出す」なんてのもあたり前になっちゃったし、ウチのねこが皿にまだいっぱい入っているのに新しい缶詰めを開けろと要求したときなんぞ、「こら、みかん、いま入っているもんを全部食べて、結果を出してから言え」などと言ってみたりする。