あたしには叶えたい夢がない・・・・
でもそれはあたしの命がもう長くないからだけじゃないんよ・・・
4年前の事故のこと・・・・このことだけは蘭華たちが心配するから病院の先生にも口止めしてもらっているんだけど・・・事故の後、あたしが病院で目を覚ましたら事故以前の記憶がスッポリと抜けていた・・・・
だから、今のあたしには事故の前までにあったと思う夢がなんなのかわからないんよ・・・
なんどか新しい夢を考えようと思ったんだけど・・・どうしても残りの時間を考えてしまって・・・・結局何も思いつかなかった・・・・
そんなあたしにも一つだけ願いがあった・・・・
第五話 運命
中型戦艦型電脳巡航機アストロ 会議室
四聖獣との戦いのあとに届いた天願の宝玉についての新情報。
新情報とはいままで天願の宝玉でなんらかの願いが叶えられたという記述はどこにも書かれてないこと、四聖獣は天願の宝玉を守るための防御システムだと言うこと、そしてその四聖獣たちによって過去の天願の宝玉の入手者の殺害や失踪が行われているかもしれない可能性。
これらの新情報をシズル・ツキミネやシンヤ・ハーフフェルトから聞かされた優希たちには新たな疑問が生まれれた。
なぜ防御システムである四聖獣が自分たちの主人のような天願の宝玉を使って願いを叶えようとしているのか。
今現在、会議室ではこの疑問を議題に話を進めていた。
「ねえ、そもそも防御システムである虎太郎たちが本体である天願の宝玉で願いを叶えられるの?私が天願の宝玉なら、そんなことさせないと思うんだけど」
杉原杏はそう言ってCCO側のシズルたちに聞く。
「杏ちゃんの言うことはわかるわ。だけど、四聖獣は生態防御システムなのよ」
「生態・・防御システム?」
杏の右隣に座っている沢渡優希が頭にはてなマークを浮かべ首をかしげる。
「ようするに生き物による防御システムっスよ優希」
「あ!なるほど」
優希の右隣に座っているグリフォン・ゼノシードが説明し、優希はそれに納得する。
「このタイプの防御システムなら本体の制限機能によりますけど、プログラムどおり動く機械人形タイプとかより遥かに自由な意思を持って動けると思います」
防御システムについて優希たちに説明するホリィ・シュタイン。
「俺が思うにあいつらの制限機能はかなり弱いものだと思うぞ。戦闘中にプログラムに支配されてる様子が無かったからな」
いつものように腕を組んで、シンヤは四聖獣たちとの今までの戦闘で思ったことを口にする。
「よく・・わからないけど、私も蘭華さんが何かに支配されているようには思えなかったよ」
「それは私も。虎太郎はどう考えてもフリーダムっていう感じだったわ」
シンヤに続いて優希と杏も四聖獣について思ったことを口にする。
「グリフォン君は?」
「俺が何回か戦った樹緑は無口なやつで・・・なんと言うか制限されているかわかりづらいやつだったっス。でも、白蛇の白弥とか言うやつはそんな風には見えなかったっス」
シズルに聞かれてグリフォンは少し考えながらそう言う。
「なるほどね・・・・だけど、彼らの願いっていったいなんなのかしら」
シズルの言う通りである。四聖獣は天願の宝玉で願いを叶えようとしている。ただ、それがどんな願いなのかはわからないのだった。
美空市 井上家
夕食が終わり、今日は聖と樹緑+白弥が後片付けをして、残りの蘭華、虎太郎、玉青は居間でゲームをしていた。
「くそ!蘭華てめぇ!!」
「ふっその程度では私に勝つことは不可能だ」
やっているのは格闘ゲームで、現在蘭華が三連勝中だったりする。
「トラ君、頑張ってね〜」
二人の後ろで見物しながらそんなことを言う玉青。
「この!くらえ!」
「そんな直線的な攻撃が当たると思っているのか?」
次の瞬間、画面にKOとでかでかと描かれる。
「これで私の四連勝だな」
「ちくしょうちくしょうちくしょう!!もう一回だ!」
「何度やっても無駄だ。お前では私には勝てない」
納得いかない様子の虎太郎に蘭華は余裕の表情で言葉を返す。
「それにしても蘭華ちゃんもトラ君も変わったわよね〜」
蘭華と虎太郎にふとそんなこと言う玉青。
「それはお前も同じだ玉青」
「そーだそーだ!」
ゲームを中断して、二人は後ろにいる玉青にそう言う。
「そうね・・・みんな変わったのは、あの日聖ちゃんと出会ってからよね」
そう言い、玉青は後片付けをしている聖の方を見る。それにつられるように蘭華と虎太郎も。
その聖はと言うとテーブルを拭きながら
「樹緑、白弥、これ終わったら蘭華たちと格ゲーでトーナメントしない?」
食洗機では洗えない大き目の鍋を洗っている樹緑と洗い終わったフライパンを起用に口と尻尾を使って拭いている白弥に聞く聖。
「・・・・・・」
「聖、俺様もか?」
樹緑は何も言わずコクンと頷いて、白弥は蛇の自分もやるのかと聞く。
「う〜ん、さすがの白弥も格ゲーはできないか〜」
「手のない爬虫類ですまないね〜柿太郎電鉄ならできるんだけどな〜」
フライパンを拭き終わり樹緑から鍋を渡される白弥。
「じゃあ今回は審判および解説ということで」
「それなら得意分野だぜ!コホン、あーあーおおっとぉ!樹緑選手いきなりドロップキックをかましてき――いで!」
最後まで言う前に白弥は樹緑にデコピンをくらわされる。
「・・・・・」
「あはは、樹緑のドロップキックって想像できないよ」
もう何度も見ているやりとりに笑いながら聖は
それにしてもみんなと会ったのは四月だから・・・・一緒に暮らし始めてもう半年になるんだ・・・・
そう思いながら聖は四聖獣とであった日のことを思い浮かべていた。
四月
病院帰りに担当医の言いつけを破った結果、いろいろあって自業自得な目に遭った聖は家の近くの公園で水晶玉を見つけた。
それを手に取った瞬間
「おい」
聖は後ろから誰かに声をかけられた。
「!」
このとき聖は声の主を見て
こんな町中でコスプレしている人がいるなんて・・・え〜と中華系のなんかのキャラクター?
などと思ってしまった。
「手荒な事はしたくない。おとなしくそれをこちらに渡してもらおうか」
その朱色の髪をした長身女性は右耳についている勾玉のようなピアスに右手を伸ばし、一瞬のうちに剣にしてそれを聖に向けた。
「!!?」
いきなり剣を向けられ、聖は水晶玉を抱えながら尻餅をつく。
「もう一度だけ言う、それをこちらに渡してもらおうか」
「えと・・・その・・・あの・・・」
いきなりのことでパニック気味な聖。まあ、いきなり刃物を向けられたら当然だろう。
だがそのとき
きゅるるるる〜〜
などと言う音が聖に剣を向けている女性の腹部から聞こえてきた。
その音を聴いた瞬間聖と女性の間に微妙な空気が流れる。
しばらくの沈黙の後、女性は剣を引いて苦しそうな表情して
「おのれ・・・・兵糧攻めか・・・」
方膝をついてそう言った。
いやいやなんでそうなるんよ!?ていうかつっこんでいいのかな?
方膝をついている女性を見て聖はそう思いながら立ち上がり
「あの・・・」
女性に近づいてみる。
「ふっ・・・なんてざまだ・・・こんな空腹程度に私が敗北するとはな・・・」
そう言って剣で体を支えよろよろと立ち上がる女性。
「よくわからないけど・・・お腹がすいているなら家にくる?」
聖にとってこの一言はなんとなく言った一言だったが
「!!、いいのか!?」
女性にとってはまるでそれは救いの一言のような反応だった。
「うん、あたし一人暮らしだからたまには誰かと食べたいな〜って結構思っていたから。それに、困った人を見捨てるのは器の小さい人間だってお兄ちゃんが言ってたもん」
女性に手を差し伸べ聖はそう言う。
「一人暮らし?きさ――あなたのような年端のいかない少女が?」
聖の手を取り、立ち上がった女性はふと思った疑問を聞いてみる。
「まあ、あたしにもいろいろあるんよ。あと、はいこれ」
苦笑してそう返し、聖は片腕で抱えていた水晶玉を女性へと渡す。
「よくわからないけど、あなたの物なんでしょこれ」
「あ・・うむ・・・・・ありがとう・・・というべきか」
ずれていた話を戻されて、女性は少し困った表情をして水晶玉を受け取る。
「じゃああたしの家すぐ近くだから行こう」
「いや・・・待て・・」
自分の家に帰ろうとする聖に女性は引き止める。
「?、どうしたの。あ!もしかしてあなた大食いとか?それなら問題ないよ、あたしの家、大人が4〜5人増えても食べていける財産はあるから。ちなみに財産はお兄ちゃんのい知り合いが管理にしてくれていて――」
「少し待てと言っている」
聖が財産管理について語っている途中に女性は手を向けて制止させる。
「なに?」
「実は・・・その・・・私一人ではないのだ・・・」
言いづらそうに女性はチラッと近くの茂みを見る。
そこには
「は〜〜ら〜〜〜へった〜〜〜〜〜〜」
白を基調としあちこちに虎の模様のようなものが入った格好をしたツンツン頭の少年と
「携帯食料もとっくにそこをついているわ・・・・」
銀髪を高い位置でリングで二つに分け、残りを三つ編みにした青を基調とした格好をした女性と
「・・・・・・・・・・」
「しっかりしろ〜俺様もさすがにフラフラだぜ・・・・」
全身深緑色の格好をした人物と喋る黄緑色のリングがついた白蛇がいかにも力尽きていますよ〜と言う感じでへたり込んでいた。
「あはは・・・見事に力尽きてるね・・・」
やや苦笑気味で聖はへたり込んでいる三人+一匹を見た。
「すまないがあの連中もいいだろうか・・・・」
すまなさそうに女性は聖に軽く頭を下げる。
「気にしなくてもいいよ。じゃあチャイナのお姉ちゃんはあの人たち連れてきてね」
「チャイ――私のことか・・・承知した・・・・」
チャイナのお姉ちゃんと言われ微妙な反応をした女性は、聖に言われたとおり茂みでへたれ込んでいる連中のところへよろよろと寄っていくのだった。
それから聖は公園で出会ったコスプレ一行(聖視点)を家に招き入れ、夕食を人数分作った。
言うまでないが、コスプレ後一行はものすごい勢いで夕食をたいらげ全員おかわりをするほどであった。
その様子を、一人自分のペースで食べながら聖は見ていた。
夕食後、聖は後片付けが終わると朱色の女性に呼ばれてコスプレ一行と居間で向き合っていた。
「え〜と・・・・なにか?」
さすがに四人+一匹に一斉に視線を向けられ聖は少しひるむ。
「そんなに怯えなくてもいい。私たちはただ礼をしたいだけだ」
「飯うまかったからその礼だぜ!」
「そうそう、気に入らないやつをひき肉にするってでもOKよ〜」
「・・・・・・・」
「お〜い、何か言った方がいいぞ〜」
コスプレ一行はそれぞれそう言う。
「お礼?」
お礼をすると。
「そうだ。とりあえず私たちにできることならなんでも言ってくれてかまわない」
「まあ簡単に言うとお願いを一つ叶えてあげるってこと」
聖にそう言う女性二人。
「お願いかぁ」
頭のくせっ毛をピコピコさせながら考えるしぐさをする聖は、しばらくすると願いを思いついたのか少しもじもじし始めた。
「あのね・・・」
「なんだ」
もじもじさせながらやや上目遣いで聖は
「家族に・・・なってほしいな・・・・・」
自分の願いを言うのだった。
それを聞いた瞬間、コスプレ一行は顔を見合わせて
「家族か・・・・・」
「俺はいいぜ!こいつの作る飯うめぇし!」
「まあ、いいんじゃない」
「・・・・・・・」
「だからなにか言えっての!」
そう言いあうコスプレ一行。
結果
「あなたがそれでいいなら私たちはそれでかまわない」
「本当!」
パーーっと嬉しそうな表情になる聖。
「まあ、家族になるとなれば私たちについていろいろ説明しなければいけないわよね〜」
「・・・・・・」
「そうだな〜」
銀髪の女性がそう言い、全身深緑の人物が頷き白蛇が便乗する。
「うん、お願い。そろそろあたしもいろいろつっこみたいし」
聖がそう返事すると、朱色の髪の女性が説明をし始めた。
女性が説明したのは異世界や電脳空間について、聖の拾った水晶玉は天願の宝玉といって、今の文明ができる前に栄えていた超高度先史文明のロストテクノロジーということ。そして、自分たちはその天願の宝玉の四聖獣という防御システムだということ。ちなみに聖がなぜ天願の宝玉が公園に落ちていて、なぜ四聖獣たちが空腹状態だったのかと聞いたところ
「聞かないでくれ・・・・」
「いろいろあったんだぜ・・・・」
「・・・・・・・・・」
「この場合沈黙はしかたないよな・・・」
「まあ実際は宝玉と私たちが別々に転移してしまって、その間にいろいろトラブルに巻き込まれて・・・・・・まあいろいろあってお腹を空かせながらこの世界たど着いたわけなのよ」
と四聖獣全員やや暗い表情になってしまった。
細かな説明も終了したあと聖は
「う〜んあたしにはよくわからないけど・・・・とりあえずいろいろつっこみたいんだけど、いい?」
四聖獣にそう聞いてみた。
「・・・・いいだろう」
朱色の髪の女性が少しためらいながらもそう返す。
「えとね・・・いまさらなんだけどなんで蛇が喋っているのかなぁ・・・・」
「グサー!蛇だって喋るときくらいあるさ〜」
喋れることをつっこまれた白蛇は首を横にブンブン振りながら聖に言い返す。
「あと、自己紹介まだだったよね」
「む・・・そういえばそうだな」
「食うのに夢中になってたから気づかなかったぜ!」
自己紹介がまだなことを四聖獣に言う聖と空腹のあまりそのことを忘れていた四聖獣たちだった。
「コホン。ではあらためて、あたしは井上聖」
聖が自分の名を名乗ると
「私は四聖獣の朱雀だ」
朱色の髪の女性がそう名乗り返してそれに続いて
「同じく四聖獣の白虎だぜ!」
「四聖獣の青竜で〜す」
「・・・・・・・玄武・・」
「俺様は見たまんま白蛇っていうんだぜ」
他の四聖獣たちも名乗る。
「あ!だから四聖獣なんだね。でも、それって本名なの?」
四聖獣ということを納得した聖だが、また新たな疑問が浮かび口にした。
「いや、私たちのこの名前はデータ名だ」
「つーか俺たちって天願の宝玉の一部になる前は普通の人間だったんだよな」
「え!?」
朱雀が四聖獣たちの名前はデータ名と言い、白虎は自分たちは元は人間だったと言い、白虎の言うことに聖は驚きの声を上げる。
「まあ正確には〜私たちは元は人間だったんだけどなぜか意識だけ天願の宝玉に移されて、この器に入れられたのよね〜」
胸元に手を当て青竜は説明する。
「意識だけ移されたってことは・・・身体は?」
「とっくに無くなっているわね。人間数億年も生きれないし、今の文明ができる前に私たちの文明は跡形も無く滅んでるしね保存されていても白骨で見つかるのが関の山よね〜」
身体について聞かれて、やれやれと言う感じで言う青竜。
「ごめんなさい・・・」
「気にするな。それに私たちは四聖獣になる前のことはほとんど忘れているからな」
「そうだぜ!聖が気にすることなんて無いぜ」
「まあ、名前まで忘れてしまっているのは少し痛いわよね〜」
「・・・・・・」
「なんかその方が都合がいいって顔しているなお前」
少し俯いてそう言う聖に四聖獣たちはそれぞれ思った言葉を返す。
「だったらあたしが名前つけていい?」
「「「「「!?」」」」」
突然の聖の言葉に四聖獣たちは驚く。
「やっぱり家族として一緒に暮らすなら、データ名じゃなくて名前で呼び合った方がいいとあたしは思うんよ」
続けて聖は「だめ・・・かな?」と言い、四聖獣たちはしばらく顔を見合わせて
「あなたの言う通りだ聖」
「家族になるんだったら家族としての名前がほしいぜ!」
「そうね〜可愛い名前を付けてくれると嬉しいわ〜」
「・・・・・・・・・」
「俺様にはかっこいいのを頼むぜ!」
聖の考えを受け入れる。
「ありがとうみんな。それじゃあね・・・・・」
考えを受け入れてくれた四聖獣たちにお礼を言って聖は四聖獣たちの名前を考え始める。
しばらく四聖獣たちを何度も見回した結果
「うん、この名前で決定!」
手を叩いて聖は言う。
「それじゃあ発表するね」
四聖獣の視線が聖に集まる。
「まずチャイナのお姉ちゃんから」
ああ、自分のことかと頷く朱雀。
「今日からあなたは蘭華ね。その朱色と白色の格好を見てたらそう思ったんよ」
「らん・・・か・・蘭華・・・か・・・気に入った、ありがとう聖」
蘭華という名を気に入り、蘭華はお礼を言う。
「聖〜俺は俺は〜」
腕をブンブン振って白虎が聖を急かす。
「あなたは虎太郎。虎に太郎と書いて虎太郎。ちなみにとらたろうじゃなくてこたろうだからね」
「わかったぜ!」
腕をさらに強く振り了承する虎太郎。
「でっ次にセクシーなチャイナのお姉ちゃんね」
「うっふん」
セクシーと言われて投げキッスをする青竜。
「そのセクシーなお姉ちゃんには玉青って名前が似合うと思うんよ」
「たま・・お?・・・・・いいわねその名前まさに私にぴったし!」
目をキラキラさせて玉青は嬉しそうな様子である。
「後は俺様たちだな」
「・・・・・・・・」
玄武の首にマフラーのように巻きついている白蛇はそう言い、玄武は無言をで頷く。
「う〜んあなたたちは結構悩んだんよ〜」
「・・・・・」
「それで俺たちの名前はなんていうんだい?」
首を左右に揺らす白蛇。
「えとね、謎の生命体みたいなあなたは樹緑で、白蛇のあなたは白弥って言う名前でどう?」
「おお!びゃくやって名前格好いいぜ!それに謎の生命体って、最高だぜ聖!こいつにおにあ―――ふべ!」
白弥が最後まで言い終わる前に樹緑はデコピンを白弥にくらわせる。
「あはは、ナイスツッコミだよ樹緑!」
グッジョブと親指を立ててそう言う聖は続けて
「さて、みんなの名前も決まったことだしこれからよろしくね!」
満面の笑みでそう言うのだった。
私たちが井上聖と言う少女に名前を貰ってからこの生活が始まった。
それはとても穏やかな日々で、悪意の持った者から天願の宝玉を守るためだけに存在している私たちにとってこのような経験は初めてのことだ。
これが、家族と言うものなのだろうか・・・だとすると、家族とはすごく暖かいものなのだな・・・
時間は私たちが気がつかないうちにゆっくりと流れていく・・・・
そんな中、虎太郎がわがままを言ったり、玉青が妙な趣味に走ったり、樹緑と白弥がこの世界の警察と言うところに連行されたりといろいろなことがあった。当然だが、私蘭華もさまざまな経験をした・・・その中には忘れたいものもある・・・・
聖がもうすぐ夏が来ると言っていたころ、私はふと天願の宝玉のことを聞いてみた。
私の記憶の中では天願の宝玉の力を知ったものは皆、自らの欲望に走り、その結果私たちの手によって闇に葬られることになることが多かった。
だが、聖は違っていた。
彼女は
「あたしの願いはもう叶っているから・・・・もうこれ以上の望みはないんよ。みんなが・・家族が一緒にいてくれるだけで嬉しいんよ」
と言って天願の宝玉の力は不要だと言う。
彼女はさらに
「まあそれ以前にあたしは・・え〜と、ガーディ・・アンだっけ?じゃないし、他の世界に必要な四つ宝石を探しに行きようがないんよ」
続けてそう言う。確かにそれはそうだ。この世界には電脳空間が存在しない・・・ということはエナジードライブを持っている生物は限りなく少ないはずだ。
しかし、玉青が言うには聖には微弱だがエナジードライブの反応があるらしい。おそらく本人はそのことに気づいてはいないのだろう。私たちは彼女の気持ちを尊重してこのことは黙っておくことにした。
静かに時間が過ぎていく・・・・きっと幸福とはこういうことなのだろう・・・
でもそれは残酷な現実によって打ち砕かれる。
季節が真夏を迎えたある日
いつもと変わらないその日、なんの前触れも無く聖は倒れ、胸を押さえて不自然な呼吸をしている。
「聖!?聖!!!」
その様子を見た虎太郎は聖に駆け寄る。
「下手に動かすな虎太郎!玉青、病院に連絡を」
「わかったわ!」
虎太郎に注意し冷静に玉青に指示を出す蘭華だが、内心はかなり動揺していた。
聖の体のことは聖本人から
四年前の事故の後遺症が今でも残っていて、時たま体調不良を起こすことがあり、そのため病院に通っている。
病院に行く理由を聞いたときにそう言われていた。
けれど今の聖の様子は明らかに異常である。
「はあっ・・・・は・・・はっ・・・・はぁ・・・・」
「・・・・・・聖」
「しっかりしてくれよ聖!いまタマ姉さんが病院に電話してくれてるから辛抱してくれ!!」
不自然な呼吸をしている聖のそばで樹緑と白弥は成す術がなかった。
玉青が病院に連絡してすぐにサイレンと共に救急車が井上家に到着した。
手際よく救急車に担ぎこまれた聖に蘭華と玉青が付き添い、救急車は美空市民病院へと向かうのだった。
救急車が病院につくと聖は治療室に運ばれ、蘭華と玉青はそれを見送っていると
「あの、少しいいですか?」
一人の女性医師に声をかけられた。
「あなたは?」
突然声をかけられ、少し警戒しながらそう言う蘭華。
「私、井上聖ちゃんの担当医の梶村といいます。失礼ですが、蘭華さんと玉青さん・・・ですよね」
ほんの少し迷いながら聖の担当医と名乗った梶村と言う医師はそう蘭華と玉青に訪ねる。
そのことに内心驚きながらも蘭華と玉青は
「はい、そうです」
「なぜ私たちのことをわかったのですか?」
警戒を保ちつつ答える蘭華と、目を細めてなぜ自分たちのことを知っているのかを聞いてみる玉青。
「前に聖ちゃんが教えてくれたんです。お兄さんの知り合いが自分のことを心配してくれて一緒に住んでくれているって。だから、そのときに私が聞いた外見的特長とあなたたちがぴったしだったわけです」
「なるほど」
納得した蘭華は、自分たち四聖獣のことをうまくごまかしてくれた聖に感謝しつつ
「それで、私たちになにか?」
用件を聞く。
「聖ちゃんの状態について話しておかなければならないことがあります。少しついて来てくれませんか」
梶村医師はそう言って近くの個室を指差す。
「はい」
「わかりました」
蘭華と玉青は了承し、梶村医師についていくのだった。
個室に入り、梶村医師と蘭華,玉青は向かい合うように座る。
「余命・・・四ヶ月?・・・」
いま目の前にいる聖の担当医である梶村医師の言葉に蘭華は耳を疑った。
「それっって、どういうことですか?」
あくまで冷静を装って玉青は聞く。
「やはり、ご存知なかったようですね・・・・」
カルテをめくりながら困った表情で梶村医師が言う。
「詳しく聞かせてもらえませんか?」
「お願いします」
そう言って蘭華と玉青が真剣な表情で梶村医師に聖がいまどんな状態なのかを問う。
二人の真剣な表情を見て梶村医師は決心して口を開いた。
「お二人は聖ちゃんが四年前の列車事故での唯一の生き残りだと聞いていますか?」
「ええ」
「それで聖ちゃんは事故の後遺症で時々体調を崩すから病院に通ってるって言ってましたけど・・・」
そのときのことを思い出しながら蘭華と玉青は言葉を返す。
二人の言葉を聞いた後、梶村医師はなるほどと言い、続けて
「確かに後遺症が残っているから聖ちゃんにはここに来てもらっています。ですが、後遺症と言うのはただの体調不良と言う生易しいものではないのです。きっと聖ちゃんは新しい家族のあなた方に心配をかけたくないと思って・・・・・」
「嘘を・・・ついたわけですね」
深刻な顔をして聖が蘭華たちに話した事故の後遺症についての相違点を述べ、蘭華は聖が自分たちにそのことを偽って話していたことに気づくのだった。
「それで先生、聖ちゃんの事故での後遺症ってそんなにひどいんですか?」
なにしろ余命四ヶ月なほどだ。かなりひどいものだと玉青は思い、梶村医師に聞いてみる。
「はい・・・聖ちゃんの後遺症は原因不明の心肺機能の低下なんです・・・」
「「!!!」」
心肺機能・・・当然心臓も肺も人間が生きていくのに必要な器官である。聖はその機能が低下しているのだ。
そのことを知った蘭華と玉青は驚きの表情を隠せなかった。
「お気持ちはわかります。正直なところ聖ちゃん4年も生きられないはずだったんです・・・・でも聖ちゃんはいまも頑張って生きています!私たちは聖ちゃんのことを諦めません!ですから、ご家族であるあなた方も諦めないでください!」
曇った表情をし始めた蘭華と玉青に梶村医師は強くそう言う。
その言葉に二人は胸を打たれ、それと同時にある考えも浮かぶのだった。
個室を出た後に蘭華と玉青は梶村医師から
「聖ちゃんにはしばらくの間検査入院してもらうことになると思いますので、他のご家族の方にもお伝えください」
聖についてそう言われ、二人は聖の状態と自分たちの考えを虎太郎、樹緑、白弥に伝えるために真っ直ぐ井上家へと帰るのだった。
「ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!なんだよそれ!!」
井上家に帰ってきた蘭華と玉青の話を聞いた虎太郎は瞳に涙を浮かべながら叫んだ。
「なんとかならねぇのかよ!!ヒール系のエフェクトとかでよ!!」
蘭華たち全員にエフェクトで聖の身体を直せないか聞く個太郎。
「すまない・・・私は治癒系のエフェクトは使えない」
「・・・・・・ごめんなさい」
「俺様たちも無理なんだ・・・・」
「・・・・・・・・・」
蘭華、樹緑、白弥はそれぞれ答えるが玉青だけこめかみを押さえ苛立ちの表情を浮かべている。
「どうした玉青?」
そんな玉青を見た蘭華が話しかけると
「なんでもないわ・・・・ただ、頭に少しズキッとしただけ。それと、私は一応治癒エフェクトを使えるけど聖ちゃんの身体を直すほどの力はないわ」
こめかみを押さえながら玉青はそう答える。
「じゃあどうするんだよ!このままじゃ聖が!聖が!!」
「「・・・・・・」」
下を向いて泣きながら虎太郎は拳を強く握りそう言い、樹緑と白弥は沈黙する。
「方法ならある」
蘭華のその言葉を聞いた瞬間、俯き加減だった虎太郎たちが蘭華の方を見る。
「すでに玉青には話したことだが、私たちには一つだけ聖を助ける方法がある」
「なんだよ!もったいぶらずに言えよ!!」
蘭華に突っかかる虎太郎と
「おいおい、蘭華の姐さん!それって!」
「・・・・・・・・」
考えを察した白弥と樹緑。
蘭華は虎太郎を手で制止し
「察しがいいな・・・そうだ、我々で天願の宝玉を使い聖の身体を治す」
自分の考えを言った。
「・・・・・・」
「しかし、宝玉の防御システムである俺様たちができるのか?」
もっともな疑問をぶつける白弥。確かに、天願の防御システムである四聖獣が本体を使うことができるかどうかは怪しい。
「俺は賛成だぜ!聖が助かるなら何だってするぜ!!」
「私もよ。幸いいま私たちにかかっている制限機能はKill設定でのエフェクトの使用不可くらいだから、後は好き勝手やってもいいってことじゃない?」
虎太郎と玉青はそう言い、蘭華の考えに賛同して玉青はついでに白弥の疑問に答える。
「まあそもそも聖の家族になったときから私は誰かを殺めることはしたくないと思っている」
「そうね・・・・聖ちゃんには血なまぐさい臭いをかがせたくないものね」
「そうだな・・・・・聖には迷惑をかけたくねぇよな」
「・・・・・・・・・」
「ああ・・・・・」
聖の家族として人殺しはしない。そう決心する四聖獣たち。
そして、この日から四聖獣たちは天願の宝玉を使うための四つの宝石を集め始めるのだった。
白熱した格闘ゲームのトーナメントが終わり、井上家の明かりが消えた。
ちなみに優勝したのは聖である。
時刻が深夜1時になり聖が熟睡しているころ、井上家の屋上では四聖獣がプロテクトアーマー(PT)を着て集合していた。
「さて、今夜の役割分担だが」
全員を見て、話を切り出す蘭華。
「虎太郎と玉青で南方世界周辺を、私は西方周辺を捜索してみる。樹緑と白弥は聖のそばで待機していてくれ」
「わかったぜ!」
「・・・・・了解」
「こっちはまかせてくれ」
「私もいいけど・・・蘭華ちゃん大丈夫?」
それぞれ返答し、玉青は蘭華に言う。
「なにがだ」
「なにがだじゃないわよ。蘭華ちゃんの転移エフェクトは危なっかしいんだから、前にそれでひどい目に遭ったの忘れたの?」
やれやれと玉青は過去に蘭華が転移エフェクトを使ったときのことを思い出す。
「う・・・大丈夫だ・・・なんとかする」
玉青に過去の失敗を指摘され、蘭華は眉間にしわを寄せる。
「まあ、迷子になったら連絡してね〜」
「む・・・承知した。ではCCOの奴らに気をつけながら行くぞ!」
ニコニコしながらそう言う玉青に返答し、蘭華は全員に先の戦いのきっかけを作った罠に気をつけろと指示しながら行動開始を宣言する。
宣言後、瞬く間に四聖獣はそれぞれの役割に移るのだった。
CCOセントラル本部
「はあ・・・・まったく面倒なことになったものだ」
そう言いながらシンヤは目的地へ続く道を歩く。
その右隣で
「シンヤ君が原因じゃないですか」
ホリィがシンヤにつっこみ、左隣で
「まったくっス!」
グリフォンが愚痴る。
なぜ三人がCCOセントラル本部に来ているのかは少し時間をさかのぼる必要がある。
三時間前
前回の四聖獣たちとの戦いから数日。
シズル率いるアストロクルーは相変わらず最後の宝石である蒼天の風神石の捜索を続けていた。
しかし
「あれから何日かたったけど・・・四聖獣はおろか蒼天の風神石の反応も見当たらないわね」
ブリッジ内でメインモニターに分割されて移っているさまざまな世界を艦長席に座って見つめながらシズルは言う。
「ですね。さすがに相手側も警戒していると思いますよ」
手元のモニターをいじりつつお茶を飲むホリィ。
「そうね、同じ手が通用するほど甘い相手じゃないものね」
シズルの言う通り四聖獣は同じ手を使って見つけられるほど甘い相手ではない。だからこそシズルはこの先どうするか悩んでいるのである。
「それにこちらは宝石が本物かどうかもわかりませんし」
「そうなのよね〜天願の宝玉があちらにある限りこちらには集めた蒼天の風神石が本物なのか偽者なのかわからないのよね」
椅子に背を預けてシズルはそう言う。
そんなときブリッジのドアが開き
「ただいま戻りました」
「ただいまっス」
捜索に出ていたシンヤとグリフォンがブリッジに入ってくる。
「おかえりですシンヤ君、グリフォン君」
二人が入ってきたことに気づいたホリィは二人にそう言い
「おかえり。二人ともどうだった?」
シズルは捜索結果を聞く。
「だめですね」
「全然見つからないっス。こっちの広範囲センサーはどうっスか?」
捜索結果を伝え、グリフォンはシズルたちのほうの結果を聞き
「こっちもだめ。反応無しよ」
グリフォンとシンヤと同じ結果を伝えるシズル。
「そうっスか・・・」
やっぱりと言う表情をしながらそう言うグリフォン。
「さすがにそろそろまずいですよね。このままでは四聖獣の手に蒼天の風神石がわたるのも時間の問題ですよ」
「ええ、それだけは何とか避けないといけないわね」
「でもどうするんスか?」
この不利な状況をどうするか悩むシズルたち。
ただ、シンヤだけは違っていた。
「・・・・さすがにそれはないか・・・・・でもあの人のことだから・・・・・・・だがもしそうだったら・・・この事件は・・・・・」
一人でぶつぶつ言いながら何かを考えている様子のシンヤ。
その様子を見たグリフォンは
「さっきからなにぶつぶつ言ってるんスかシンヤ」
ジト目でシンヤを見てそう言う。
「ん?・・・・まあ・・なんだ・・・気にするな」
「いや気になるっスよ!」
ビシッとつっこむグリフォン。
「シンヤ君、言いたいことがあったらはっきり言ってくださいよ〜」
少々ふくれ面になっているホリィがシンヤにそう言うと
「だから気にするなって言っているだろ。この仕事をしているとたまに思うことだからな」
いつもの調子でシンヤは言葉を返す。
「それは初耳ね。上官としては気になるわね」
「もったいぶらずに言えっス!」
ついにシズルまでシンヤにそう言いだす。
「はあ・・・・まったく。言えばいいんだろう」
ため息をつき、嫌そうにそう言うシンヤに一同は頷くと
「ただ、俺の師匠が個人的にいろいろとロストテクノロジーを集めたり物騒なもの発明したりしたりしていたから、天願の宝玉も集めていたものに入ってたりしたんじゃないかと思っただけだ」
嫌そうな顔でそう説明した。
「師匠って訓練校時代にシンヤ君が度々愚痴っていた方ですよね」
「まあな」
「でもその師匠って言う人と行ったアバランチマウンテンに凍土の地震石があったんだし、もしかしたらそのとき天願の宝玉を持っていたんじゃないかしら」
シズルがそう言うとシンヤは
「それはないと思いますよ。もしそうなら、あのとき凍土の地震石を持ち帰ったはずですから」
4年ほど前のことを脳裏に浮かべながら答える。
「確かにそうっスね。天願の宝玉を持っているなら普通持って帰るっスよ」
「シンヤ君、どうして持ち帰らなかったのですか?」
疑問に思いホリィはシンヤに質問する。
「さあな・・・なんか興味なさそうっだったし、だからじゃないのか」
遠い目をしてシンヤは答える。
「そうですか」
「結局、天願の宝玉についての情報は無しっスかぁ」
残念そうなホリィとグリフォンにシンヤは
「俺は天願の宝玉の話しをしたわけじゃないだろ」
もっともな言葉を返す。
「ああでも、実際に調べたわけじゃないからな・・・・」
腕を組み、今度はそんなことを言い出すシンヤ。
「調べる?」
「シンヤ君、それはどういうこと?」
グリフォンとシズルが疑問に思い、口にする。
「あの・・・シンヤ君、もしかして前に言っていていた・・・」
「ああ、師匠がセントラル本部にこっそり作った”俺専用データベース”のことだ」
シンヤがそう言った瞬間、ホリィは「その話本当だったんですね・・・」と言い苦笑いして
「こっそりって・・・・CCOの本部にっスか!?俺が知る中で最高レベルのセキュリティの場所っスよ!!」
「とんでもないわね・・・・」
グリフォンとシズルは驚きの表情を浮かべていた。
「俺はもう慣れた・・・・・はあ・・・」
ため息をついてシンヤは言い
「じゃあシンヤ君、いまからグリフォン君と一緒にそこに行ってきてくれる?」
当然のようにシズルはシンヤに命令する。
「え・・・・了解しました艦長」
一瞬嫌な顔をしたが上官命令で仕方なく了承するシンヤ。
「頑張ってくださいねシンヤ君、グリフォン君」
「まったくシンヤは世話がかかるっス」
手を振るホリィとため息混じりのグリフォン。
「お前が言うなグリフォン。それとホリィ、お前も一緒に来てもらうぞ」
「私もですか!?」
あくまで冷静に言うシンヤとシンヤの言ったことに驚くホリィ。
「俺が高性能な機械を動かせると思うか?」
「すいませんでした」
実のところシンヤ・ハーフフェルトと言う少年はアムコン以上のコンピューターなどの電子機械類は一切動かせないのである。
「俺は戦力外通告っスか・・・・」
「お前動かせるのか?」
「無理っス。データベース用のコンピューターはちゃんと使い方教えてもらってないとフリーズさせてしまう可能性があるっスからね」
即答するグリフォンだった。
「まあ、シンヤ君は将来データーベース用のコンピューターの使い方を覚えないといけないかもね」
「う・・・そのときはそのときです」
ちなみにデータベース用のコンピューターというのはCCOが所有するコンピューターのなかでもっとも高性能かつ大容量でその名の通りいろいろな情報やデータが保管されている。ただ、高性能故に扱いが難しく操作マニュアルが頭にちゃんと入っていないと操作ミスでフリーズしてデータを破損させてしまう恐れがあるのである。
余談だが、アストロでデータベース用のコンピューターを動かせるのはシズルとホリィだけである。
「では艦長、行ってきます」
「いってらっしゃ〜い」
グリフォン、ホリィとともにブリッジを出るときにシンヤはシズルにそう言い、シズルは笑顔で手を振りつつもう片方の手をコートの内側に伸ばす。
だが
「あと、ブリッジ内で人参をかじるのはやめてください」
「ギク!・・・・」
シンヤの指摘でコートの内側に伸ばしていた手を引っ込めるのだった。
「とほほ・・・・」
時間を現在へ戻す。
「それでシンヤ、そのシンヤの師匠のデータベースはどこにあるんスか?」
各支部の何倍の大きさもあるCCO本部を歩いている時間が結構経ったころグリフォンはシンヤに聞いてみる。
「黙ってついてきては見たのですが、私もそろそろ教えてほしいです」
何とかシンヤの歩幅に合わせてついてきているホリィが言う。
「もう少しだ。・・・・もう少しなのだが・・・・」
「どうしたんですシンヤ君?」
「顔色が悪いっスよ」
青い顔をしているシンヤにそう言う二人。
「いや・・・気にするな・・・おそらく初めてのお前らはこの後いまの俺以上の顔をするだろう・・・・」
「「?」」
グリフォンとホリィはまだこのときシンヤのこの言葉の意味がわからなかった。
しかし、7分53秒後その言葉の意味を知ることになる。
その7分53秒後
「ついたぞ」
車椅子のようなものが描かれた扉の前でシンヤは止まる。
「ここって・・・・」
「障害者用トイレっスね・・・まさかと思うっスがシンヤ・・・」
グリフォンはとても嫌な予感がした。
「・・・・今お前が考えている通りだグリフォン・・・・ここが入り口だ」
「え・・・ええ!!?」
両手で顔を隠し頬を真っ赤にするホリィ。
「何でトイレが入り口なんスか!?」
「ふっ・・・お前はまだ恐怖を知らない・・・・行くぞ!」
グリフォンの質問を無視して意味深な言葉を述べながらシンヤは周囲に人がいないことを確認してトイレの扉を開け中へと入る。
「あうう・・・恥ずかしいです」
「複雑な気分っス・・・・」
ここにはじめてくる二人はそれぞれそう言いながらシンヤに続く。
トイレの扉を閉め鍵をかける。
「いいかお前ら、ここからは一人ずつデータベースのある場所へと向かう。俺の後に続け!」
「私、女の子としてなにかが終わった気がします・・・・」
「とりあえずこれ以上のツッコミはやめておくっス・・・・・」
シンヤの指示に耳を傾けずつホリィとグリフォンはそう言う。
「まず便座に腰をかける。そこから左側についているウォシュレットなどのボタンを素早くビデ弱、停止、おしり大、停止、乾燥弱、停止、乾燥大、停止と押し、便座の温度を1、9、3と動かし、最後に洗浄大を押すと」
洗浄大のボタンを押した瞬間、シンヤは光に包まれ水と共に便器へと流されていった。
その光景を見たホリィとグリフォンは顔面蒼白になった。
「「・・・・・・」」
しばしの沈黙の後
「じゃあ・・・・行くっスか・・・・」
「はい・・・・・」
その後、洗浄音が二回鳴りトイレの鍵が閉から開になった。
ホリィとグリフォンが次に見た光景は見たこともない機材ばかり置いてある結構広めの部屋だった。
「ここは・・・・」
「こんな機械みたことないです・・・」
二人があたりを見渡していると
「何をしているお前ら!こっちだ!」
先に着いたシンヤは奥にある巨大なスクリーンの前に立ち、ホリィとグリフォンを呼ぶ。
それに気づいた二人はシンヤの下に駆け寄る。
「シンヤ君、ここって・・・・」
「ここは師匠が”勝手に”作った秘密基地だ」
あたりを見渡しながらそう言うホリィにシンヤはそう答える。
「確かに秘密基地みたいっスね」
スクリーンの近くにある機械に手を伸ばしながらグリフォンは言う。
「下手に触るなよグリフォン。師匠の発明はなにが起きるかわからないからな」
「!!、了解っス・・・・」
シンヤにそう言われて触ろうとする手を引っ込める。
「それでホリィ、動かせそうか?」
スクリーンの前にある椅子に座り、手元のキーボードとモニターに触れるホリィ。
「少しまっていてください・・・・それにしても埃一つかぶってないですね」
「ああそのことか。師匠がいうには、いつ使うかわからないから自動で掃除してくれる機能がこの部屋についてあるらしいぞ」
「便利っスね・・・・」
そんな話をしているうちにホリィはデータベース用のコンピューターの起動させていた。
起動後、メイン画面らしきものが映り
「ええと・・・検索ですね」
モニターに触れながらキーボードを叩き検索画面を出す。
「基本的には普通のデータベース用のコンピューターと変わらないですね・・・・ああそういや東方支部の長官室のは艦長が誰でも使えるように改良したと言ってましたっけ・・・・私的にはあっちの方がいいんですけど・・・」
などとホリィは愚痴気味な言葉を言いながら検索スペースに天願の宝玉と打ち、Enterキーを押す。
その瞬間、ものすごいスピードでいろいろな文字がスクリーン上に流れ、すぐに止まる。
「ここからさらに絞込み検索をかけますね」
蒼天の風神石と打ち、再びEnterキーを押す。
押した瞬間にパッと画面が変わりなにやら文字と画像が映し出される。
「え・・・・」
その画面を見た瞬間、ホリィは思わずそう言ってしまう。
「どうしたホリィ」
「なんなんスかあの遺跡は!」
シンヤとグリフォンはホリィにそれぞれそう言う。
「世界名はアネモイ、数十年前までは人間も住んでいたそうですけどみんな他の世界に移住してしまったようです。え〜と、この遺跡はヒュペルボレイオス遺跡と呼ばれ超高度先史文明時代の建造物のようです」
シンヤとグリフォンが読めない文字を翻訳しながら二人に伝えるホリィ。
「アネモイ・・・・・まさか・・・」
なにかを思い出したようにシンヤが呟く。
「シンヤ、知っているんスか?」
シンヤの言葉を聞いたグリフォンが思わず訪ねる。
「この世界、前に師匠と一緒に模擬戦をした世界だ!それにこの遺跡、上からの画像じゃわからなかったがおそらく師匠の探検に付き合った結果、俺が迷子になった遺跡だ!」
「迷子っスか・・・・」
シンヤ自身は真面目に言っているつもりだが迷子になったと聞くとなぜか間抜けに思えてくるグリフォンだった。
「お二人とも、蒼天の風神石はこの遺跡の中にあるようです。ですが・・・これが本物かどうかは書かれていません」
「いや、師匠が書いたことなら本物だと思うぞ」
「どっちでもいいっス!とにかくこのことを早くシズルに知らせて優希たちと現場に向かおうっス」
本物かどうかわからないというホリィにシンヤは自分の師匠を信じて本物と言い、グリフォンは早く現場に行きたいと言う。
「そうですね・・・では遺跡内の地図をコピーして帰りましょう」
画面を下にスクロールさせながらホリィはそう言い、ポケットから携帯電話のようなものを取り出し、キーボードと同時操作して地図の画像データをコピーする。
「これで完了です。・・・私的にはこのコンピュータ内のデータに興味があるんですけど・・・シンヤ君少し見てもいいですか?」
コピーを完了した後、ホリィは携帯電話のようなものをしまい、興味本位でシンヤに聞いてみる。
「たぶん見れないと思うぞ。師匠は重要なデータをロックしているって言ってたからな。パスがないと見れないそうだ」
「ふっふっふそのくらいこの私にかかれば―――」
「ちなみに、ハッキングとか言うやつをしようとするとこの部屋の不法侵入者用システムによって・・・・」
「ごめんなさい」
「わかればいい。じゃあ帰るぞ」
そんなやり取りをしつつホリィはコンピューターをシャットダウンさせ、シンヤは部屋の右奥に向かって行く。
シンヤの隣を歩いているグリフォンが
「まさかと思うっスけど、また便器からっスか?」
嫌な顔をしながらシンヤに聞く。
「何を言っている。帰りはお前が転移エフェクトを使えばいいだろ。それと、一応いっておくが、そのうちこの部屋に転移エフェクトで入ろうとは考えるなよ。入った瞬間不法侵入者用のシステムが作動してしまうからな」
「て言うかそんな物騒そうなものがあるなら俺はもうここには来たくないっスよ・・・・」
そう言いながら三人は少し歩くと広い場所に出た。
「ではグリフォン君、お願いしますね」
「了解っス」
ホリィに返事をした瞬間、グリフォンの足元に緑色に光る円が出現する。
シンヤとホリィがその円の中に入ると、三人は光りに包み込まれるとアストロへと転送されるのだった。
美空市 商店街
本屋で聖は一ヶ月前ほどに知り合って友達になった迅宮寺明と本屋の中にある休憩所で談笑をしていた。
今話題になっているのは明の学校生活についてである。当然ながらガーディアン関係のことは秘密にして明は今の自分の状況を聖にこう話した。
明には沢渡優希と杉原杏と言う友達がいて、いつも仲良く学校生活を送っている。
ある日、ドッジボールの選手に優希と杏が選ばれた。そして練習のため明とはあまり一緒にいられなくなってしまった。
明は二人と一緒にいたいと思い、選手に立候補するが運動オンチなため却下される。
ドッジボールの練習のせいで一緒にすごす時間がだんだん短くなっていき、明は優希と杏の二人と距離が開いてしまったんだなと思っているのだった。
それを聞いた聖は
「なるほどね〜明ちゃんは体力がなくて運動オンチだから戦力外通告されちゃったんだね」
「・・・・まあ、そういうことだよ」
苦笑しながら明はそう言い、続けて
「でも、最近は次はおいてかれないようにするために体力をつけようと頑張っているんだ」
と真剣な表情で言うのだった。
「明ちゃん頑張ってね。あたしもかげながら応援してるから」
「ああ」
聖の応援の言葉に返事をする明だった。
実はそんな明と聖の様子を遠くから見ている人物がいた。
「聖ちゃんはお友達とお楽しみ中っと」
銀髪で変則的な髪型をして青を基調としたPTを着た女性、そう玉青である。
玉青は聖が外出時はたいていこのように遠くから見守っているのである。
だが、そんな玉青に思念電話がかかってくる。
『蒼天の風神石はアネモイのヒュペルボレイオス遺跡にある』
『!!、あなたはいったい!!』
突然の出来事に驚く玉青だが、相手の方はそう告げると思念電話を切ってしまったようだ。
「いったいなんなのよ・・・だけどこれが本当なら・・・・・」
歯を噛み締め苛立つ玉青。しかし、すぐに冷静になり他の四聖獣に思念電話をかけるのであった。
優希たちと四聖獣・・・・・・最後の宝石である蒼天の風神石を巡る決戦の日はすぐそこまで来ていた。
城に着いたグエンは意外なことにすぐに王に会えた。
グエン自身は報酬目当てのものが大量にいると思っていたので時間がかかると思っていたが実際はグエン一人だけだった。
王に自分以外の人は立候補しなかったのかと聞いたところ
黒の魔王に怖気ついて誰も立候補していないということだ。
これはチャンスだと思ったグエンは王に自分に任せろと言う。
それを聞いた王、というよりその場いた従者も目を丸くしてグエンを見た後、王はグエンに一本の剣と黒の魔王の城への地図を渡すのであった。
グエンはそれを受け取るとさっさと城を出て黒の魔王の城へと向かうのであった。
しかし、このときグエンはまだわかっていなかったのだ。黒の魔王というもの存在が世界にどれほどの影響を与えているかを。
それでもグエンの旅は始まった。
長い長い旅が・・・・
紅の勇者物語より抜粋
あとがき
ふう、UPまで時間がかかってしまいました。
今回は一話冒頭の続きで聖の身体の状態についてが明かされる回でした。
え?他にもいろいろ明かされただろですって?
まあ、そうなんですが・・・・
とりあえず次回は大決戦でまた長くなりそうです。
では、今回はこのくらいで失礼します。