2006/4/18
「夢のかけら」
人混みの中、親愛なる彼と歩道橋の上で抱き合った。
街の喧騒が静かに聞こえ、
彼は去って行った。
歩道橋の柵を越えて
左手で柵の一本を握り締め、
あたしは
一度も振り向かず足早に歩き遠のいて行くその人に
右腕を真っ直ぐに伸ばして大きく手を振っている
地下鉄の入口のプレートには
『東京で一番寂れた駅』
と書かれていた
薄暗い階段を下りてゆく
安っぽい蛍光灯がまばらにしかなく
其処はとても薄気味悪かった
目の前に人が誰もいない
だけど、
あたしのすぐ後ろにぴったりと誰かがついて来ている
その人は時々笑っている
気持ち悪いと思って早歩きをしても
歩調を合わせ
その影はあたしの背後にぴったりと付いたままで
笑いながら
お尻と胸を
一度ずつ触ってきた
閑散とした、人の気配の全く無い薄暗いホーム。
見上げる路線図が複雑すぎて、
行き先を探し出せない
行き先は右?
それとも左?
券売機の前で路線図を眺めているとアナウンスが聞こえた。
同時に両方側から車両が滑り込んできて、
それが最終便だと告げられる
飛び乗るなら、
今しかない。
そう思いながら、
車両のドアが閉じていく様子を見つめる。
同時にそれぞれ逆の方向へ走り出す地下鉄車両。
あたしは
券売機の前で、それを見ていた。
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