仕事から帰ってから、買い物して、夕飯の支度をするまでの時間に、
一冊小説を読みました。
重松清さんの「その日の前に」。
映画化もされた…のかな。
連作短編集です。
一番主軸になるのは、本のタイトルでもあるお話で、
ガンで死にゆく妻と、夫(僕)と息子たち(中2と小5)の姿が描かれています。
「その日」というのは、もちろん、「その日」。
「その日の前に」「その日」「その日のあとで」と、この話は3作になっています。
そして、この話と交錯して、別の物語も描かれています。
小学校のとき、嫌われ者の同級生が突然不治の病で遠くの病院に入院してしまう。
先生の提案で、みんなで寄せ書きをしてクラス委員がお見舞いに行くことになったのだけど、
なんせ嫌われ者だったので、みんな何を書いていいのか悩んでいた…。
クラス委員としてお見舞いに行かなくてはいけない主人公の目線と、その主人公がオトナになって、痴呆症の祖母を見舞う目線で描かれた話。
また別の話では、主人公は母子家庭の高校生。
母親が突然テンション高く「今日、ストリートミュージシャンに出逢って、ファンになった!」と帰ってくる。
でも、母はついでのように言う、
「先月の健康診断で再検査の項目がいっぱいあって、胃カメラ飲もうかなって思ってる」と。
それから、毎日のようにストリートミュージシャンの歌を聴きに通う母。
その一方で、母の病気は、ただ事じゃないんじゃないか?という不安が広がっていく…。
不安から逃避したいキモチと、向き合わなくちゃと思うキモチでいてもたってもいられない主人公は、そのストリートミュージシャンに逢いに行き…。
他にも、幾つかの短編があって、それが1つの物語になっていくんです。
わたしは、「小さな世界」という曲の中で、
♪その日がきたら その日がきたら 全部消えちゃうのかなあ?
と、歌っていたり、
もっと前に作った「あなたにおくる歌」という曲でも、
♪いつかその日はくるでしょう きっと必ずくるでしょう
もしも願いが叶うのなら あなたに伝えたい
と、歌っていたりします。
ううん。
いまのこぐまっちの頃にも、「その日」について、漠然と考えたりしていた気はします。
どうなっちゃうんだろう? それはいつなんだろう?、と。
でもやっぱり、当時のそれと、今のわたしが感じるそれとは、全然違うんだろうなと思うわけで。
この小説を読んで、こぼれてしまう涙の理由は、いまのわたしにしか分からない。
そうして、小説の中の台詞の一つ一つが、すごく等身大に、日常的に、わたしの想いとシンクロして、いろんな思い出を連れてくるのです。
そう。
去年のクリスマスに逝ってしまった同級生。
そして、やっぱり、父。
余韻に浸るヒマもなく、夕飯の支度をしに降りました。
むすめっちが「夜練にいく」と言いました。
「絶対約束の時間に帰りなさいよ」
「わかったわかった」
「それから…わかってるよねえ?」
「え? なに。ああ、わかってる、ブラックにならない、でしょ?」
だいじょーぶ、とかなんとか言って、部屋を出て行きました。
まったくもー、と、思いながら、なんか、胸の奥がググっとなりました。
『うまく言えないけど、母ちゃんの役目は「いる」ことなんだと思う。
「いる」と「いない」の差はとんでもなく大きいけど、「いる」をキープしてしまえば、そこから先のことはどうだっていい。俺はもう、母ちゃんのことを絶世の美女だなんて思ってないし、どっちかっていうとブスのほうだよな、と、認めているし、母ちゃんの優しさはご機嫌次第なんだということもわかっているし、要するにそれほど母ちゃんに期待しているわけじゃないけど、でも、とにかく、母ちゃんは「いる」からこそ意味がある。いてくれないと困る。
なにがどう困るか予想もつかないぐらい、困る。いてほしい、絶対に。これからも。』
ストリートミュージシャンが出てくる話の主人公の話の中で、そんなくだりがあって。
こぐまっちが、「ママは、かわいい」って昔言ってたなーとか思い出して。
でも、うん、そういうことなんだよなあーって、すとんと入ってきて。
ブラックにならない、でしょ?
と、むすめっちが自分のこと「ブラック」って言うのが、笑えて。
ならない、とか言って、絶対、なっちゃうに決まってんだけどなーと、思って。
もういいかげん、そのやりとりは勘弁して、と、毎晩思うけど、でも、それもやっぱり、きっと、いつかは、「シアワセだった」って思うんでしょう。
その日がきたら。絶対。
そんなことを思いながら、台所に立ちました。
カラアゲを揚げました。
そうそう。一部の方にしか分からないと思いますが、
この小説の中に出てくるストリートミュージシャンの名前がね、
「カオルくん」でした。
と、それは、おいといてー。
わたしがどんな「その日」を迎えるのか、まだわからない。
余命がわかってる方がいいのか、突然の方がいいのかも、やっぱりわからない。
でも、いつかは、絶対やってくる「その日」。
どうしたらいい?
その答えはないです。
でも、この小説の中で、ある登場人物が頼もしく、その答えを、言います。
(ネタバレになるから書きません。)
アラフォー世代にオススメな一冊です。

0