

華藤えれな(絵 佐々木久美子)/幻冬舎コミックス(2006・9、10月)
【あらすじ】両親を亡くし、大学三回生の時に天涯孤独となった桐嶋水斗は、日本心臓外科界の権威である長山に、体の代償として援助を受け医師となった。長山の為に働かされ、逃れたいとの思いが募る日々の中、NYから敏腕外科医の樋口が赴任してくる。長山から逃れNYへ行く為に、樋口を利用しようと近づくが、彼の天才的な医療技術と人柄にやがて惹かれていく。
しかし、長山の呪縛から逃れられず、長山との肉体関係を樋口に知られてしまった水斗は、病院の窓から身を投げる。一命はとりとめたものの記憶を失い、幼児退行してしまう。そんな水斗を育てることを決意した樋口と北海道に移り住み、穏やかな日々を過ごしていたが、長山の影が忍び寄り…!?
私は下巻が出るのを待って、上下巻を一気読みしたんですが、1ヶ月前に先に上巻のみをお読みになったお姉様方、
「よくぞ1ヶ月もお待ちになりましたねっ
」という心境です。
私だったら、上巻があんな終わり方をして、1ヶ月も待たなきゃいけなかったら気が狂うぅ(←おバカ…笑)
新人腐女子の私は修行がまだまだ足りんので我慢できんのですっ(爆)
もう、それぐらいおもしろかったです!!
『しっかりした文章力』『世界観構築』『丁寧な人物描写』がありつつ、
「こんなにも萌えさせてくれるなんてぇぇ(絶叫)」
何に萌えたかと言うと、幼児退行をしてしまった水斗に萌えました。
ショタには萌えない私ですが、何らかの理由から幼児退行をしてしまう成人男性には萌えるんです!
人を、狼、パンダ、馬などと呼ぶ水斗に萌えました

部屋で、ズボンと靴下を履くのを嫌がった水斗に萌えました

指や口を汚しながらチョコレートを頬張る水斗に萌えました

その他、たくさんの場面で萌えました
…が!!!
真面目で切ないお話です。
樋口に、
「死んだら、この指で解剖して下さい」と言い、長山に抱かれるたびにウイルスが体を蝕む感覚に怯え、父親の形見の骨格標本を抱きしめる―――そんな水斗の痛みや苦しみ、孤独、恐怖、樋口に対する想いはいかばかりだったか。
長山から逃れる為とは言え、樋口を利用しなければならず、さらにはそのNY行きが長山に阻止された時の気持ちはどんなだったか。
トドメとばかりに、長山に抱かれている所を樋口に見られ、樋口を守る為に「自分は長山の愛人である」と言わなければならなかった時、彼の心にどれほど残酷な痛みが宿った事か。
一見クールで、出世のために長山の愛人となった打算的な男…そう周囲から思われていた水斗が、樋口の見ている前で窓から飛び降りた時、彼のうちに宿る悲しみが痛いほど伝わってきました。
さらには、幼児退行し、幼児人格となった水斗に語りかける、本当の水斗の想いが、幼児人格である水斗の口から伝えられ、そのたびに樋口が水斗の本心を知っていきます。
せつないです!泣けてきます!
自分に触ると樋口まで汚れてしまう…そう言って樋口の手を拒む水斗があまりに可哀想で(涙)
自殺未遂をし、幼児人格が現れてから、本当の水斗は北海道の冷たい湖の底にいます。
父親が死んだと言うその湖は、きっと水斗が心安らかにいれる場所だったのでしょう。
樋口が望んでいるのは湖の底にいる『あの人』であって、今この体にいる自分ではない…と思う幼児人格の水斗がかわいそうでせつないです。
作者があとがきで書いておられますが、この作品のテーマは
『魂の再生』なんですよね。
長山に肉体関係と引き換えにして援助を受け、医師への道を突き進んだその瞬間から、水斗の魂は肉体から切り離され、冷たい湖の底に横たわったままだったのかも。
いや、けっして水斗の魂は分離されはしなくて、むしろ肉体という牢獄から逃れる事はゆるされなかったから、長山に抱かれるたびにウイルスが増殖してしまう感覚に怯える事に。
だからこそ人間らしい感情が希薄になってしまって。
そうしなければ生きていくことは難しかったと思います。
だけど、長山から逃れ、もう一度自分の人生を取り戻したいと思った水斗に与えられた運命は残酷で…。
『一番愛する人に一番見られたくないものを見られてしまった。』
そうして今度こそ本当に水斗は湖の底に。
樋口の愛と丁寧なケアによって、分離されてしまった2つの水斗が1つになり、魂の再生へと向かうお話です。
題名がとてもうまいですね。
『シナプスの柩』
柩に閉じ込められたシナプスは、やがて水斗の元へ還っていきます。
様々な感覚がシナプスという橋で渡され、水斗は人間らしさを取り戻します。
こういうお話を読むとほんと腐女子に覚醒してよかったと思います♪

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