
水原とほる(絵 稲荷家房之介)/海王社(06・7月)




【あらすじ】両親の離婚で離れ離れになった弟・達也と十年ぶりに再会した会社員の陸実は、父親が死に、身寄りをなくした学生の彼と同居することになった。陸実は兄弟の失った時間を取り戻そうとするが、その晩、突然達也に暴行されてしまう。それ以来、夜ごと一方的に陸実を犯しながらも、翌朝は別人のように優しく接してくる達也。陸実は達也のその不安定さを放っておけなくなり―。
私個人の意見としては、男同士の場合は、『近親相姦』って問題ないと思っています。男同士は子供ができませんから。そもそも、近親相姦がタブーなのは、あくまで生物学的な問題だと思うのですよ。その生物学的問題が【社会】を持つ人間にとっては、『社会学的問題』としてタブーとなるわけで。でも、その『社会学的問題』としてのタブーがタブーでなくなった時、男同士では『生物学的問題』がないわけですから、なんら問題はなくなるわけです。
前置きが長くなりました。本作は、ただの
『近親相姦モノ』ではなくて、そこに
『ドメスティックバイオレンス』が追加トッピングされることによって、
『水原らしさの大爆発』が起こっています(笑)ひぃぃぃ〜〜〜さすがです!水原先生っ

本作を読んだのは何ヶ月も前なんですが、いまだに
【痛さ】が私の内部でじくじくしています(笑)痛い〜痛いよ〜!っていうか、
「ゴルフボールは痛いと思いまーす!」イチモツにピアスってのも痛いと思うけど(ぼそっ)「挿入して抜けなくなったらどうするんだろう?」と変なところを心配してしまう私です(笑)
ずっと離れ離れだった弟の達也と、10年ぶりに一緒に暮らすことにした陸実。しかし、同居したその日になんと
【強姦】されてしまいます。しかも、抵抗しては打たれ、翌朝の陸実の身体には暴行された跡が点在し。ですが、そんな酷い暴行を加えた本人は、昨晩とは打って変わって殊勝な態度と言葉で謝罪してきます。
「ひどくしてごめんな。でも、俺、ずっと兄さんに会いたかったから。その気持ちは嘘じゃないんだ。それだけは信じて……」
これって典型的なDVですよね。ただただ乱暴を働くだけじゃなくて、優しい一面も見せると言う。DVを受けながらなかなか加害者を見捨てられない多くの女性達は、きっとこういう加害者の一面があるからこそ離れられないんだろうなと思います。そこがDVの問題を解決しにくくしている要因でもあると思います。その辺をこの作品はよく描いていて、案の定陸実は、達也を見捨てられず同居を続けることになります。しばらくは兄弟として穏やかな時間が流れますが、ちょっとしたきっかけでまた達也の暴行がはじまります。
「いいか、逆らったり逃げたりしたら許さねぇからな。俺はヘドロのような恨みつらみを、自分でもいやになるほど抱えてる。吐き出す相手は誰でもいいんだよ」と言った直後に、
「ねぇ、俺、ここにいていいよね。ずっと兄さんのそばにいたい。もう一人になるのはいやだ」と言ってしまう達也の不安定さと孤独。そして、それを見捨てられない陸実の優しさと孤独。
陸実の欠勤と身体に残る痣を心配した同僚の家に逃げ出した陸実を待っていたもの―。それは、
『輪姦』という制裁。ひぃぃ〜〜〜悪友に兄を輪姦させながら平然とご飯を食べちゃう達也、怖すぎます

というか、そこまでのことさせるのかなぁ…って思いましたよ。陸実の同僚が陸実を抱いたらおそらく烈火の如く怒るでしょうけれど、自分が手配した悪友に輪姦させるのはOKという…複雑な心理状態ですね。しかも、この出来事を通して、陸実も達也を“そういう意味”で愛しい存在であると深く認識します。もはや常識では計り知れません。
思うに、
『陸実は達也に父性を、達也は陸実に母性を見出し』、お互いに自分に欠けていたそれぞれのものをそれぞれに求め、与え与えられることによって充足を得たのでしょう。そういう意味では、たとえ男同士であろうが兄弟であろうが、彼らにとっては
『魂の半身』と寄り添うと言う、自然な行為なんだと思います。陸実は、自分が本当は達也を真っ当な道に戻さなきゃいけない責任があるのに、自分こそが達也を求めてしまうことに深い罪悪感を持っていますが、私は、彼らは一人孤独に天国に行くよりは、二人仲良く地獄に堕ちてほしいです。そもそも、世間的にはタブーとされている同性愛や近親相姦は、ほんとに許されざる行為なんでしょうかねぇ。
今回なんといっても、陸実が達也を求めていって、壊れていく過程の心理描写が好きでした。元々壊れていた達也より、実は相当根深い孤独を抱えていた陸実なのかもしれません。幼い頃、手を離してしまった可愛い弟に対する罪悪感と孤独は、陸実の表面上には表れていなくても、体内にくすぶり続けていたのでしょうね。
稲荷家さんの絵も本当に素晴らしくて、稲荷家さんが描かれたノベルズの表紙の中で、私が知っているものでは一番この表紙が好きです。絡み合ってけっして解ける事のない陸実と達也がよく表現されていると思います。

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