現地時間1月20日正午すぎ、日本時間21日午前2時5分、第44代アメリカ大統領としてバラク・フセイン・オバマ氏の宣誓式が始まった。右手をあげたオバマ氏が左手を置く聖書は148年前リンカーンが大統領就任式で使用した聖書で、アフリカから連れてこられた黒人奴隷の子孫であるミシェル夫人が掲げ持つ。引用した写真で見られるように赤革の小さな聖書で、かなりボロボロのように見える。歴史的にも貴重なこの聖書はオバマ氏のリクエストだったようで、ミシェル夫人が宣誓式会場へ入場する時から、終始大事後生に持っていた。アメリカ史上初のアフリカン・アメリカンの大統領が就任するこの歴史的瞬間に立ち合おうと人口60万のワシントンに、黒人を中心に200万以上の民衆がつめかけた。議事堂前は熱狂に包まれ、アメリカ国民のみならず、全世界が注視する就任式だった。
その中で、むしろオバマ氏ひとりが冷静なように見えた。名スピーカーとしても、その演説のうまさでも注目されるオバマ氏だが、民衆の熱狂に水を差すような沈着冷静な就任演説だったと思う。
むしろ、その19分におよんだ演説は「国があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国に何をなしえるかを考えよう」と訴えたJ・F・ケネディの就任演説に近いものがあったと思う。そう言えば、オバマ氏をブラック・ケネディと呼ぶジャーナリストもいる。アフリカ系の有色大統領にリベラルな改革を期待するところからきているのだろう。
オバマ新大統領の就任演説は、むしろ「わたし(大統領)が何をしてくれるかではなく、あなた自身がなにごとかをしよう。そのことによって、このアメリカを作り直そう」と国民を鼓舞するものだった。大統領が独裁者のように権力をたてかざし世界を支配するのではなく、民主主義の先進国としての役割を果たすべくこの苦難を乗り越え、世界に貢献しようと言う、至極まっとうなスピーチだったと思う。
日本では演説草稿は官僚が作るらしい。アメリカではスピーチ・ライターというプロがいる。ブッシュが演説で使った「悪の枢軸」という言い方も、スピーチ・ライターが考え付いたいわばコピーライトだった。そのことによって、戦火は拡大し、アメリカは国際的協調を二の次にして戦争モードに突入した。スピーチ・ライターの役割はかくも大きくなってしまった。つたえ聞くところによれば、就任演説のほとんどをオバマ新大統領は自分で書いたという。もちろん、スピーチ・ライターとの合作という前提の上でだ。
アメリカ国民のみならず、全世界を意識してある意味、原点還りをしたかのような演説で新大統領が訴えたかったことは、民主的国家の主人公はわたし(大統領)ではなくわたしを含む国民ひとりひとりだし、その発意、努力、働き、貢献が国を大きくし、アメリカを立ち直らせる力となるのだと言うことだっただろう。そして、そのことを「冷笑の政治」から、「希望の政治」にすることだと言いたかったのだろう。
(写真はMSNのニュース配信より引用。オバマ新大統領の宣誓式の場面)

0