「長崎ぶらぶら節――NAGASAKI TRIP(拾遺)」
世相で粗相
これだけ書いてきても、書ききれないことがたくさんある。メモのようなかたちで、書ききれなかったところを拾い上げ長崎トリップをいいかげん閉めよう(なにしろ、わずか5日間の旅をもう1週間にわたって書いている!)。
1.
中居さんの話では「花月」にはさだまさしさんもたまにお見えになるらしい。で、ボクも少し似てますでしょう?と言ったら、仲居さん、なんと言ったと思います?
「いえ、あなたさまの方が、ずっと男前でいらっしゃいます」だって! 座ぶとん5枚くらいあげたかった。
この「花月」は、お客様は最後に玄関のところで鉦、太鼓で粋に見送られる。きっと芸者遊びの名残りなんだろう。で、ボクは送られただけでなく、そこで「お返し」をしたのだ。きっと、前代未聞、「花月」始まって以来の椿事だったかも知れない!
ボクは愛八姐さんの「長崎ぶらぶら節」を意識して、その鉦・太鼓に合わせて即興のポエトリー・リィディングをしたのだ!
やさしかった中居さんが、きょとんとして青ざめていた!
花月 風月 過激に 満月/月も落とすよ シラノのような/とてつもない オイラのホラで!/ブラリブラリと 丸山あたりで ソラ ホラ 大ぼら 言ってみたもんね!
きっぷはいいよ 切符を買って/ブルートレインで やって来た/寝台のって 眠ったままに/(いづこへ行くと問われれば)オイラは 答える ブラリブラリと そら ホラ あそこ あの世行き!
三日 寝込んで 食べにきた/三日 煮込んだ 豚の角煮/フラリフラリと 病のあとに/ラフティ 身体にいいもんね/ブラリブラリと これまた コラーゲン/脂肪も 死亡! うまく 話も煮詰まった!
長崎 丸山 遊廓あたり そぞろ歩けば 思案橋/ 何を思案の 風俗案内 その名も ツーリスト・インフォメーション!と シャレこんで/ぶらりぶらりと 長崎も 夜の巷は/歌舞音曲の 歌舞伎町?
フーゲツのJUN・作『ネオ・長崎ぶらぶら節』((c)Jun Emori)
ボクは、大笑いをしながら提灯をもった女将さんたちに見送られて上機嫌だった。
探してみたら「花月」に公式ホームページがあった。寛永19年(1642年)創業以来の大変革かもしれない!
雰囲気は味わえます。→
http://www.ryoutei-kagetsu.co.jp
2.
「花月」に行く前に、ボクは小島町の方に昇って行き、なつかしい大楠や、坂や、石段を舐めるように眺めてきた。そして、幼い頃のボクが眺めていた風景を、愛しんできたのだ。それこそ、その長崎湾までなだれ落ちるような風景は、ボクのたましいの原郷なのだ。
かって長崎湾になだれ落ちるように、見えた風景もデパート、ホテルなどの建築群が建ち並び、さすがに海はわずかしか見えなくなっている。
首を左に向ければ、正面の丘の上には、海星高校の校舎と聖堂が見え、そのすぐとなりには活水女子学院の校舎が見える。その下あたりにオランダ坂がある。デジカメのバッテリーが切れ、その風景は今回撮影できなかったが、ボクの目には焼きつけて来た。じつは、小島町などの丘の尾根つたいに行くと、下をあるくより早く着く。それは、幼い頃歩き慣れた道で、ボクは決して忘れなかったどころか、幼い頃から東京に来ても、夢の中で反復して歩いていた「夢の中の街」そして「夢の中の道」でもあるのだ。
3.
「花月」のあと寺町に墓参に行く折に、偶然見つけたジャズバーに行ってみた。まだ、飲み足りなかったし、もう少し長崎の夜を楽しみたかった。『さろまにあん』という名前の店だった。で、「花月」の帰りですと言ったら、いや、自分も行ったことなくてと言われた。で、このマスター(って一人でやってるんだが)実は長崎でも古参のテナーサックス吹きだと分かった。
『さろまにあん』は、はじめてだったが、ボクはいくつかの長崎のジャズ喫茶を知っている。マスターに教えてもらった地方出版で刊行された『哀愁の街にJAZZが降る』(浅賀俊作・著/オフィス・タック刊)という本を帰り際にメトロ書店でもとめたが、その本を読むと、ボクは3軒ばかり長崎市内のJAZZ喫茶を知っているようだ。
「マイルス」、「JEY」、「けやき」である。しかし、あのちいさな街にこんなにJAZZが流れていたとは知らなかった。その本によれば、なんと48軒も掲載されているではないか!
気になる店名もたくさんあった。たとえば「フラワー・チャイルド」とか。いまも営業しているが代替わりして、昔日の面影はないとか(82年の長崎の水害で地下にあったため水没したらしい)。佐世保の「ダンビ」(ダウン・ビート)にも行ってみたかったなぁ! ここはもう、佐世保のドブ板通りにあったような米兵相手の店だったからだ。
いやいや、おそれいりました。さすがに、進取の気性に富む長崎であります。この街で育っても、充分不良になれたかもしれません(笑)。
(NAGASAKI TRIP市内編・完)

0