「お久しぶりです、アンヌ・ルイーズ。」
私はそう言って、彼女の右手にキスをした。
彼女は、私の後ろにいる ダニーの姿を見ると、輝いた笑顔をうかべた。
「・・・ダニエル・・・ダニー・・・・お久しぶりね・・・・!」
いささか 緊張した面持ちで、ダニーは彼女の右手を取り、私を行動を真似ようとした。だが、驚いたことに、アンヌ・ルイーズは、彼を抱きしめて右頬と左頬にキスをした。親しい者同士の挨拶である。
アンヌは、鳩が豆鉄砲をくらったかのような 驚いた表情をしているダニーに向かって、言った。
「・・・・だって、私たち、初対面じゃないし・・・・もう お友達でしょう・・・?
1年ぶりだけど・・・ダニー・・・とても大人びたのね・・・・」
その後ろで、エド・ロスチャイルドが、わざとらしく 咳ばらいをした。
「アンヌ・ルイーズ・・・・あなたは、いささか ダニーに親しすぎる態度をとっていないかい・・・・?それが、新婚の夫を傷つけるとは、考えていないらしい・・・・」
だが、「新婚の妻」は、動じることなく、夫に言った。
「・・・・あら・・・!
だって、あなたは確かに私の夫だけど・・・・私にとっては、いつまでも「いたずら好きの、幼馴染のエドワード」だわ・・・・!
・・・・わかる・・・?「情熱的じゃない」けど、そんな「穏やかな」愛し方だって、あるのよ。
殿方って、ちっともわかっていないのね・・・!」
私は、思わず 笑った。
「・・・・エド・・・これは、奥方に一本 取られたね・・・・!」
数日後の夕食の日、私たちは、ダニーの22歳の誕生日を祝った。
ダニーは、恐縮していた。
なぜなら、その日の昼間に、アンヌ・ルイーズがわが家の台所を貸しきって、彼のために手作りのバースディー・ケーキを焼いてくれたからである。料理人のピエロも、そんな高貴な身分の夫人が、料理をするなんて、思ってもみなかったらしく、台所の隅で、呆然とたたずんでいた・・・・。
アンヌ・ルイーズは、ダニーを弟のように思っているらしかった。
「・・・ダニー・・・半年で、経理の資格を取ったんでしょ・・・?すごいわ・・・!
・・・・それで、22歳になったら、やってみたいことは、決まっているの?」
その言葉に、彼は私を見ながら、小さな声で言った。
「・・・・あの・・・・運転免許を取ろうと思って・・・・」
「・・・ダニー・・・・!」
私は、思わず 驚きの声を上げた。これは、決して彼の考えに反対しているのではない。「問題」があるのだ。
エド・ロスチャイルドが、その「問題」を指摘した。
「おい、ダニー!・・・・まさか、ベンツで免許を取るつもりじゃないだろうな・・・・?」
そう・・・・わが家には、ベンツしかないのである・・・・。
注. 「アメリカでの運転免許取得」
それぞれの州によって、やり方が違う。
ダニーが住んでいる カリフォルニア州では、筆記試験と、自分が運転する車での実技試験があるだけである。
したがって、「ベンツ」という高級車で試験を受けることは、考えにくい。

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