2005/12/1
●1.以下は、「医心方巻30」からの転記:
【蘖米】(30-9ab)
以下担当:高田、01/10/12
〔訓読〕
本草に云く。味苦、毒無し。寒中を主どり、気を下し、熱を除く。
陶景注に云く。此れは是れ、米を以て蘖(薛+子)と為すのみ。別の米名に非らざる也。その米を末にし、脂に和して面に傅くれば、亦た皮膚をして悦沢せしむ。
蘇敬注に云く。蘖(薛+子)は生うる。之を理するを以て名ずけざるなり。皆な当に可生の物を以て之を為すべし。陶は称わく、米を以て蘖(薛+子)と為す、と。其の米、豈に更に能く生ぜん。
崔禹が云く。味、少しく苦く、冷、毒無し。気を下し、熱を去る。乳と合わせ粥と作し、之を食せば面色を益し、年を延ぶ。
和名、以称乃毛也之。
〔現代語訳〕
『(新修)本草』にこうある。味は苦く、毒はない。中の冷えを治し、気をおろし、熱を除く。
陶弘景注にこうある。これは米から作ったモヤシにすぎず、特別な米の名ではない。その米(もやし以外の胚珠部分)を粉末にし、脂と混ぜて顔に塗ると、皮膚をつやつやにする。
蘇敬注にこうある、もやしというのは自然に生える物であり、加工した物についての名ではない。芽生える物は皆もやしをつくるのだ。陶弘景は米からもやしを作ると言うが、その米がどうしてまた芽吹くことができようか。
『崔禹錫食経』にこうある。味は少し苦く、冷し、毒はない。気を下ろし、熱を除く。乳にまぜて粥にして食べると顔色がよくなり、長生きする。
蘖米の和名はイネノモヤシ。
●2.以下は、「唐慎微『證類本草』大豆・赤小豆〜」からの転記。
以下担当:久保輝幸、03/6/12
【釈読】
唐本注云。以大豆為芽{薛+木}、生便乾之。名為黄巻。用亦服食。
食療云。巻{薛+木}長五分者、破婦人悪血良。
食医心鏡。理久風湿痺、筋攣、膝痛。除五蔵胃気結聚、益気、止毒。去黒痣、面{黒+干}(1)、潤皮毛。宜取大豆黄巻一升、熬令香、為末。空心、暖酒下一匙。
(1)大観本草、{皮+干}に作る。
【訓読】
唐本注に云う。大豆を以て芽{薛+米}(1)を為し、生ずれば便ち之を乾す。名づけて黄巻と為す。亦た服食(2)に用いる。
食療に云う。巻{薛+米}の長きこと五分なる者、婦人の悪血(3)を破るに良し。
食医心鏡。久しき風湿痺、筋攣、膝痛を理す。五蔵の胃気(4)、結聚するを除き、気を益し、毒を止む。黒痣、面{黒+干}を去り、皮毛を潤す。宜しく大豆黄巻一升を取り、熬りて香せしめ、末と為す。空心(5)に、暖酒にて一匙を下す。
(1){薛+米}:{山+(薛-艸)+米}に同じ。『字彙』「{山+(薛-艸)+米}、今{薛+米}と作る」(『大漢和』9:931)。{山+(薛-艸)+米}:1.もやし、2.かうぢ、3.かける。芽が種子を破つて出る。(『大漢和』8:930)。芽{薛+米}:めばえ。(『大漢和』9:561)
(2)服食:1.衣服と飲食 2.食物や薬を服用する。のむ。くふ。伏食。3.道家の養生法。丹薬を服用すること。(『大漢和』5:1041)
(3)悪血:{(病-丙)+於}血的一種,是指溢于経脉外,積存于組織間隙的壊死血液,又叫“敗血”({(病-丙)+於}血:是体内血液{(病-丙)+於}滞于一定処所的病症)(『中医名詞術語詞典』)
(4)胃気:1.泛指胃腸為消化功能。胃気主降,在消化功能上主要和脾気相配合。『霊枢』五味篇指出「五臓六腑皆禀気于胃」,人以胃気為本,意即消化機能在一定程度上代表病人的一般抗病能力,説明胃気在人体的特殊重要性。故在治病時,歴代医家都重視保護“胃気”,所謂:“有胃気則生,無胃気則死”,強調対腸胃機能衰弱的人在処方時要尽量避免用苦寒瀉下,有損于胃気的薬物。
2.指脉的胃気,脉以胃気為本,正常人脉象不浮不沈,不急不徐,従容和緩,節律一致,称之為有“胃気”(『中医名詞術語詞典』)
(5)空心:1.うつろになった木のしん,2.空腹(『大漢和』8:648)
【現代語訳】
『唐本注』にこうある。大豆を発芽させて、すぐに乾燥する。これを黄巻といい、服食に用いる。
『食療(本草)』にこうある。5分まで伸びたモヤシは、女性の古血を取り除くのによい。
『食医心鏡』に、以下の症状の治療法がある。慢性のリウマチ、ひきつけ、膝の痛みを治し、臓腑の気のつまりを取り、気力を補い、毒を下し、ほくろ、顔のアザを去り、皮膚を潤す。黄巻1升を香りよく煎り、粉末にする。空腹時にぬる燗の酒で一匙飲む。
●3以下は、「ことばの溜め池 (2000年)[8月1日〜8月31日迄]」からの転記:
「蘖(もやし)」
室町時代の古辞書『運歩色葉集』の「毛部」に、
蘖(モヤシ) 米。麥。〔元亀本351B〕*実際は、「薛」の下は、「米」と書く。
蘖(モユル) 米。麦。〔静嘉堂本422E〕
とある。標記語「蘖」の読み方は、元亀本が「もやし」、静嘉堂本が「もゆる」としている。その語注記は、両書とも「米・麥」という。これは、現代でも豆類・麦などの種子を水に浸し、筵に巻いて包み、日光を遮った苗床に播いて、発芽させた食材をいう。『下學集』広本『節用集』はこの語を未収載にする。『節用集』類では、天正十七年本『節用集』に、「蘖(モヤシ)」〔草木下37ウB〕と易林本『節用集』に、「蘖(モヤシ/ゲツ)麹−」〔食服230B〕と見える。当代の『日葡辞書』にも、
Moyaxi.モヤシ(蘖)例,Mngui,l,mameno moyaxi.(麦,または豆の蘖)上のようにして発芽した小麦,または,大豆の芽.〔邦訳428l〕
†Moyaxi.モヤシ(蘖)例,Mnguino moyaxi.l,Moyaxi mugui. (麦の蘖.または,蘖麦)水でしめらせたあと覆いをし、芽を出させてはじけさせた大麦.〔邦訳428l〕
とある。古くは、『本草和名』に、「〓〔薩+子〕米 和名毛也之」とあり、『色葉字類抄』『類聚名義抄』にも見える語である。江戸時代の『書字考節用集』には、
蘖芽(モヤシ)米。麥。黄巻(同)大豆。〓〔豆+兼〕(同)仝∨上。藻 (同)出∨莫。〔生殖六66@〕
で表記するとあって、標記語によって、その「もやし」の原料を厳密に区分している。すなわち、米麦の「もやし」は、「蘖芽」で表示し、大豆の「もやし」は、「黄巻」「〓〔豆+兼〕」「藻」となる。そして、静嘉堂本『運歩色葉集』の「もゆる」の読みは、その原義であり、『名語記』巻八に見える「小麦のおひいてたるをもやしとなつく。如何、もやは萌也。草木のめくみいつるを、もゆとはいへるにや」の語源に関係した訓というものである。
●4.以下は、「語彙(平成疑問かなづかひ)」からの転記:
ひこばえ【蘖】〔近16:近16〕切り株からの若芽。「孫(ひ
こ)+生え」。
ひつぢ【[禾魯]】ヒツジ「乾(ひ)+土」。稻の切り株から再び
のびた芽。∞ひこばえ
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