たかやましんいちさんという方が、3人のトークイベントに参加されて、文字興ししツイッターで流して下さっていますので、紹介させていただきます。↓
中野「このトークイベントは私と柴山さんの共著「グローバル恐慌の真相(集英社新書)」の刊行記念。萱野さんも水野和夫さんと「超マクロ展望 世界経済の真実」という本を出された。私とは細かい部分では考えが違うが、方向性は同じ。まずは萱野さんに議論の口火を切っていただきたい。」
萱野「まずは分かりやすい話から。民主党は「コンクリートから人へ」というフレーズで政権交代をした。これは公共事業を止めて福祉にお金を使おうということ。これを世代という切り口で見てみる。今の団塊世代が現役の時代は公共投資で潤った。今度は再び福祉ということでその世代が潤う。」
萱野「正月にNHKの番組に出演した。70年代以降に生まれた世代での討論会。議題の中心は世代間格差。上の世代は払った年金に三千万円上乗せして支給されるが、90年代以降の世代は払った年金額よりもらえる年金額が二千万円も少ない。これは市場原理ではなく制度で生まれた格差。」
萱野「その番組の前半は格差の話題。後半はその格差をどう克服するかという話。克服のために経済成長、とここまではよかったが、そのための手法で意見が割れた。「iPadのような競争力があるものを作れ」というようなイノベーションの話になったが、自分はそれは違うと思った。」
柴山「イノベーションが起こって、パッとヒット商品が出れば経済が成長してみんなハッピー、というような単純な話ではない。どうすれば経済が成長するか、実は経済学では答えが出せない。公共投資による雇用の創出や物価変動については知見はあるが、デフレについては何も分かっていない。」
柴山「経済学者に対しては倫理的な面で憤りを覚える。TPPに入れば経済が成長すると言っているが、あの手の議論で出される数字なんて適当な計算しかしていない。「経済を学ぶ理由は経済学者に騙されないようにするため」という言葉もある。とか言ってると自分の職業の否定になるが。」(会場笑)
柴山「不況を解決するために出てくる意見は三種類。これまで以上に規制緩和をしろ、金をばら撒け、たくさん公共事業をしろ。だがこれで解決できるなら経済学はいらない。現在は打つ手がないと言っていいくらいの深刻な状況。これまでの処方箋が全く通用しない。」
柴山「規制緩和は米国で成功したかのように見えたが結局バブルは崩壊した。金のばら撒き、つまり量的緩和は銀行の倒産を防ぐことは出来たが、景気の回復には至っていない。公共事業をすれば借金が増え国債が返せなくなる。弱い国から危機的状況になっている。」]
柴山「ここから先は経済学を超えた領域。ある国は帝国主義的に他国を経済的に侵略し、またある国は保護主義と言われる手法で自国を守る、というようになるかもしれない。どちらも禁じ手とされていること。だが誰にも答えは分からない。何かをやらないといけない。手探りでやっていくしかない。」
柴山「ニューディール政策も、これをやれば恐慌を乗り切れると分かっていてやったわけではない。当時も今と同じで何が正解かはわからず、手探りでやっていた。ケインズ理論は後からの説明として出てきた。」
中野「不況とデフレは同じように思われているが全く別物。デフレとは需要不足で供給過多、物価が下がり続けること。お金を持っていれば価値が上がっていく。だから金を使わないし、借金もしなくなる。つまりデフレとは資本が動かなくなること。資本主義ではなくなるということ。」
中野「「資本主義」と「市場経済」は全く別のもの。お腹が減ったからパンを買って食べる、このように今欲しいものにお金を使うのが市場経済。一方で将来の利益獲得のためにお金を使う、投資するのが資本主義。この二つを混同している経済学者がいる。」
中野「このデフレを脱却するためにイノベーションが必要と言われているがそれは違う。技術革新が起こると生産性が上がる。生産性が上がると供給が増える。結果需給ギャップが大きくなりデフレが加速する。勤勉に働くこと、生産性を上げること、これまではよしとされていたことがデフレを加速する。」
中野「デフレとは資本が動かなくなること。極端に言えば資本主義では無くなっているということ。資本主義ではない状況でこれまで資本主義下で正解とされていることをやっていてはダメ。」
中野「言論の自由や多様性の確保がこれからは非常に重要。「君は経済学を知らない」と言われている人の意見が正解である可能性がある。ルーズベルトのブレーンは当時異端とされていた人たち。ニューディール政策は当初馬鹿にされていたが、結果として正解だった。」
萱野「勝てる分野に資源を集中させてイノベーションを起こそう、つまり選択と集中という考えがある。だが、これをやると、注力していない分野が痩せ細る。結果として全体が痩せ細っていくということにつながるのではないか。」
柴山「80年代に米国で起こった数々のイノベーション、これは規制緩和やベンチャーキャピタルのおかげと言われている。そういう一面もあるが過大評価されすぎだと思う。ベンチャーと言っても残るのは千社に一社程度。あの頃は株高政策で社会全体に金があった。」
萱野「「起業」というとITとか最先端でかっこいいイメージがあるが、米国で起業が盛んだとは言っても、床屋を始めた、とかそういうのも全て含まれている。」柴山「アメリカ人が起業するのは「人と働くのが嫌」という理由が多い。どちらかと言うと消極的。」
萱野「経済政策においてこれをやれば大丈夫、という方法はないが、これをやってはダメ、という方法はある。やってはいけないことを止めるのが最初のステップ。」中野「経済は社会や政治と繋がっているが、経済学にはそのような視点が欠けている。経済を社会的に考える必要がある。」
中野「公共投資は悪だと思われている。だが橋本龍太郎首相が緊縮財政をやった結果不況となった。公共投資は今や欧米並みで多すぎるということはない。今は復興や防災などのために公共投資が必要。公共投資は民主主義による資源の再配分である。」
柴山「規制緩和は善だと思われている。規制緩和に反対すると既得権益を守っている、と思われる。もちろんそういう場合もあるが、元はと言えば規制というものは民主的に作られたもの。例えば薬事法の規制がやり玉に挙げられるが、これも薬害を防ぐために出来たもの。」
柴山「規制緩和とは民主的に決めたことをひっくり返す行為。議会が決めたことを人気のある時代のリーダーが壊していく。サッチャー、レーガン、小泉みんなそう。その瞬間はいいように見えるが、長期的に見ると反動が来て政権を失っている。」
萱野「規制と市場は対立しているように思われているが、規制のない市場はない。規制が自由な市場を邪魔しているわけではない。例えば漁業は今衰退している。これは乱獲が原因。乱獲の結果小さな魚しか獲れなくなり、市場で買い叩かれ、漁師の収入が減少する。」
萱野「これを解決するために漁獲高を規制する。漁獲高が制限されれば、漁師は乱獲をしなくなり、水産資源は守られ、買い叩きも無くなり、結果として漁師の収入は上がる。実際にそうやって成功している国はある。だが日本には規制がなく市場が縮んでいる。これが典型的な例。」
中野「経済学者は「市場に任せるのがフェア」だというが、なぜ市場に任せるとフェアなのか。市場に任せっぱなしだと麻薬や売春、幼児労働、環境破壊もOKということになる。市場で取引してはいけないものがある。人間性や環境破壊を防ぐために規制がある。」
中野「ロバート・オーウェンは経営していた工場で協同組合や学校を作ったり幼児労働を止めさせたりした。結果工場の生産性が上がった。人間性を守りながら生産性を上げる、これを国レベルで達成したのが(昔の)日本だと言われている。」
中野「経済学者は市場だけを見ている。だから組合や農協を目の敵にしている。市場原理にとって組合は敵。組合もいい組織ばかりではないが、多少既得権益があろうと、効率が悪かろうと、人間性や環境を守るために必要。だから多少のことには目をつぶるのが大人というもの。経済学者は子供。」
柴山「今80歳以上の人たちに取材をした。この世代はオイルショックを人を切らずに乗り切った。この世代はしっかり働いて利益を出して、税金を納めて、雇用を守るということが当然だと思っている。マルクスを読んでいて、市場の暴走を防ぐのが自分の使命だと思っている。」
柴山「彼らは政府や官僚を信用していない。高度経済成長は大蔵省や通産省が牽引したとされているが、彼らに言わせれば、自分たちが官僚を動かしたのだ、と。」中野「今は民間も官僚化している。みんな経済学者みたい。「役人は現場を知らない」などというが、お前もだろ、と。(場内笑)」
柴山「90年以降の失われた20年は前半と後半で原因が違う。90年からの10年間はBSの毀損、つまり不良債権が原因だった。00年以降の10年は過剰なグローバル化が原因。国内投資を控え、海外投資も上手くいってない。」
中野「今は成熟経済と言われるが内需が無くなるとは思わない。需要とは消費だけではなく投資がある。防災対策や老朽化したインフラの更新など将来の子孫のために今投資をする。これはデフレでなくても必要な事。これは民間がやらないから公共投資でやる。」
中野「少子高齢化がデフレを加速すると言われるが、ヨーロッパでも同じ状況でデフレにはなっていない。少子高齢化ということは労働者が減少し供給が減少する、高齢者は消費するだけだから消費は増える、つまりインフレになるはず。事実中国はこれで悩んでいる。賃金を巡り労働争議が多数起きている。」
萱野「それには異論がある。日本の資産1400兆円の内70%は高齢者が持っている。だが老後に不安があるため使わない。日本でお金を使う世代は子育て世代。そこにお金が回っていない。あの、高齢者を目の敵にしているわけではないですからね。事実を言ってるだけですから誤解しないで。(場内笑)」
萱野「グローバル競争の本質とは低価格競争。必然的に賃金は安くなっていく。」柴山「マルクスの予言を自分の言葉で言いかえてみる。資本主義は長期的には利潤が低下していく。すると何が起こるか?階級闘争が起こる、労働が強化される、企業が海外に出ていく、企業の合併が進む。」
柴山「マルクスの予言は外れたかのように見えたが、ここにきて再び当たり始めたように見える。」中野「マルクスの予言が一度外れたように見えたのは、政治がそれを食い止めたということ。だがまたマルクスが当たり始めたということは、政治が何か間違いを犯しているということではないか。」
中野「これからは退屈な時代になる。一発当てようなんて思わず、コツコツ働く。これが大切になるのだが、でもその退屈さには結局耐えられずまた間違いを犯すのだろうけど。(やや自嘲気味に。場内笑)」
萱野「日本はもう経済成長はしないのだから、それに沿った社会をつくろうという意見があるが、それはその厳しさが分かってないのではないか?結局それでは現役世代の負担が大きくなる。できれば経済成長を続けながら、出てくる問題を財政で解決する、という方向がいい。」
柴山「日本はいまだに世界三位の経済大国。だが国際社会での発言力は低い。欧米が決めたルールに従うだけ。国際社会をリードする為もっともっと発言していってほしい。」以上です。長々と失礼しました。